BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数(続き)
(サウジの埋蔵量増加は株式公開が念頭?)
(3)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(2005-2018年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G03.pdf 参照)
ここではOPEC加盟国のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国にロシア、米国、ブラジルを加えた計8カ国について2005年から2018年までの埋蔵量の推移を追ってみる。
ベネズエラの2018年末埋蔵量は世界一の3,033億バレルである。同国が世界一になったのは8年前の2010年からである。2005年当時の同国の埋蔵量は現在の4分の1強の800億バレルにすぎず、サウジアラビアはもとよりイラン、イラク、UAEよりも少なかった。ところが同国は2007年に埋蔵量を994億バレルに引き上げると翌2008年にはさらに2倍弱の1,723億バレルとしたのである。そして続く2009年、2010年にも連続して大幅に引き上げ、それまで世界のトップであったサウジアラビアを抜き去り石油埋蔵量世界一の国となった。
ベネズエラの埋蔵量の増加は2006年のチャベス大統領(当時)の再選と重なっており、同大統領が国威発揚を狙ったことは明らかである。即ち埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しており、同国がサウジアラビアなどの中東OPEC諸国に対抗し、さらには現在石油の生産と消費が世界一である米国を牽制する意図もうかがわれるのである。しかしながらその後の油価の低迷及び経済の混乱により現在同国は財政破綻に直面しており、米国の経済制裁も絡んで生産量は大幅に落ち込んでいる。
一方サウジアラビアは1990年末に改訂して以来2016年末まで埋蔵量は2,600億バレルであり25年以上横ばい状態であった。ただし横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の追加があったことを意味している。サウジアラビアの場合は1990年から2016年までの生産量は900~1,000万B/Dであり年率に換算すると33~37億バレルであったから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。このことからサウジアラビアの埋蔵量数値はベネズエラなどに比べ信頼性が高いと評価する専門家が少なくない。しかしサウジアラビアは2017年に埋蔵量を前年の2,660億バレルから2,960億バレルとほぼベネズエラに並ぶ水準に上方修正している。これを純粋に技術的な検討結果と見ることもできるが、国営企業サウジアラムコが株式上場(IPO)を目指していることから、埋蔵量の増加はアラムコの財務評価を上げるためといううがった見方をする向きもある。
非OPECのロシア、米国及びブラジル3カ国の2005年末と2018年末を比較するとロシアはほぼ横ばいであり、米国は2倍、ブラジルも1割増加している。即ち2005年末の埋蔵量はロシア1,044億バレル、米国299億バレル、ブラジル118億バレルに対し、2018年のそれはロシア1,062億バレル、米国612億バレル、ブラジル134億バレルである。特に米国の場合は2009年末までは横ばい状態を続け、2010年に350億バレルに上方修正され、以後2014年まで毎年大きく増加、さらに2017年にも大幅にアップしている。シェールオイルの開発によるものと考えられる。
(続く)
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