石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

戦後ガザはどうなるのか?当事者たちの本音と本性(下)

2024-01-19 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0595GazaJan2024.pdf

 

どうなる?戦後のパレスチナ統治

 ガザ戦争は圧倒的な軍事力を有するイスラエルが勝つことは間違いない。但し、ハマスも敗北宣言しないであろう。イスラエルは戦後ガザを直接統治することはない、と明言している。直接統治がリスクの高いことは誰の目にも明らかである。今回の戦争でガザの住民の反イスラエル感情が極限に達しており、その結果ハマスの残党あるいは過激化した若者による新たな都市ゲリラ活動が始まるであろう。彼らを武器面で支えるのはイラン、シリアなどであり、経済的に支援する周辺アラブ国民もなくならない。イスラエルの報復を恐れる湾岸アラブ諸国は、義勇軍を派遣する気は毛頭なく、物的な支援及び金銭的寄付(ザカート)に力を注ぐ。それは豊かな湾岸諸国のパレスチナ人に対する罪滅ぼし、或いは免罪符であろう。

 

 戦後のパレスチナ統治は戦前と寸分変わらない姿になる。否、戦前よりさらにパレスチナ人に過酷な「天井なき牢獄」となるであろう。彼らは生存に必要な最小限の環境で、全く自由を奪われた生活を送る。そこに見える景色はナチス時代の「強制収容所」そのものであり、違うのは「ガス室」が無いことくらいであろう。パレスチナ人に対する人種差別(アパルトヘイト)がさらに過酷な様相を帯びる。パレスチナ人の心中にはこれまで以上の怒りと絶望が沸き立つに違いない。

 

 ガザのパレスチナ人には全く未来が無いのであろうか。数十年単位で見る限り彼らに明るい展望は開けない。ただ言えることは歴史は百年、千年単位で動くものであり、イスラエルのユダヤ教徒が未来永劫繁栄を続け、一神教の「約束された民」としてこの世の終末を迎えられるとは思えない。パレスチナのアラブ人も同じ一神教のイスラム教徒である。同じ一神教徒なら世界の終わりに同じように救われるはずである。(逆に言えば多神教のヒンズー教徒、悟りの仏教徒、共産主義の無神論者たち一神教徒以外のすべての人間がこの世の終末で地獄の責め苦に会う、ということになるのであろうが。)

 

 しかしすべてことは有為転変する。奢れる者は久しからず。生者必滅。今日の「善」は明日の「悪」。人間世界に「絶対」はない。

 

 無責任で暗い結論と読者の顰蹙を買うことは承知の上で、安易に平和を期待する進歩的文化人の自己陶酔は避けたいと思うばかりである。

 

以上

 

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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戦後ガザはどうなるのか?当事者たちの本音と本性(中)

2024-01-17 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0595GazaJan2024.pdf

 

(English Version)

(Arabic Version)

 

欧米・イスラム諸国の本音と本性

自国の偉大さを信じ、親子兄弟が戦場で戦っている現状で、大多数のイスラエル国民はテロリスト・ハマスのせん滅が戦争終結の必須条件であると確信している。戦時体制下、しかも勝利が確実であると自他ともに認めるなかでは無条件即時停戦など問題外であろう。平和を標榜するだけのひ弱な知識人は排除され投獄される。戦争とはそういうものである。

 

 それではガザ戦後処理の利害関係者(ステークホルダー)である欧米或いは周辺イスラム諸国の対応はどうであろうか。問題は本音と建前の使い分けである。

 

ヨーロッパ各国は、ガザ紛争がイランを含む中東全域に拡大し、それを導火線にヨーロッパでイスラムテロが頻発することを恐れている。しかし強力な仲介者がいない中でただ人道的停戦を求めるだけではナンセンスである。それが戦争の現実というものであろう。一方、平和の掛け声の陰で米国、フランス、ドイツなど先進軍事大国は大量の兵器を輸出し、防衛産業は我が世の春を謳歌している。彼らの本音と建前のギャップは小さくない。

 

 周辺イスラム諸国の本音と建前はもっと単純である。彼らはアラブ・イスラム国家としてのパレスチナの独立を支持し、無辜の女性や子供を大量殺りくする(ジェノサイド)イスラエルを非難する。そして人道的な支援は惜しまない。

 

しかしパレスチナが政治的に独立し、自分達と対等になることを望んでいるとは思えない。特にサウジアラビア、UAEなど湾岸の専制君主国家にとっては、民主化されたパレスチナとシーア派イランの挟み撃ちにあう可能性が高い。パレスチナが形式的な独立を保ちながら、イスラエル支配のもとで周辺国の食料や医療支援に頼って細々と生きていく。それが周辺アラブ諸国の本音であろう。無気力と腐敗が広まっている現在のヨルダン川西岸パレスチナ自治政府の姿と重なる。

 

各国は国連安保理の呼びかけに応じないイスラエルに経済制裁を課するでもなく、ただ2国家共存論を唱えるだけである。さらにイスラエルの非人道性を声高に叫びながら、その一方安保理で拒否権を発動してイスラエルを擁護する米国の姿勢(二枚舌外交)を前に国連は機能不全に陥っている。そしてロシアと中国はイスラエルと欧米を非難し、ハマスの過激な行動に自制を促すものの自らは傍観者の立場を変えない。結局、国際政治の舞台でこの2か国が漁夫の利を得ている感がある。

 

(続く)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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中国以外は評価が低いBRICS:世界主要国のソブリン格付け(2024年1月現在) (下)

2024-01-10 | その他

(注)「マイライブラリー」で上下一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0594SovereignRatingJan2024.pdf

 

2.2021年1月以降の格付け推移

  ここでは2021年1月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

 

(格付け無しが続くロシア!)

(1) 世界主要国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

先進国の中ではドイツが過去3年間継続して最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を続けている。なお米国の場合、S&Pは2011年にトリプルAからAA+に引き下げている。昨年S&Pと並ぶ格付け会社FitchRatingが同国をトリプルAからAAに引き下げている。FitchRating, S&P共に連邦債務の上限問題に関して連邦政府と議会の関係が不安定であることを引き下げの理由としているのは興味深い。

 

アジアの経済大国中国と日本の格付けは3年間A+で推移している。AAAのドイツより4ランク、米より3ランク低く、過去3年間格差は解消していない。台湾は2020年までAA-であったが、2021年上期に韓国と並ぶAAに格上げされ、2022年上期に再度引き上げられ現在はAA+に格付けされている。これら欧米・アジア各国より格付けは少し下がるが、石油大国のサウジアラビアは2023年上半期にA-からAにアップした。世界的な景気回復とOPEC+の協調減産による原油価格の上昇が同国の経済見通しを明るいものにしている。

 

コロナ禍前の世界的な経済成長の中で注目されたBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国については、上述のとおり中国がA+である。その他の4カ国を見ると、インドは過去3年間BBB-である。これは投資適格の中で最も低く、S&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされている。

 

南アフリカとブラジルは共にBB-で投資不適格であった。BBの格付け定義は、「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされ信用度が低い。BRICsの一角を占めるロシアは、2022年1月までインドと同じ投資適格では最も低いBBB-であったが、同年4月のウクライナ侵攻に伴い、S&Pは同国をN.R.(No Rating)として格付け対象から除外しており、現在もその状態が続いている。

 

(アブダビに並んだカタール、伸張著しいオマーン!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2021年1月時点ではUAE(アブダビ)は最も高いAAであり、これに続きクウェイトとカタールがAA-に格付けされていた。しかしクウェイトは2021年下半期にはA+に落ちている。これに対してカタールは2022年下半期にAA-からアブダビと同格のAAに格上げされている。

 

3カ国は政治体制、人口・経済規模などが似通った産油(ガス)国である。それにもかかわらずクウェイトが格下げされているのは、同国が中途半端な議会制民主主義を採用している結果、政情が安定せず経済改革がほとんど進まないことに原因があると考えられる。カタールについては前項でも触れた通り天然ガス(LNG)が世界的に品不足で価格が高騰したためである。

 

サウジアラビアはこれら3カ国より低くA-であったが、昨年上半期にAに格上げされている。同国はUAE(アブダビ)、クウェイト、カタールを大きくしのぐエネルギー歳入を誇っているが、一方で人口も3カ国より飛びぬけて多いため、財政的なゆとりが乏しい。S&Pはこれらの事情を考慮してサウジアラビアの格付けを厳しく見ている。

 

産油量の少ないオマーンとほとんどないバハレーンの格付けは他の4カ国よりかなり低く2021年下半期まではB+にとどまっていた。その後、バハレーンは現在までB+格付けのままである。これに対してオマーンは2022年に一気に2ランクあげてBBとした後、昨年下期にさらに1ランク上のBB+に格付けされている。BB+は投資不適格では最も上のランクであり、同国は投資適格を目指して努力中である。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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中国以外は評価が低いBRICS:世界主要国のソブリン格付け(2024年1月現在) (上)

2024-01-09 | その他

(注)「マイライブラリー」で上下一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0594SovereignRatingJan2024.pdf

 

 本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。

 

 因みにS&Pの格付けは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている[3]。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.(No Rating)と表示される。

 

S&P(日本)ホームページ:

https://disclosure.spglobal.com/ratings/jp/regulatory/delegate/getPDF?articleId=3107249&type=COMMENTS&subType=REGULATORY&defaultFormat=PDF

 

*過去のレポートは下記ホームページ参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html 

 

(日本は台湾より3ランク、韓国より2ランク下、中国と同じA+!)

1.2024年1月現在の各国の格付け状況

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

2024年1月現在の格付けを昨年8月のそれと比べると最高格付けAAA(トリプルA)のドイツ、カナダ、シンガポール等の他、AA+の米国[4]、AAの英仏、A+格付けの日本、中国など主要な国々に変動はなかった。

 

極東各国(地)の格付けは台湾と香港がAA+に格付けされている。韓国はこれら2カ国より1ランク低いAAであり、日本と中国はさらに2ランク低いA+とされている。台湾と香港の格付けは米国と同じである。台湾は政治的、軍事的に緊張をはらんだ状況に置かれているが、IT産業が好調であるなど、経済的には日本或いは中国よりも安定していることから高いソブリン格付けを得ている。中国の動向を踏まえると、今後台湾と香港がどのように評価されるか注目される。

 

G7の国々のうちドイツ及びカナダはAAAの最高格付けであり、米国は1ランク下のAA+、英国及びフランスはさらに1ランク低いAAである。そして日本はAAAより5ランク低いA+に格付けされ、イタリアは投資適格ではあるがBBBにとどまっている。因みに格付け定義ではAAは「債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(トリプルA)との差は小さい」とされ、これに対して格付けAは「債務を履行する能力は高いが上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい」とされている。そしてBBBの定義は「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」である。

 

新興経済勢力として注目されるBRICS各国の格付けを見ると、中国は上述のとおりA+であり欧米先進国に次ぐ高い評価を得ている。しかしインドは投資適格では最も低いBBB-であり、ブラジル及び南アフリカは投資不適格のBB-の格付けである。特にロシアはウクライナ戦争による欧米の経済制裁を受け、格付け対象から外れるNR(No Rating)の扱いである。

 

アジア諸国のうちシンガポール及びオーストラリアがAAAに格付けされ、またMENA諸国では、アブダビ及びカタールがAAに格付けされている。世界的に天然ガス(LNG)の需要がひっ迫しておりLNG輸出国カタールの格付けが高い。

 

その他の主要MENA諸国では、イスラエルがAA-である。またGCC諸国を見るとクウェイトはアブダビ、カタールより2ランク低いA+である。サウジアラビアは昨年上半期にA-からAに1ランクアップしている。ロシアなどを含めたOPEC+(プラス)の協調減産の結果、油価が比較的高目に推移しサウジアラビアの財政が黒字基調であることが格上げの要因と見られる。GCC諸国の中で石油天然ガスの生産量が比較的少ないオマーンと殆ど産出しないバハレーンは共に投資不適格のランクであるが、オマーンは昨年下期にBB+に格上げされバハレーンとの格差が拡大している。

 

MENAでは大国に位置付けられているトルコ及びエジプトは共にBの格付けである。人口の多い両国は国内のインフレが悪化していることが格付けの低い原因である。因みに格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い」である。アジアの国々の多くは投資適格では最も低いBBBの格付けであり、タイ及びフィリピンがBBB+、インドネシアはBBBである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。

[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

[3] S&Pの格付け定義についてはhttp://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf参照。

[4] FitchRatingは最近米国格付けを最上位のAAAからAAに引き下げた。S&Pはすでに2011年にAAAからAAに引き下げている。引き下げの理由はFitchRating, S&P共に連邦債務の上限問題に関して連邦政府と議会の関係が不安定であるためとしている。

 

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北欧が上位を独占、アラブ諸国トップは世界119位のカタール:報道の自由度 (4完)

2023-12-31 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0593WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2022年版)

 

(ノルウェーが5年連続世界一位、世界最低レベルを抜け出せない中国!)

4.日米中と中東主要国の世界ランクの推移(2019年~2023年)

(図http://rank.maeda1.jp/10-G01.pdf参照)

 2023年世界一位のノルウェーに加え日本、米国、ロシア、中国及び中東3か国(イスラエル、カタール及びサウジアラビア)の2019年から2023年までの5年間の世界ランクの推移を見ると、ノルウェーは5年連続でトップを維持している。

 

 米国の世界順位は48位(2019年) →45位(20年) →44位(21年) →42位(22年)→45 位(23年)と40位台が続いており、2019年以降は毎年少しずつ順位を上げたものの、今回(23年)は少し下がっている。日本の順位は67位(19年) →66位(20年) →67位(21年) →71位(22年) →68位(23年)と変化しており、米国とは反対に昨年まで下がっていた順位が今回は3ランク上がっている。

 

 中東のイスラエルは2019年から22年まで80位台後半であったが、今回は昨年より11ランク下がり97位に後退している。イスラエルとは対照的にカタールは128位(19年) →129位(20年) →128位(21年) →119位(22年) →105位(23年)と直近3年間で大きく躍進している。ロシアとサウジアラビアと中国は過去5年間150位以下にとどまっており特にロシアは2021年から23年にかけて大きく落ち込んでいる。中国は2019年から2021年まで世界177位を続けた後、2023年は世界180カ国中179位と言う世界最低のレベルに落ちている。

 

(完)

 

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北欧が上位を独占、アラブ諸国トップは世界105位のカタール:報道の自由度 (3)

2023-12-30 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0593WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2023年版)

 

3.分野別の自由度比較(レーダーチャート)

 報道の自由度はPolitical context(政治)、Economic context(経済)、Legal framework(法制度)、Sociocultural context(社会)、Safety(安全)の5つの分野について各国の対応を評価したものである。ここでは(1)ノルウェー(総合世界1位)、米国、日本、(2)インド、ロシア、中国のBRICS3カ国、及び(3)イスラエル、カタール、サウジアラビアの中東3か国の分野別評価をレーダーチャート方式で比較する。

 

(すべての面で最高の評価を受けるノルウェー!)

(1) ノルウェー、米国、日本(図http://rank.maeda1.jp/10-G02a.pdf参照)

 総合順位はノルウェーが世界1位、米国45位、日本68位である。ノルウェーは5つすべての分野で90点を超える高い評価を得ている。分野別に見ると政治分野では3カ国の評価点はそれぞれ96.54, 76.56, 55.75であり、3か国の格差は大きい。ちなみに日本の政治面の報道の自由度は他の4分野の中で最も低く、その一因としてRSFは国会記者クラブの閉鎖性を挙げている。経済、法制度、社会の3分野は政治分野と同様の傾向を示している。これに対して安全分野の3カ国の評価は、ノルウェー95.98、米国52.49、日本81.99であり、米国の評価がノルウェー、日本に比べ非常に低いのが特徴である。

 

(社会・法制度の評価が高いインド、低い中国!)

(2) インド、ロシア、中国(図http://rank.maeda1.jp/10-G02b.pdf参照)

 BRICS経済グループの中核をなすインド、ロシア及び中国3か国の総合順位はそれぞれ161位、164位及び179位であり、3カ国ともレベルが低く特に中国は北朝鮮に次ぐ世界最下位である。3か国の自由度を分野別で比較すると、政治及び経済分野ではインドとロシアが30点台前半でほぼ同じであるが、中国は20点台にとどまっている。また安全分野ではロシア31.82、中国27.87、インド27.12であり、上記(1)の3カ国に比べ極めて評価が低い。法制度及び社会分野の自由度は中国が他の2か国に比べ大きく後れを取っている。社会分野の場合、インド45.27、ロシア38.94に対し中国の評価は17.07である。

 

 

(安全の評価が高いカタール、すべての面で劣るサウジアラビア!)

(3) イスラエル、カタール、サウジアラビア(図http://rank.maeda1.jp/10-G02c.pdf参照)

 総合順位はイスラエル97位、カタール105位、サウジアラビア170位である。政治、経済及び法制度の3分野はいずれもイスラエルが3か国のトップであり、カタールがこれに次ぎ、サウジアラビアは最も低く総合順位と同じ傾向を示している。しかし社会分野ではイスラエル76.14、カタール51.14、サウジアラビア30.11とイスラエルが米国並みの高い得点をあげている。一方安全分野ではカタール83.93、イスラエル44.3、サウジアラビア39.8であり、カタールは日本を上回る評価を得ており、イスラエルあるいはサウジアラビアに比べ群を抜いた得点である。

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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北欧が上位を独占、アラブ諸国トップは世界105位のカタール:報道の自由度 (2)

2023-12-29 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0593WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2023年版)

 

(世界180か国中で日本は68位、中国は最下位の北朝鮮に次ぐ179位!)

2.2023年の世界ランク及び前年との比較

(表http://rank.maeda1.jp/10-T01.pdf参照)

 2023年の報道の自由度世界1位はノルウェーで、そのスコアは95.18である。これに続く世界5位までにはアイルランド、デンマーク、スウェーデン及びフィンランドが入っており全て北欧諸国である。ノルウェーは昨年に引き続き世界1位であり、アイルランドは昨年の6位から2位にアップしている。

 

 主要な国々の世界ランクを見ると、米国はスコア71.22で世界45位である。日本はスコア63.95で世界68位である。スコアと順位を昨年と比較すると、米国はスコアが1.52悪化し順位も3ランク下がっている。日本はスコアは0.42下がったが、順位は3ランク上がっている。日本以外のG7の国々はカナダ(15位)、ドイツ(21位)、フランス(24位)、英国(26位)、イタリア(41位)、米国(45位)といずれも日本より報道の自由度が高いとされている。またBRICs諸国は南アフリカ(25位)が際立って高く、インド、ロシア及び中国は160位以下にとどまっている。特に中国は調査対象国180カ国中最下位の北朝鮮に次ぐ最低レベルに評価されている。

 

 中東諸国を見ると、トップはイスラエルで同国の世界順位は97位と世界のほぼ中位である。しかし同国以外の中東各国はいずれも100位以下であり、その中で比較的高いのはカタール(105位)、レバノン(119位)である。カタール以外のGCC諸国はUAEが145位であり、クウェイト(154位)、オマーン(155位)、サウジアラビア(170位)、バハレーン(171位)など最下位クラスにとどまっている。カタールはアラビア語圏ではもっとも人気の高いアル・ジャジーラ放送の拠点であり、欧米諸国からは国際報道姿勢を高く評価されている。特に近年はアフガニスタンのタリバン政権或いはパレスチナガザ地区を実効支配しているハマスに事務所開設を認めるなど、かなり大胆なメディア開放政策を取っていることが評価されているようである。

 

中東の主要国であるトルコ、エジプト及びイランの世界ランクはそれぞれトルコ165位、エジプト166位、イラン177位でありいずれも自由度の評価は最低クラス(評価度:Very serious situation)である。3か国のスコアを前年の2022年と比較すると、トルコは41.25→33.97と大幅に下がっているのに対し、エジプトは30.23→33.37、イランは23.22→24.81と若干改善している。

 

(続く)

 

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北欧が上位を独占、アラブ諸国トップは世界119位のカタール:報道の自由度 (1)

2023-12-28 | その他

(世界ランクシリーズ その10 2023年版)

 

  国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

 第10回の世界ランクは、ジャーナリストのNGO団体「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」(略称RSF)が発表した「報道の自由度2023 (Press Freedom Index 2023)」をとりあげて比較しました。

RSFホームページ: https://rsf.org/en/index

1.「World Press Freedom Index」について

 「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」は、1948年の世界人権宣言、及びこれに続く1950年の「人権と基本的自由の保護に関する会議」などで採択されたいくつかの憲章や宣言に触発され、各国の報道関係者が自発的に結成した非政府組織(NGO)である。フランスのジャーナリストが中心となって設立されたため、正式の組織名はReporters Sans Frontieresであり、その頭文字をとってRSFと略称され、本部はパリにある。

 

 RSFは、世界各国で取材妨害を受け、時には生命の危険に晒されているジャーナリストを保護し、その障害を取り除く活動を行っており、その一環として2002年から毎年、報道の自由度に関する各国のランク「報道の自由の指標(Press Freedom Index)」を公表してきた。この指標はRSFが作成したアンケートに対して、世界各地の表現の自由のための擁護組織団体及び多数のジャーナリストが回答した結果を集計したものである。

 

 2023年版Press Freedom Indexは世界180カ国の報道の自由度を指標化し、ジャーナリストに対する各国の対応ぶりを評価したものである。アンケートでは政治、経済、法制度、社会、安全の5つの分野にわたる合計117の設問に対し、130カ国のジャーナリストが回答したものを統計処理し、各国毎に0点から100点の得点が付けられている。最も自由度が高い場合が100点であり、最悪の評価が0点である。

 

なおアンケートは毎年行われるため、直近に報道の規制または記者の逮捕などの政府の取材妨害があった国、或いはジャーナリストが誘拐・殺害に遭った国についてはその年のランクが低くなる傾向がある。RSF自身は、このランクは「報道の質」の良否を示すものではない、と断っている。

 

RSFのレポートでは点数(ポイント)に応じて各国の自由度を下記の5つに分類し色分けをした世界地図を掲載している。

 

(1)緑色:100~85ポイント(Good situation)

(2)黄色:84~70ポイント(Satisfactory situation)

(3)橙色:69~55ポイント(Noticeable problems)

(4)緋色:54~40ポイント(Difficult situation)

(5)赤色:39ポイント以下(Very serious situation)

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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インドが中国を追い抜き世界一の人口大国に:世界と中東主要国の人口・出生率・平均寿命(3)

2023-12-21 | その他

(世界ランクシリーズその1)

 

(低い中国の出生率、意外と高い米国!)

3.出生率

(表http://rank.maeda1.jp/1-T01.pdf参照)

(図http://rank.maeda1.jp/1-G02.pdf参照)

出生率(女性一人当たりの合計出生率)の世界平均は2.3人である。この数値は経済圏によって異なり、先進地域は世界平均を大きく下回る1.5人に対し、開発途上地域は2.4人、後発開発途上地域の場合は3.9人である。

 

また地理的区分で見るとアジア・太平洋地域の出生率は世界平均を下回る1.9人である一方、中東地域は世界平均を上回る3.1人である。アフリカ地域はさらに高く、特に西・中央アフリカ地域の出生率は世界平均を2倍以上上回る4.8人に達している。

 

日米中印の4カ国を比較すると、出生率が最も低いのは中国の1.2人であり、日本はこれに続く1.3人といずれも世界平均を大きく下回っている。中国の場合は一人っ子政策と言われる政策の要因が強く影響しているものと考えられる。インドと米国の出生率はそれぞれ2.0人、1.7人であり、世界平均を下回っているものの、日中2か国に比べかなり高い。

 

中東の三大国を見るとエジプトは2.8人であり、イランは1.7人、トルコは1.9人である。イラン及びトルコは社会的或いは政策的な抑制策が効いているように見受けられる。産油国のサウジアラビアの出生率は2.4人、UAEは1.4人である。UAEは一人当たりの所得がサウジアラビアを上回っており、国民の生活水準が高いことが出生率の低下を招いていると言えそうである。

 

(男女とも世界平均を10歳以上上回る日本の平均寿命!)

4.主要国の平均寿命

(表http://rank.maeda1.jp/1-T01.pdf参照)

(図http://rank.maeda1.jp/1-G03.pdf参照)

世界の平均寿命は男性71歳、女性76歳で共に70歳を超えている。日本の平均寿命は世界平均を大きく上回り男性82歳、女性88歳であるが、男女ともに世界の平均寿命を10歳以上上回っているのは日本だけである。

 

いずれの国も女性の平均寿命が男性のそれを上回っている。また女性の平均寿命が80歳を超える国は珍しくなく、日本のほか中国、米国は82歳であり、中東でもトルコ(82歳)、イラン、サウジアラビア(共に80歳)である。

 

これに対して男性の平均寿命はいずれの国でも女性のそれを5~6歳下回っている。日本のように男性の平均寿命が80歳を超える国は、ドイツ、フランス、イタリア、カナダなど西欧先進国に多い。インドの平均寿命は男性71歳、女性74歳でほぼ世界平均に近い。

 

(完)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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インドが中国を追い抜き世界一の人口大国に:世界と中東主要国の人口・出生率・平均寿命(2)

2023-12-20 | その他

(世界ランクシリーズその1)

 

(中東は15歳未満が3割、日本は65歳以上が3割!)

2.年齢別人口構成

(表http://rank.maeda1.jp/1-T01.pdf参照)

(図http://rank.maeda1.jp/1-G04.pdf参照)

 人口を(1)0-14歳(若年層)、(2)15-64歳(青・壮年層)及び(3)65歳以上(老年層)に分けた年齢別人口構成で見ると、全世界(80億人)の平均は若年層が25%、青・壮年層は65%、老年層10%である。人口が世界で最も多いインドはそれぞれ(1)25%、(2)68%、(3)7%であり、若年層は世界平均である一方、青・壮年層の割合が高く、老年層の割合は低い。米国の場合、年齢別人口構成は、(1)18%、(2)65%、(3)18%と、青・壮年層の割合は世界平均と同じであるが、若年層は少ない一方、老年層の割合がかなり大きい。

 

 日本は若年層が全人口の11%であり、世界平均の半分以下である一方、65歳以上の老年層は世界平均の3倍の30%を占めている。UNDPの資料によれば老年層が人口の30%に達する国は世界で日本だけであり、日本に次いで高いイタリア(24%)に比べて突出している。

 

 中東諸国は一般に0-14歳の若年層の割合が高く、65歳以上の老年層が少ないのが特徴である。中東全域の平均は若年層33%、青・壮年層63%、老年層5%であり、世界平均の年齢構成とはかなり異なっている。国別に見るとエジプトは中東平均とほぼ同じ構成であり、イラン及びトルコは世界平均に近い構成比率である。

 

産油国のサウジアラビアは若年層26%、青・壮年層71%、老年層3%であり、青・壮年層の割合が高い。同じ産油国のUAEの場合は、若年層は日本とほぼ同じ15%であるが、老年層は全人口の2%にとどまり、青・壮年層の割合(83%)が極めて高い。前節に述べた通りこれら湾岸産油国には出稼ぎ外国人が多く、当然のことながら彼等外国人は青・壮年層に属する。そのため青・壮年層の割合が非常に多い結果となっている。

 

(続く)

 

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