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スペインとポルトガル67 セビリヤ⑤ インディアス古文書館

2022-08-21 17:28:25 | Weblog
写真上は、インディアス古文書館の外観。周囲は世界遺産がまとまってあるので、早朝から馬車が並んで、観光客を待っていた。

【静かな世界遺産】
 インディアス古文書館(Archivo General de Indias)も世界遺産です。アルカサールと大聖堂の間にあり、お隣という近さ。ほんのちょっとの距離なのに、お昼を食べ午後一番に行くと、日差しギラギラの暑さのせいかほとんど人影がありませんでした。

 ここはフェリペ2世の命令で1572年に商品取引所として開設され、1784年からは新大陸に関する文書を集める専門館となりました。当時の貴重な古文書が全長8キロ、800万ページに及ぶ規模で保存されています。外からもおしゃれな保存棚の一部を見ることはできましたが、専門家たちが集う閲覧所にはいかず、だれでも自由に無料で見ることができる展示室に向かいました。

【「旅する食物」展】
 大航海時代をいろどった冒険家たちの肖像画や船の説明が続いた後に、ちょうど企画展としてやっていたのが「旅する食物(TRAVELLING FOOD)」でした。

 まず、大航海時代の船に積まれていたブドウ、ワイン、塩や酢漬けの魚、干し魚、酒をしみ込ませたスポンジケーキなどなどの絵と解説版が続きます。
次に新大陸にスペインがもたらした食物。中央アジア由来だけど古代エジプトの時代から使われていたにんにくや、オリーブ、レモン。

さらに新大陸からスペインが発見して、その後、アジアやアフリカにも伝わったものとして、インゲンマメ、トウモロコシ、カボチャ、各種トウガラシ、パプリカ、サツマイモ、トマトが絵とプラスチックでできた模造品や本物の作物とともに解説されていました。当時の発見者のメモや報告書の直筆、挿絵などが見られるのは、文書館ならではです。

 それにしてもアメリカ大陸からきたもののインパクトのほうが大きいのに、まずスペインがそちらにもたらしたもの、から入るのだなあ、というのが率直な感想。

 アジアからスペインが持ち込んだもののコーナーがありました。こちらは「旧世界」と表示があります。(アメリカ大陸はだから「新」大陸で、当時の人々は、自分の知っている範囲の世界をこれ以上の成長のない、「古い」と感じていた、と解説がされていました。)

 まずスペインが統治したフィリピンの物産が並びます。
 ココナッツ、カカオ豆、ビンロウ、胡椒。これらの生産をフィリピンのマニラで行ったことが書かれています。
 カカオ豆はアメリカ大陸原産のものをスペイン人がフィリピンに持ち込んで生産したのですが、そんな説明は一言もなく、当たり前のようにアジア原産のものと同じ場所に並んでいます。うーん。

 さらにジャックフルーツ、ヤム芋、マンゴー、お米粒、稲、緑豆、ショウガ、コショウ、チョウジ(クローブ)、シナモンなど中東、アジアから交易で得たもの。これらは「旧大陸から旅した食物」と名付けられていました。
パパイヤはヨーロッパ人が発見し、アメリカ大陸に持ち込んだときには、当地でもすでに広まっていた、などの説明もありました。

 こうしてみると日本人の私としては、圧倒的にアメリカ大陸原産の作物に注目してしまいますが、スペイン人は、トマトや唐辛子などの作物と同等のインパクトを東からの作物から受けていることに改めて驚きました。
 そもそも大航海時代のはじまりはアジアの香辛料を求めてはじまった、と歴史で習ったというのに、はっきりと体感できていなかった!
 いろいろ植民地時代の宗主国側の考えも無造作に並んでいる分、わかることも多かったです。
 古文書館、おすすめです。
(次週もインディアス古文書館で、日本の古文書の話です)

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