メジャーなヴィクトリアゲートの反対側にあるブレントフォードゲート近くは古風な建物が散見するエリア。写真はその近くの竹林内にある「ミンカハウス」。日本から移築された建物である。ほかにも古風な建築物が点在するエリアとなっていた。
【帰りはテムズ河のゲートから】
キューガーデンのすごいところは、広大な敷地なのに隙間なく、惜しみなく手入れがなされているところです。よくぞ荒れるところもなく行き届いた空間を保ち続けていると、日本の交通の便の悪いところで時折みる、代替わりしたお屋敷の庭のどうにもならなさを想い浮かべて尊敬の念すら沸いてきました。大英帝国の栄光への誇りは粘り強い。
さて、帰りは行きとは違う出口から帰ろうと、中心部へのアクセスの容易なヴィクトリアゲートやメイン(ライオン)ゲートとは反対側にあるブレントフォードゲートを目指すことにしました。このゲートの出口には駐車場とテムズ河があります。
その出口近くのキューガーデンの敷地内には1761年に建てられたオランジェリーレストランという、しっかりめの食事のとれる建物がありました。コーヒーをテイクアウトする人もいて、ずいぶん賑わっていました。
ほかにキューガーデン最古の建物として知られる(1631年)赤レンガ色のキューパレスもありました。中世のメイド風スタイルの方々が案内のためなのか入口付近に数人立っています。なかには疲れ切って座っている人も。
ここにも1631年以前から建物があり、次々と持ち主が替わっていたのですが、1631年の改築時には地下室以外はすべて取り壊され、立て直されました。1728年からは王族の住まいの一つとなりました。
アイスハウスと書かれた1760年代に建造された建物もありました。冬には近くの湖の氷をこのハウスに運び貯蔵。夏には王族方がその氷を飲み物に入れたり、アイスクリームを作るのに使っていたりしたと説明板には書かれていました。18世紀、ここは王室の食糧供給基地だったそうです。
このようにヴィクトリアゲート付近とは趣の異なる、より古層な雰囲気の漂うエリアがブレントフォードゲート周辺なのでした。
吹き渡る風もより涼しさが勝ってくると、閉門時間が近づいてきます。
夏場は午後6時です。
人々が足早に消えていくなか、私もゲートから外へと出ました。日本から持ってきたガイドブックによると、テムズ河を行き来する水上バスが走っているようなので、それに乗るつもりでした。
ところがゲートを出ると、静かに濁ったテムズ河は確かに目の前にあるのですが船着き場は見当たりません。疲れ切った家人は不機嫌に
「どこにあるの?」
と責めてきます。いやあねえ、また元の門に戻って無難にヴィクトリアゲートから帰ればいいじゃないと踵をかえすと、なんと先ほどまで簡単に通過できたブレントフォードゲートの鉄の門は閉じられていました。ちょうど午後6時をすぎたのです。相当、時間に正確です。人気もすっかりなくなりました。
門をガシャガシャと揺らしてみてもどうにもならず。しばし河を見つめてボー然。いや、しかし、ここは無人島ではない。河に沿って歩けばとにかく街もあるし、キューガーデンの外枠に沿って歩けばいずれは地下鉄の駅にもたどり着けるでしょう。気を取り直して歩き出しました。
(つづく)
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