石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(184)

2024-07-23 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(17

 

184 シリア情勢:敵の敵は味方か敵か?(1/5)

シリア内戦は基本的にはアサド政府とその退陣を求める反政府組織の軍事闘争である。国際的な力学関係でみるとアサド政府を支援しているのがイランとロシア。イランはアサド一族がアラウィ派(シーア派の一派)であることが主な理由であり、ロシアはシリアに中東で唯一の軍港を保有している。ロシアにとって冬季に凍結するバルト海に比べ黒海からボスポラス海峡を抜けて地中海に至る航路は軍事的に重要な意味があるためアサド政権側に立っている。これに対して米国など西欧諸国は反政府組織を支援している。独裁政権を打倒し自由な民主主義政権を樹立することが反政府組織支援の大義名分である。またサウジアラビアなどのアラブ諸国とトルコも一致して反政府支援である。こちらはシーア派のアサド政権及びこれをバックアップするイランに対する対抗措置である。

 

ところがシリアの反政府組織は一枚岩ではない。それどころか思想信条を異にする呉越同舟の集団である。構成メンバーの勢力の消長は激しいが、主なものとしてはクルド人民防衛隊(YPG)と複数のアラブ系反政府勢力から成るシリア民主軍(SDF)並びにヌスラ戦線がある。そして政府組織、反政府組織のいずれとも異なる第三勢力としてIS(イスラム国、別称ISIL、ISIS、ダーイシュ)がある。

 

 

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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IMF世界経済見通し(2024年7月版):低成長続くEU、中国の成長率は5% (下)

2024-07-23 | 今日のニュース

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0607ImfWeoJuly2024.pdf

 

2. 2023年~2025年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-11.pdf 参照)

 主要な経済圏と国家の昨年(実績見込み)、今年(予測)及び来年(予測)のGDP成長率を見ると以下の通りである。

 

(回復軌道のEU圏、成長維持するASEAN、加速する中東・中央アジア!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は3.3%(2022年)→3.2%(2023年)→3.3%(2024年)であり安定的に推移すると見込まれている。EU圏の3年間の成長率は0.6%→1.2%→1.8%とされ、低迷状態であったEUは回復する見通しである。

 

ASEAN5カ国の成長率は4.1%→4.5%→4.6%であり、世界平均を上回る高い成長率を維持すると考えられる。ASEAN はインド及び中国の成長を下支えする世界の成長センターとして引き続き機能していくものと見られる。

 

 産油・ガス国が多い中東及び中央アジアの成長率はエネルギー価格と需要に大きく影響される。3年間の成長率が2.0%→2.4%→4.0%と上昇傾向にあることは、来年にかけて世界貿易が改善しエネルギー需要が回復するであろうことを示している。

 

(中国を上回る高い成長率を続けるインド!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は2.5%であったが、今年は2.6%、来年は1.9%である。昨年から今年は成長を維持し、来年は一服するようである。日本の成長率は1.9%→0.7%→1.0%と成長回復の足掛かりが見えない。今年は第1四半期に主要な自動車工場が操業停止したためマイナス成長になったことが響いている。日本と同様先進工業国であるドイツの成長率は▲0.2%→0.2%→1.3%であり、同国は昨年までエネルギー輸入価格の高騰と輸出の伸び悩みに足を引っ張られていたが、マイナス成長を脱して景気回復の軌道に復帰しつつある。

 

中国の3か年成長率は5.2%→5.0%→4.5%とされている。かつての年10%を超える成長率は無理としても世界平均を上回っており、世界経済をけん引する力を見せつけている。この中国を上回る成長を見込まれるのがインドである。同国の成長率は8.2%(昨年)→7.0%(今年)→6.5%(来年)と世界平均を大きく上回る7%前後の高い成長を維持する見込みである。IMFは2023年の成長率の上方改定に伴うキャリーオーバー効果と、農村地域を中心に個人消費の見通しが改善したためであるとしている。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICSの一翼を担ってきたロシアの成長率は、昨年の3.6%から今年は3.2%に、さらに来年には1.5%になるとして3年間連続で成長率は低下するものと予測している。これに対して同じ産油国サウジアラビアは対照的な様相を呈しており、3カ年の成長率は▲0.8%→1.7%→4.7%と年々改善されるものと見込んでいる。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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