石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2024年版解説シリーズ(6)天然ガス3

2024-07-18 | EIエネルギー統計

 

II. 天然ガス

1.世界の消費量

(世界の天然ガスの22%を消費する米国!)

(1)2023年の国別消費量  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01b.pdf参照)

 2023年の世界の天然ガス消費量は4兆102億立法メートル(㎥)であり前年(2022年)比では横ばいである。

 

 天然ガスの最大の消費国は米国であり、消費量は8,865億㎥、世界全体の22%を占める。同国は石油消費量も世界1位でありエネルギー消費大国である。2位はロシアの4,534億㎥、3位は中国の4,048億㎥である。これら3か国の世界シェア合計は44%に達する。4位はイラン、5位はカナダであり、6位サウジアラビア、7位メキシコに続いて8位を日本が占めている。9位、10位はドイツ及びUAEであり、上位10カ国が世界全体の消費量に占める割合は64%に達する。

 

 これら上位10カ国の顔触れを石油の消費国順位と比較すると、米国、ロシア、中国、カナダ、サウジアラビア及び日本の6カ国は両方に顔を出しているが、イラン、カナダ、メキシコ及びドイツは石油消費の上位10傑に入っていない。

 

(1970年以降の半世紀で消費量4倍に急成長!)

(2) 1970~2023年の消費量の推移(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02b.pdf参照)

 1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥、2008年には3兆㎥の大台を超え、2021年に4兆㎥を超え2023年の消費量は4兆102億㎥に達している。1970年から2023年までの間で消費量が前年度を下回ったのは1997年、2009年、2020年及び2022年の4回であり、53年間の増加率は4倍を超えている。

 

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から数年間にわたり急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。これに加え最近では地球環境問題の観点からCO2排出量の少ない天然ガスの需要が増加している。この結果天然ガス消費量は石油の2倍のスピードで増加している。

 

(4千億㎥を超えた中国、1千億㎥を割った日本!)

(3) 米国、中国、日本、インド4カ国の過去10年間の消費量推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03b.pdf参照)

米国(2023年の天然ガス消費量世界1位)、中国(同3位)、日本(同8位)及びインド(同12位)の2014年から2023年までの消費量の推移を見ると、2014年は米国が7,223億立方メートル(㎥)、次いで中国が1,884億㎥、日本1,248億㎥、インド485億㎥であり、米国とその他3カ国の格差は4倍以上であった。その後中国の消費量は急ピッチで増加、2016年には2千億㎥、2019年には3千億㎥を突破、2023年の消費量は4,048億㎥を記録し、米国との格差は2倍程度まで縮まっている。

 

 一方、日本の消費量は2014年の1,248億㎥が過去10年間の最高であり、その後は年々減少、2023年には924億㎥と1千億㎥を切り、中国の4分の1以下、米国の10分の1程度に縮小している。インドは2014年の消費量485億㎥に対し2023年は626億㎥であり過去10年間に1.3倍増加している。

 

(続く)

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(182)

2024-07-18 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(15

 

182 混迷深まる中東(2/3)

その結果イラン・イラク戦争はアラブ人対ペルシャ人(イラン)という因縁の民族的対立に加えシーア派対スンニ派という宗派対立の構図が炙り出され、君主制の湾岸諸国が世俗国家イラクを後押しする羽目になった。これに対してイランはシリアを側面支援してレバノンを舞台にシリアとイスラエルの代理戦争を演出、さらにイラク及び湾岸諸国のシーア派住民を使嗾して各国の体制に揺さぶりをかけたのであった。加えてホメイニ憎しの米国は民主主義の理念を棚上げして独裁国家イラクを支援した。

 

こうして中東地域ではイランとイラクが直接敵対する関係になり、湾岸諸国にとって味方(イラク)の敵(イラン)は敵という訳であり、中東イスラームという一つの地域の中に敵と味方が混在する構図となったのである。かつてのイスラーム諸国対イスラエルという単純な二項対立が宗派を介して複雑化した。逆の立場のイランにとっても同じことがいえる。即ち味方(シリア)の敵(イスラエル)は敵であり、敵(イラク)の味方(サウジアラビアなどの湾岸諸国)は敵である。そして奇妙なことにサウジアラビアにとってイラン、シリアの敵であるイスラエルはこれまで通りやはり敵なのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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