II. 天然ガス
1.世界の生産量(続き)
(トップを独走する米国!)
(3)主要国の2014~2023年の生産量推移(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03b.pdf参照)
2014年から2023年までの天然ガス生産量の推移について、ここでは2023年世界1位、2位、3位の米国、ロシア及びイランに加え、同6位カタール、7位オーストラリアの5カ国の動きを見る。
2014年の米国とロシアの天然ガス生産量はそれぞれ7,047億㎥及び5,912億㎥であり米国がロシアを19%上回っていた。米国ではシェールガス開発が軌道に乗り生産量が急増、低迷するロシアをしり目に両国の格差は2017年以降急速に拡大している。2020年の生産量はロシアの6,384億㎥に対し米国は1.5倍近い9,248億㎥であった。更に2022年及び2023年はウクライナ紛争による西欧諸国の輸入制限によりロシアの天然ガス生産量が急減した。2023年の生産量は米国が1兆㎥を超え、一方ロシアは10年前の2014年を下回る5,864億㎥にとどまっている。
カタールとイランの生産量は2015年までほとんど同じであった。LNG輸出中心のカタールは2010年までにLNG年産7,700万トン体制を整え、長期契約により世界のLNG市場をリードしているが、供給過剰を回避するため新規設備投資を凍結する「モラトリアム体制」を取った。このため2010年代を通じて生産量はほとんど増えていない。これに対して1億人近い人口を抱えるイランは国内のエネルギー消費を賄うため天然ガスの生産を高めた。この結果2023年の生産量はイランの2,517億㎥に対しカタールは1,810億㎥にとどまり、2014年に比べるとイランは1.4倍増加したのに対し、カタールは1.1倍の増加にとどまっている[1]。
カタールの生産量が停滞している間に意欲的な増産に取り組んだのがオーストラリアである。同国の2014年の生産量は653億㎥でありカタールの4割にとどまっていたが、2023年には1,517億㎥に拡大しカタールに迫っている。
(続く)
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[1] 現在、カタールは「設備増強モラトリアム宣言」を撤回し、年産1億2千万トンを目指して設備の増強に着手、LNG輸出市場での主導権を回復しようとしている。