石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(3)

2023-08-02 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

3. 2023年GDP成長率見直しの推移

 IMFの世界経済見通しは毎年4月、10月に全世界200弱の国について成長率の見直しが行われ、さらに1月及び7月には主要な国と経済圏の成長率が発表されている。主要な国と経済圏については3カ月ごとに検証されていることになる。

 最近の特徴はコロナ禍、ウクライナ紛争、エネルギー価格の高騰など国際経済を取り巻く環境の不透明感が増していることである。このためIMFの成長率見通しも3カ月ごとに大きく変動すると言う特徴が見られる。

 ここでは直近6回(2022年4月、7月、10月、2023年1月、4月及び今回7月)のレポートで今年の成長率がどのように見直されたかを検証する。

 

(5%前後で推移する中国、1%台に据え置かれる日本!)

3-1 全世界及び日本、米国、中国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03a.pdf 参照)

 直近6回のIMF経済見通しにおける2023年の世界のGDP成長率は2022年4月見通しでは3.6%であったが、その後7月には2.9%、10月は2.7%と下方修正され、今年1月に2.9%、7月には3.0%と見直されている。

 

 米国は2.3%→1.0%→1.0%→1.4%→1.6%→1.8%と変化している。2022年7月には大きく下方修正されたが、今年は年初から3回続けて上方修正されている。中国の場合は、5.1%→4.6%→4.4%→5.2%→5.2%→5.2%であり、昨年4月から2回連続して成長率が下落したものの、今年は一転して5%台の成長率が想定されており、世界に先駆けて景気回復に向かうものと見込まれている。

 

 日本の2023年成長率の過去1年間の数値は2.3%→1.7%→1.6%→1.8%→1.3%→1.4%と見直されている。昨年4月に成長率が1%台に下方修正された後、現在まで低い成長率が据え置かれている。エネルギー価格の急騰は日本経済のアキレス腱であり、このことが早期の成長率回復の障害になっているようである。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(2)

2023-07-31 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

2. 2022年~2024年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-11.pdf 参照)

 主要な経済圏と国家の昨年(実績見込み)、今年(予測)及び来年(予測)のGDP成長率の推移を見ると以下の通りである。

 

(今年は減速、来年は回復の年!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は3.5%(2022年)→3.0%(2023年)→3.0%(2024年)であり、3%前後で推移する見通しである。コロナ禍からは回復する一方、ウクライナ危機が長引き景気の下振れ要因が強く、今年と来年の世界のGDP成長率は停滞すると見込まれる。

 

 ウクライナ危機の影響を最も大きく受けるのはEU圏である。3年間の成長率は3.5%→0.9%→1.5%とされ、今年は3年間の中で成長率が大きく落ち込んでおり、他の経済圏と比べても際立って低い。ASEAN5カ国の成長率は5.5%→4.6%→4.5%であり、世界平均を上回る高い成長率を維持する見通しである。

 

 産油・ガス国が多い中東及び中央アジアの成長率はエネルギー価格の騰落に大きく影響され、3年間の成長率の推移は5.4%→2.5%→3.2%と見込まれている。昨年はエネルギー価格高騰の恩恵が大きかったが、今年は世界平均を下回り、来年は今年を少し上回る成長率で推移する見通しである。

 

(中国を上回る高い成長率を続けるインド!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は2.1%であったが、今年(1.8%)、来年(1.0%)と連続して成長が鈍化する見通しである。日本の成長率は1.1%→1.4%→1.0%と1%台前半の低成長を続けるものとみられている。日本と同様先進工業国であるドイツの成長率は1.8%→▲0.3%→1.3%であり、今年はマイナス成長になると予測されている。同国は原料のエネルギー輸入価格が高騰する一方、世界景気の低迷で輸出が伸び悩んでいることが低成長の大きな要因と考えられる。

 

中国は3.0%→5.2%→4.5%であり、昨年から今年にかけて経済成長を回復するものの、その勢いは持続せず来年は5%以下にとどまると予測されている。コロナ禍以前は二桁台の成長率を誇っていたことに比べ中国の成長率は伸び悩んでいる。これに対してインドの成長率は7.2%→6.1%→6.3%であり、世界平均を大きく上回る6%以上の高い成長を維持する見込みである。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICSの一翼を担ってきたロシアの成長率は対照的な様相を呈している。昨年(2022年)は一昨年に引き続くマイナス成長(▲2.1%)であり、今年(1.5%)、来年(1.3%)はプラスながらも低い成長率にとどまると予測されている。ウクライナ紛争は未だ終息の見通しが立っておらず、ロシアの今年の成長率がさらに下がる可能性は否定できない。

 

産油国サウジアラビアの3カ年の成長率は8.7%→1.9%→2.8%であり、昨年は原油価格高騰の恩恵を受けたが、今年及び来年は世界景気の回復が遅れる一方インフレによる輸入価格の高騰のため、昨年のような高い成長率は期待できないようである。

 

(続く)

 

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IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(1)

2023-07-29 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook Update、July 2023)」(以下、WEO)を発表した。 このレポートでは全世界、EU、ASEANなどの主要経済圏及び日米中印など主な国々の2021年(実績)から2024年(予測)まで4年間のGDP成長率が示されている。

 

本稿では今年(2023年)及び来年(2024年)の成長率を比較し、また前回4月の経済見通しに対してGDP成長率がどのように修正されたかを検証する。そして2022年から2024年の3年間の成長率の推移を比較する。さらに過去6回の経済見通し(昨年4月、7月、10月、今年1月、4月及び今回)で今年の成長率がどのように見直されてきたかを精査する。

 

*WEOレポート:

https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2023/07/10/world-economic-outlook-update-july-2023

 

(今年の世界の成長率は前回4月見通しを0.2%上方修正し3.0%に!)

1.2023年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)

 今回7月見通しでは今年の世界の成長率は3.0%とされており、前回4月の2.8%から0.2%上方修正されている。ウクライナ紛争の先行きは見えないが、マクロ経済は着実に回復しているものと見られる。

 

 経済圏別に見るとEU圏の2023年の成長率は0.9%であり、4月の数値を0.2%アップしている。またASEAN5カ国も4.5%から4.6%に上方修正されている。これに対して中東・中央アジア諸国は2.9%から2.5%に引き下げられている。EU/東南アジア経済圏が不況を脱したのに対し、石油・天然ガスの産出国が多い中東・中央アジア諸国は、エネルギー価格が不安定で成長率が鈍化しているようである。

 

 国別では今年の成長率は米国1.8%、日本1.4%、ドイツ▲0.3%、英国0.4%、ロシア1.5%、中国5.2%、インド6.1%である。インドの成長率は世界で最も高く、世界平均(3.0%)の2倍以上である。中国はコロナ禍以前に二桁の高い成長を続け、その後急激に減速したが、それでも世界平均を上回っており、インドと中国が世界の成長をけん引している。これに対してヨーロッパ諸国は上記の通りEU圏の成長率が1%を下回り、ドイツは主要国の中で唯一マイナス成長と見込まれている。

 

産油国のサウジアラビアは1.9%であり、前回4月見通しの3.1%が大幅に下方修正されている。同じ産油国のロシアは逆に4月見通しの0.7%が1.5%に上方修正されている。ロシアは欧米先進国から経済制裁を受けているが、中国、インドが同国原油を安値で輸入するなどロシア経済への影響力はさほど大きくないのが現実のようである。

 

(続く)

 

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急速に改善する中国、悪化するUAE:世界平和指数(下)

2023-07-19 | その他

(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0581WorldRank8.pdf

 

(世界ランクシリーズ その8 2023年版)

 

(上昇傾向の中国、カタール、大きく下落するUAE!)

3.日米中露と中東主要国の世界ランクの推移(2018年~2023年)

(図http://rank.maeda1.jp/8-G01.pdf参照)

 2018年から2023年までの平和指数世界ランクの推移を見ると、アイスランドは6年間を通じてトップを維持している。2018年の日米中露と中東主要国のランクは日本が9位、UAE45位、カタール56位であったが、その他の国々はいずれも世界100位以下であった。

 

 日本はその後2021年を除きベストテンを続け今年は世界9位である。米国の世界順位の推移は121位(18年)→128位(19年)→121位(20年) →122位(21年) →129位(22年) →131位(23年)と近年は順位が下がる傾向が見られる。一方中国は112位(18年)→110位(19年)→104位(20年) →100位(21年) →89位(22年) →80位(23年)と6年連続して順位が上昇、昨年からは100位以内にランクアップし、今回は世界164カ国の上位グループに食い込んでいる。

 

 中東諸国の中ではカタールの伸びが著しく過去6年間を通じて毎年順位を上げ、低迷する他国との格差を広げている。同国の2018年の順位は56位であったが、今回は世界21位にランクされ同国の平和指数の改善には目を見張るものがある。これに対してUAEは順位の下落が激しく、2018年にカタールを上回る世界45位であったが、翌2019年には順位が逆転、その後両国の格差は拡大する一方であり、今年はカタールの21位に対してUAEは75位にとどまっている。カタールは2022年のワールドカップ開催のため治安の維持、平和イメージの向上に多大な努力を払ったことがうかがわれる。

 

 2018年に129位であったサウジアラビアはその後改善の兆し見られ、2023年には119位にアップしている。イランとロシアはここ数年平和度が低下しており、イランは2018年の131位が2023年には147位にまでダウンしている。またロシアは2018年から2021年まで世界154位であり、世界最低レベルに低迷していたが、2022年、23年はさらに平和指数が悪化、2023年のランクは世界163カ国中の158位に落ち込んでいる。

 

(完)

 

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急速に改善する中国、悪化するUAE:世界平和指数(中)

2023-07-18 | その他

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http://mylibrary.maeda1.jp/0581WorldRank8.pdf

 

(世界ランクシリーズ その8 2023年版)

 

(世界163か国中で日本は9位、米露アラブ主要国は軒並み100位以下!)

2.2023年の世界ランク及び2022年との比較

(表http://rank.maeda1.jp/8-T01.pdf参照)

 2023年の平和指数世界1位はアイスランドでスコアは1.124である。これに続く世界5位までにはデンマーク、アイルラ、ンドニュージーランド及びオーストリアがあがっている。ニュージーランド以外はいずれも西ヨーロッパの国々である。なお今回と昨年のトップ5の顔触れは同じであり2位と4位の順位が入れ替わっただけである。

 

 日本を含む主要な国々の世界ランクを見ると、日本は9位(スコア1.336)でスコアは昨年と同じであるが順位が10位から9位に繰り上がっている。中国は80位であり、昨年の89位から9ランク順位をあげ、世界163カ国のほぼ中間に位置している。米国、インド、ロシアはいずれも世界100位以下であり、インドは126位、米国はさらに低い131位にとどまっている。両国の昨年の順位はそれぞれ135位及び129位であり、今回は順位が逆転している。ロシアは158位であり、ほぼ最底辺にとどまっている。最下位の163位はアフガニスタンである。

 

 中東各国を見ると、トップはカタールで同国の世界順位は21位と世界的にみても平和指数がかなり高く、また前年と比べても指数、ランクともに上昇している。カタールは中東では群を抜いて平和指数が高く、カタールに次ぐのはUAEで世界ランクは75位である。昨年の同国のランクは60位であり、今年は大幅にダウンしている。

 

 その他の中東諸国のほとんどは100位以下にとどまっている。カタール、UAEとともにGCCの構成メンバーである産油国サウジアラビアの世界順位は163カ国中の119位である。エジプトは121位にランク付けされ、イスラエルは143位、イラン及びトルコは共に147位である。これら各国の順位を前年と比較すると、エジプトはアップ、イラン、イスラエル及びトルコはいずれもダウンしている。

 

(続く)

 

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急速に改善する中国、悪化するUAE:世界平和指数(上)

2023-07-14 | その他

(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0581WorldRank8.pdf

 

(世界ランクシリーズ その8 2023年版)

 

  国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

 第8回の世界ランクは、NGOグループVision of HumanityがThe Economist Intelligence Unit (EIU、英国の経済誌エコノミストの一部門)のデータをもとに取りまとめた「The Global Peace Index 2023」をとりあげて比較しました。

 

*Vision of Humanityのホームページ:

https://www.visionofhumanity.org/conflict-deaths-at-highest-level-this-century-causing-world-peacefulness-to-decline/

 

1.「The Global Peace Index」について

Global Peace Indexは各国の平和の程度およびそれを維持するための機能を指数化し、ランク付けしたものである。2007年に実施された第1回調査ではその対象は121カ国であったが、今回の2023年版では163カ国を対象に調査が行われている。

 

平和指数はEIU社の国別調査員と外部ネットワークの協力を得て作成されている。指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費[1]、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースにして作成されたものである。

 

「世界平和指数」の査定結果には以下のような特徴が見られる。

  • 平和の度合いは収入、教育制度、地域一体化のレベル等の指標に関連している。
  • 平和な国の多くは政府の透明性が高く、汚職が少ない。
  • 小さいが安定した国は平和のランクが高い。

(平和の世界地図:濃緑色Very high、緑色 High、黄色 Medium、オレンジ Low、赤 Very low)

 

(続く)

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[1] 世界ランクシリーズ7「世界と中東主要国の軍事費」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0575WorldRank7.doc.pdf

 

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日本は世界125位、政治参画分野の低さが致命的-「男女格差指数」(5完)

2023-07-11 | その他

(世界ランクシリーズ その5 2023年版)

 

(突如急上昇したUAE、5年前の110位から低落続く日本!)

5.2018~2023年の総合ランクの推移

(図http://rank.maeda1.jp/5-G01.pdf 参照)

 ここでは中東4カ国(UAE、エジプト、サウジアラビア及びイラン)に日本、中国を加えた6カ国の過去5回の世界ランクの推移を検証する。

 

 この6カ国のうち日本は2018年の110位をピークにして凋落傾向にあり今回は125位にとどまっている。また中国の過去5回の順位の推移は、103位(‘18年)→106位(‘20年)→107位(‘21年)→102位(‘22年)→107位(‘23年)と低迷している。

 

 これに対してUAE及びサウジアラビアは世界順位が大幅に改善されている。特にUAEは2020年の120位から‘21年には72位と順位を大きく上げており、その後も70位前後にとどまっている。サウジアラビアも2022年に前年の147位から127位へ20ランクアップしている。エジプトは130前後を維持している。一方、イランは過去5回を通じて世界最低ラインに近いランクを続けている。

 

追記:各分野のスコアとその配分に若干の問題?

 WEFの男女格差指数では日本のランクが極めて低く、特に先進国の中で最低のランクとスコアであり、しかも年々悪化していることはかなりショッキングな内容と言えよう。日本の場合、政治分野の男女格差が諸外国に比べて際立って大きく、また経済分野でも格差の是正が遅れていることはWEFが指摘するまでもなく明らかであり、その点ではWEFの評価に異論を唱えるつもりはない。しかしながら4分野のスコア配分あるいは各分野において一部開発途上の国々がかなり高いスコアを出していることには若干問題があるように見受けられる。

 

 まず各分野のスコアの偏差値がかなり片寄っていることが指摘できる。これは上記4のレーダーチャートを見ればよくわかる。例えば政治分野は0.901(アイスランド)が最も高く、0.000(アフガニスタン)が最も低い。その格差は0.901である。経済分野も政治分野同様スコアの格差が大きい。これに対して健康分野では最高スコア0.980(ブラジル他26カ国)に対し最低スコアは0.936(アゼルバイジャン)であり、格差は0.044に過ぎず、教育分野では格差指数最大の1.000が30カ国にのぼっている。総合順位は各項目を加重平均したものであるため偏差値の大きい政治及び経済分野が全体のスコアと順位に影響を及ぼしているのである。

 

 各分野の国別スコアも問題含みと言えそうである。例えば健康分野の最高スコア0.980を与えられた26カ国の中にはナミビア(因みに同国は総合世界8位)、ボツアナなどアフリカ大陸の国々、あるいはブラジル、ドミニカ、エルサルバドルなどの中南米諸国が入っている。また経済分野では北欧諸国とともにアフリカのリベリア、ブルンジ、ザンビアなど多くの開発途上国がトップグループに入っており、これらの国の中には独裁政権も混じっている。

 

 スコア算定のデータは国際機関が発表したものも少なくないが、原始データはいずれも各国政府が提供したものである。各国政府が意図的に脚色したデータを提出してもそれを検証することは困難であり、意図的な改ざんは独裁政権では極めてありがちである点を指摘しておきたい。(以上はあくまでも筆者個人の私見であることをお断りしておく。)

 

以上

 

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日本は世界125位、政治参画分野の低さが致命的-「男女格差指数」(4)

2023-07-09 | その他

(世界ランクシリーズ その5 2023年版)

 

4.要素別比較(レーダーチャート)

 ここでは8カ国及び世界平均を取り上げ、これらを3グループにわけてそれぞれの総合順位、経済、教育、健康及び政治の4分野別スコアをレーダーチャートで表してみる。レーダーチャートは最も外側がスコア1.000(つまり男女格差が無い若しくは女性が男性を上回る)を示し最も内側はスコア0.000(即ち男女格差が無限大)である。グラフの実線が外側に広がるほど男女格差が少ないことを示し、また真円に近いほど4分野の男女格差が平均化していることを示している。

 

(際立って高いアイスランドの政治分野のスコア!)

(1)チャート1(アイスランド、米国、世界平均)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G02.pdf 参照)

 総合スコアではアイスランドは0.912であり、米国は0.748、世界平均は0.684である。分野別に見ると政治分野はアイスランド0.901、米国0.248、世界平均0.221であり、アイスランドのスコアが際立って高い。経済分野はアイスランド(0.796)と米国(0.780)の格差は小さく、世界平均のスコアは0.601にとどまっている。教育及び健康分野は3者ともスコアが0.950以上であり有意な差は見られない。

 

(政治分野は印中日、経済分野は中日印の序列!)

(2)チャート2(日本、中国、インド)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G03.pdf 参照)

 総合スコアは中国(0.678)、日本(0.647)、インド(0.643)であり、3カ国に大きな差異はない。分野別に見ると政治分野ではインドが0.253と最も高く、次いで中国(0.114)、日本は0.057であり2カ国との格差は大きい。経済分野の格差は中国(0.727)、日本(0.561)、インド(0.367)で政治分野以上に格差が大きく、しかも3カ国の中で政治分野トップのインドが経済分野では3カ国中最も低いことが特徴である。教育分野ではインドは男女完全平等(1.000)であり、健康分野では日本(0.973)が最も高いが、3カ国のスコアに大きな差は見られない。

 

(教育分野以外でトルコ、エジプトに劣るイラン!)

(3)チャート3(トルコ、エジプト、イラン)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G04.pdf 参照)

 中東の三大国トルコ、エジプト及びイランはイスラーム国家と言う共通点を持つが、人種的にはトルコ人、アラブ人、ペルシャ人の違いがあり、また政治・経済体制も異なる。しかし男女格差で見るといずれも世界ランクはトルコ129位、エジプト134位、イラン143位と世界の最低レベルにとどまっている。

 

 3カ国を分野別に比較すると、経済分野の男女格差スコアはトルコ(0.500)、エジプト(0.420)、イラン(0.188)でイランのスコアがトルコ及びエジプトを大きく下回っている。政治分野についても同様の傾向が見られ、エジプト(0.175)、トルコ(0.106)に対してイランは(0.031)であり、イランの男女格差が非常に大きい。教育及び健康分野のスコアはいずれも0.940から0.980の範囲である。ただし上記に述べた通りこの2分野は世界平均が0.952及び0.960であるため、世界順位では100位前後にとどまる。

 

(続く)

 

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日本は世界125位、政治参画分野の低さが致命的-「男女格差指数」(3)

2023-07-07 | その他

(世界ランクシリーズ その5 2023年版)

 

(格差が大きい政治分野、小さい教育分野!)

3.分野別のランクとスコア

(表http://rank.maeda1.jp/5-T02.pdf 参照)

 男女格差指数は(1)経済参画分野、(2)教育分野、(3)健康・寿命分野及び(4)政治参画分野の4つの分野について公表されたデータに基づいて詳細な比較検討が行われている(本稿第1章参照)。本章では第2章で取り上げた国々、すなわち世界の上位5か国及び日本を含む主要各国並びに中東主要国について4分野のスコアと世界ランクを概観する。

 

(1)経済参画分野の男女格差

 総合世界1位のアイスランドはこの分野では世界14位(スコア0.796)である。因みにこの分野のトップはリベリア(同0.895)であり、その他上位陣にはジャマイカ、ベラルーシ、ボツアナなどが入っている。米国は21位(同0.780)、英国は43位であるが、日中韓印のアジア4か国は、中国の45位(同0.727)が最も高く、韓国114位、日本123位、インド142位である。

 

(2)教育分野の男女格差

 WEFが各国の統計値をもとに判断した教育分野の男女格差は世界的に極めて小さい。即ちフィンランド、インド、イスラエルのスコアは1.000であり男女格差が無い。格差指数は1.000が上限であり、国によっては1を超える(即ち女性と男性の逆格差)ケースもあり、教育格差指数1.000は146か国中30か国に達する。また146カ国中の半数を超える81カ国の格差指数が0.990以上である。

 

 日本のスコアは0.997でありトップ(1.000)との格差は0.003にすぎないが、世界ランクは47位である。中国はスコア0.935で世界123位である。中東諸国ではイスラエルがスコア1.000で世界1位グループに入っている。その他UAEは世界86位(スコア0.988)、サウジアラビア87位(同0.986)であり、エジプト、イランは世界100位以下である。但し世界119位のエジプトのスコアは0.943でUAEと比べスコアの格差はさほど大きくない。

 

(3)健康・寿命分野の男女格差

 世界1位のスコアは0.980で、ブラジル、ハンガリー、スリランカなど26カ国が並んでいる。スコアがわずか0.007しか違わない日本(スコア0.973)は世界順位が59位とされている。中国(スコア0.937)はこの分野最下位のアゼルバイジャン(同0.936)に次ぐ低いランクにとどまっている。トップと世界最下位のスコアの差は0.044で、この格差の中に146か国がひしめいており、わずかなスコアの差がランク上の大きな差となって表れている。

 

 留意すべきは健康・寿命格差は各国の医療福祉水準の良し悪しを比較したものではなく、あくまでも当該国において医療福祉にアクセスする場合の男女の格差を示したものである。先進国、発展途上国を問わず一般に女性の平均寿命が男性よりも長いことは事実であり、指数化して比較すると一見男女格差が無いように見える点に注意すべきであろう。

 

(4)政治参画分野の男女格差

 この分野の世界1位はアイスランドで同国のスコアは0.901である。これに続く世界2位はノルウェーであるが、同国のスコアは0.765でありアイスランドと大きな開きがある。3位、4位はそれぞれニュージーランド、フィンランドであり総合順位とほぼ同じである。日本はスコア0.057、世界順位138位であり、インド (世界59位)、米国(63位)にはるかに及ばず、韓国(88位)、中国(114位)とも大きな差がある。中東諸国と比べても日本はUAE(35位)、エジプト(85位)と大きな差があり、トルコ(118位)に並ぶ水準である。

 

この分野トップのアイスランドのスコアと日本のスコアの差は0.844と極めて大きい。因みにこの分野の最下位はアフガニスタンの0.000である。これは同国の男女格差が無限大に近いこと示している。4分野の中で政治参画分野は国別格差が最も大きい。

 

政治の男女格差は女性国会議員数、閣僚数、或いは過去50年間の女性元首(首相等)の在任期間でランク付けされているため全体的に各国ともスコアが低く、また同じ先進国でもヨーロッパに比べ日米のランクが低い結果となっている。

 

(続く)

 

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日本は世界125位、政治参画分野の低さが致命的-「男女格差指数」(2)

2023-07-05 | その他

(世界ランクシリーズ その5 2023年版)

 

(北欧諸国がトップ独占、日本はインドと並ぶ世界125位!)

2.2023年の男女格差指数世界ランク

(表http://rank.maeda1.jp/5-T01.pdf 参照)

 2023年の世界男女格差ランクのトップ(即ち男女の格差が最も少ない国)は昨年に引き続きアイスランドである。同国の格差指数は0.912で昨年の0.908より向上している。これに続く2位はノルウェー(スコア0.879)、3位フィンランド(同0.863)、4位ニュージーランド(同0.856)であり、5位はスウェーデン(同0.815)がランクされている。上位5か国のうち4カ国は北欧諸国である。昨年の世界ランクと比較するとベストファイブの顔触れは変わらず、順位も2位と3位が入れ替わっただけである。

 

 日本を含む主要な国々の世界ランクを見ると、英国は15位(スコア0.792)、米国は43位(同0.748)である。一方アジアの主要な国のランクは韓国の105位(同0.680)をはじめ中国107位(同0.678)、インド127位(同0.643)といずれも世界146カ国中では100位以下の下位グループである。このような中で日本は世界ランク125位(同0.647)であり韓国或いは中国を下回り、インドとほぼ同じランクにとどまっている。

 

上記6カ国の世界ランクを前回(2022年、対象国は同じ146カ国)に比べると、日本は116位から125位に9ランク下がっている。また米国も前回の27位から今回は43位に16ランク下がっている。その他韓国、中国も前回より順位が落ちている。これに対して英国とインドはそれぞれ22位→15位、135位→127位と順位を上げている。

 

 中東の主要国では、UAEの世界71位(スコア0.712)がトップであり、イスラエルが83位(同0.701)でこれに続いている。前回はUAEとイスラエルの順位が逆であったが、イスラエルが前回の60位から大幅に順位を下げた結果、前回68位であったUAEが今回中東ではトップとなっている。その他の中東諸国はいずれも世界ランク100位以下であり、トルコ129位、サウジアラビア131位、エジプト134位が130位前後で並んでいる。イランは146か国中のほぼ最低ランクの143位(スコア0.575)にとどまっている。世界最下位の146位はアフガニスタン(スコア0.405)であり中東諸国は男女格差が極めて大きい。

 

(続く)

 

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