先週末の土曜日は、雨が心配だったが午前中は曇りで何とかもちそうな予想なので、八ヶ岳連峰の最北端にある蓼科山(たてしなやま)に行ってきた。標高2,530mの火山で、円錐形の美しい山容から諏訪富士(すわふじ)とも呼ばれ。日本百名山の一つでもある。この山域では、針葉樹林帯が帯状に枯れる縞枯れ現象が見られ、北八ヶ岳を象徴する景色が楽しめる。
蓼科山は2回目の登山となるが、初めての人のリクエストに答えての登山となった。ただ、前と同じではつまらないので、今回は大河原峠からの最短ルートで蓼科山まで登り、下山後は北八ヶ岳らしい苔むした樹林帯や伝説の池めぐりのコースを加え、最後になだらかな双子山を登り、大河原峠に戻るコースにした。
大河原峠は、白樺湖畔から女神湖の横を抜け、曲がりくねった夢の平林道を車で1時間ほど走った所にある峠だ。全線舗装されており、けっこう走りやすい。大河原ヒュッテのある大河原峠は標高2100mにあり、蓼科山への最短ルートとなる。峠に着いたのは午前2時半で気温はかなり下がっていた。寝袋に包まり朝6時まで眠る。起きて外に出ると雲は厚くなっていたが、遠くの景色はまだよく見えており午前中の天気は持ちそうだった。

寒さに震えながらも防寒対策を整え、登山口へと向かった。駐車場には数台の車が止まっており既に何人もの登山者が出発していたようだ。
登山口から蓼科山荘のある将軍平まではコースタイムで1時間20分ほどとなっていた。既に標高2100m以上もあり、登山道は大きな岩がごろごろして歩きにくい。縞枯れ現象の見られる針葉樹林帯の間から蓼科山が見えてきた。

一がんばりして将軍平の蓼科山荘につく。コースタイムよりは10分ほど早く着いた。

ここから更に30分ほどで山頂である。ますます大きくなった岩だらけの道を進む。

振り返れば、縞枯れ現象の針葉樹林帯や蓼科山荘の屋根がよく見えた。
蓼科山頂ヒュッテの横を抜けると、数分で頂上三角点に到着した。

風当たりが強く記念写真だけとって直ぐに下山したくなったが、反対側の景色も見たいと思い、岩だらけのやたらに広い山頂の反対側に行くことにした。

ほぼ真ん中には、蓼科神社の奥社があり、せっかくきたので登山の無事を祈願した。

反対側の山頂の縁からは、下界の女神湖等の景色がよく見えていた。
ひとしきり景色を楽しんだ後、再び将軍平までもと来た道を下る。そして、ここからは天祥寺原の方向に下山する。ほぼ1時間ほどで天祥寺原につき、亀甲池方面に向かう。

このあたりはカラマツの黄葉がすばらしい。絵葉書になりそうな景色がいくらでもある。

まさに秋の北八ヶ岳を歩いているという気分が実感できる場所だ。天気が曇り空になってきたので、光がやや足らなかったが、太陽の光を浴びたカラマツの黄葉はもっとすばらしいことだっただろう。
天祥寺原からは40分ほどで亀甲池に着く。

亀甲池(標高約2030m)は亀甲構造土が見られるためにそのような名前がついている。亀甲構造土とは、岩石が徐々に移動して甲羅のような多角形に並んだ模様の構造土のことを言う。池の水は多く、残念ながら甲羅のような池底の様子はよくわからなかった。鬱蒼とした森の中にある静かな雰囲気の池である。
亀甲池から双子池までは苔むした岩や樹木に覆われた薄暗い道が続く。登山道にも苔むした岩が多く滑りやすい。

ここも静かで鬱蒼とした雰囲気で荒涼とした蓼科山山頂とは一味ちがう山域である。2番目に見えてきた池が双子池の雌池である。湖面に映る紅葉の景色がまたいい感じだ。

雌池をぐるっと回ると反対側には雄池がある。雄池は双子池ヒュッテの水源地となっている。
双子池には悲しい伝説が伝わっている。「八ヶ岳・北八つ双子池の伝説」を紹介しておこう。
八ヶ岳の最北にそびえる蓼科山。そのふもとに双子池という池がある。名前の通り同じような池がふたつ。この池には悲しい伝説がある。豪農の家の息子・与七郎は、父が雇っている作男の娘・お染と恋仲になるが、与七郎の両親は2人の結婚は「身分違いだ」と怒り、作男の親娘を家から追い出し、となり村の名主の娘との婚約話をすすめるのであった。悲しんだ与七郎は、おりからの大干ばつで雨乞いの人身御供の身代わりとなり、双子池の片方の雄池に投身自殺をしてしまう。それを伝え聞いたお染も落胆のあまり、与七郎のあとを追って池に飛び込んでしまう。しかし、悲しいかな入水したのはとなりの雌池の方だったのである。それ以来年1度、5、6月ごろになるとふたつの池は増水してつながるという。
双子池ヒュッテで、しばらく昼食休憩をとり、最後の一登りで双子山に向かう。道は険しくなく、ハイキング気分で歩ける楽しそうな山だ。

山頂の標高は2224mとなだらかな山頂だ。晴れていれば、のんびり出来そうな山頂だが、生憎雲が厚くなってきていた。

そろそろ雨が降ってきそうな予感がしていた。山頂から駐車場までは15分程度だ。急いで下山をしていくと駐車場のある大河原峠が見えてきた。

あと5分くらいというところで、雨がポツポツ降り始めてきた。せっかくここまできたので雨具は着たくない。走るようにして下山し、車に着いた。なんとかギリギリセーフだ。車に乗り込み走り出すと大粒の雨が降ってきた。登山の間は天気がもって本当に良かった。その後、白樺湖畔にある「すずらんの湯」に入り、帰路についた。