とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

映画『カムイ外伝』

2009-10-01 21:57:39 | 映画
昨日の夜、最終上映に間に合ってやっと『カムイ外伝』を見ることができた。子供時代、漫画にうつつを抜かして読み漁ったシリーズ物の中に白土三平の『カムイ伝』があった。手塚治虫や石森章太郎などの漫画家とは一味違う作風に、何故か引かれて読んでいた。ただ、内容は面白いというより救いようのない暗いストーリーばかりで、何が良くて読んでいたのか今もってよくわからない。そして、この『カムイ外伝』は『カムイ伝』から主人公の一人であるカムイのみを取り出した番外編的な位置づけの作品である。階級社会や身分差別の理不尽を追及した忍者コミックでありテレビアニメでも放映されたことがある。まずは、あらすじと解説を紹介しておこう。

《あらすじと解説》  goo映画より

貧しさゆえに幼くして忍びの世界に足を踏み入れたカムイは、強靱な意志と優れた忍術を身につけて成長する。しかし、理不尽な殺戮に明け暮れ、厳しい掟に縛られた年月を経た後、自ら選んだ世界を捨てる覚悟を決める。それは即ち裏切り者として追われる身となることだった。逃亡を続けるカムイは、偶然命を救った漁師の半兵衛一家のもとに身を寄せるが、半兵衛の妻は抜忍として身を潜めるかつての仲間スガルだった。

『月はどっちに出ている』『血と骨』の監督・崔洋一が人気脚本家・宮藤官九郎と共に脚本を担い、主演に若手No.1の存在感と演技力を誇る松山ケンイチを迎え、伝説の漫画家・白土三平の名作忍者コミックの実写化に挑戦した。長大な原作の中から「スガルの島」編を選び、灼熱の沖縄ロケをはじめとした過酷な撮影を敢行し、ダイナミックなアクション大作を完成させた。孤独なヒーローを演じ、走りひとつ取っても様になっている松山のほか、敵か味方か判別不能な“渡り衆”の長・不動役で男の色気を見せる伊藤英明、さらにはカムイへの恋心に身を焦がすスガルの娘・サヤカ役に魂を吹き込む大後寿々花など脇を固めるキャストの健闘も光る。


丁度2時間の上映であった。最近の話題の映画というと、結構2時間半近くある長い映画が多いのだが、この映画は短かった。第一の感想は、白戸三平原作のこの大長編を2時間でまとめるというのは無理があったような気がする。続編があるかも知れないし、長いストーリーの中の一つのエピソードだけを抜き出したということから、仕方ないのかもしれないが、原作本を読んでいるものとしては、やはり物足りないような気がした。本来、この話は階級社会や身分差別の理不尽さを追及し、絶望的で終わりのない孤独な旅を続けるカムイの生き様を描いた作品である。映画は、そのあたりの焦点がズレ、CGやアクションのほうに偏りすぎたきらいがある。

この作品のことを知らない人は、忍者アクション物としてみた場合、それなりに楽しめたであろう。私も、松山ケンイチ君の体を張ったアクションシーンや飄々とした小林薫、渡り衆の不動を演じる伊藤英明、カムイを恋するスガルの娘・サヤカの大後寿々花等の演技はなかなか良かったと思う。ただ、惜しむらくはCGがいまいちであったことだ。変移抜刀霞斬り(へんいばっとうかすみぎり)や飯綱落し(いづなおとし)といった必殺忍法のシーン、渡り衆とサメ退治をするシーン等は明らかにCGとわかる。特にサメを退治するシーンが必要かどうかは疑問だ。また、残虐なシーンが多く、馬の足を切り取るところや、敵の両手が切り落とされるシーンとかは女性に目の毒であろう。白土作品は、残虐なシーンが多いので止むを得ないのだが、鮮やかな空や海の青さが目立つ背景に血の赤が妙に違和感を感じた。

アクションをとるか、ストーリーをとるかによって評価は分かれそうだが、私としては最下層の階級に属すカムイの心の葛藤とか、何故、追っ手たちは執拗にカムイを追い続けるのかといった疑問を明らかになるような脚本にして欲しかった。映画では、そのあたりがよくわからず、説明不足と感じることが多かった。そういえば、ナレーションが中途半端にあったのもどうなのだろう。ナレーションがあっても、肝心な場面で説明がなく、あれだったら最初からないほうがいいくらいだ。

もう一つ、佐藤浩市がどの役で出ていたのか最後までわからなかった。後で調べたら、意外な役で出ていたことが判った。映画を見た人は、判っていたのだろうか。あらためて、役者って凄いなと思った。