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ウエストミンスター駅近くの路上の夕方。私が住んでいたベイズウオーター駅周辺にくらべてわりとわき目も降らず歩く人が多い。朝ほどではないが。
そんな中、路上でセントバーナード犬を連れてアコーディオンを奏でる男性を発見。警官が笑顔で寄り添う心温まる光景、かと思っていたら、路上で犬を見世物にして飼うのは動物虐待の疑いあり、で、検挙されがちな事象だとNHKBSプレミアムで流れていた英語の映画で知り(タイトル忘れ)、のちに衝撃を受けた。
【敷石がわりのビッグネームの墓碑】
地下鉄のウエストミンスター駅を上がると、ちょうど通勤の時間らしく、人々が足早に通り過ぎていきます。9時半の開門に向けてちょっと早めに着いたのですが、すでにウエストミンスター寺院には行列ができていました。
見た目とは違い、5分も待たずに入れたのですが、見物客との距離は近く、荘厳な寺院を一人、静かに楽しむ、ということはなかなか難しい状況です。
多いのは人だけでなく、埋葬者も同様です。足元には墓碑が敷き詰められたような状態なのです。前にも書きましたが、欧米の教会に行くと、代々の司祭の墓碑などが床に敷かれていて、日本人としては踏まずに歩きたいところなので、ジグザグと不審者のような歩み方になってしまうのですが、この寺院ではそれもほぼ不可能。欧米の方々と同じように墓碑を踏み進むしかありません。
おそらくは敷石を墓碑にした程度のフラットな発想なのでしょう。この考えなら日本で江戸時代に行われた「踏み絵」も、意味はなくなります。というのも「踏み絵」は、地面においた、踏んでもよい位置にある、通りの一部なのですから。
また、日本だと寺の建物内では祈るだけ、墓地は外です。ところがウエストミンスター寺院はじめ、イギリスの寺や聖堂では司祭や街の有力者の墓は建物内にあるのです。いままでも欧米で見られた風景なのに、あまりの墓碑の多さに、改めて考えずにはいられなくなってしまう。
そうした選ばれし人々がこの寺院に3300人いて、墓碑となっていたり、モニュメントになっていたりするのでした。
車いすの物理学者として有名なホーキンス博士の墓もありました。2018年6月15日に遺灰が納められており、私が行った2019年7月22日時点では、この寺院では一番新しい墓碑でした
(参考https://www.kaminotane.com/2018/07/05/3079/)
歴史をふりかえると、今に連なる寺院が建立されたのが11世紀半ばのアングロサクソン系最後の王で敬虔なキリスト教徒だったエドワード懺悔王。1065年に亡くなった際にこの寺院に埋葬されました。翌年、ウィリアム1世は前の王が眠るこの寺院で戴冠式を行い、以後、イレギュラーなよほどの事態がない限り、ここで行われています。
現王のチャールズ3世(チャールズ皇太子時代が長いので、なかなかなじみませんが)の戴冠式もエリザベス2世のご葬儀もここで行われていました。ユーチューブ他で中継されて、日本に居ながらにして見られる贅沢を味わった方もいることでしょう。
もっといえばチャールズ3世の長男夫婦の結婚式も、ウエストミンスター寺院。1000年もの長きにわたってイギリスの王家にとって、いかに重要な寺院かということがわかります。
しかし、最近ではホーキンス博士が入ったものの、ほとんど新たに埋葬する余地はほとんどなくなっているのです。じつは近年では王家の人が埋葬されることはなくなりました。
中継でみたエリザベス2世の葬儀は、たしかにここでした。でも、埋葬地はウインザー城なのです(2022年9月19日)。彼女の両親も夫もその上の世代も同様。なんと王族が最後に埋葬されたのは1760年のジョージ2世までさかのぼらなければならないのでした。
(つづく)
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