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第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(20)
187 シリア情勢:敵の敵は味方か敵か?(4/5)
イスラーム過激派勢力であるヌスラ戦線(現ファトフ軍)とイスラム国(IS)は宗教意識が強く自己犠牲をいとわないため戦闘能力は高い。しかし宗教をバックとする勢力は指導者次第であり簡単に分裂する。ISIL(イラクとシリアのイスラム国)の指導者バグダディはヌスラ戦線と袂を分かち中央政府に対する反政府活動ではなく、外国の支援に頼らない自らの国家「イスラム国」を樹立した。彼らは西欧勢力が植民地時代に線引きをした現在の国境(サイクス・ピコ協定)を認めない。彼らは理想のカリフ制イスラーム宗教国家を目指し、インターネットを利用して外国に住む若者を巧みに誘い、戦闘員に仕立て上げている。
独立自営型の「IS(イスラム国)」、アル・カイダのネットワークに頼るヌスラ戦線、クルド人兵士に支えられ欧米と湾岸諸国の援助に頼るシリア民主軍。これら乱立する反政府組織と対峙するのがロシアやイランに支えられるシリア政府軍。基本的にはアサド政権を支えるロシア・イランと反政府勢力をバックアップする中東及び欧米諸国という対立構造の中で諸勢力が群雄割拠してシリア情勢は混乱を極めている。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com