IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook、October 2024)」(以下、WEO)を発表した。
本稿では今年(2024年)及び来年(2025年)の成長率を比較し、また前回4月の経済見通しに対してGDP成長率がどのように修正されたかを検証する。そして全世界及び主要経済圏並びに7カ国(日、米、中、印、独、露、サウジアラビア)の2023年から2025年の3年間の成長率の推移を比較する。
*WEOレポート:
(今年の世界の成長率は3.2%、前回7月見通しと変わらず!)
1.2024年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
今回10月見通しでは今年の世界の成長率は3.2%とされており、前回7月と変わっていない。IMFは世界経済が安定し続けるものの勢いが欠けそうだと分析している。
経済圏別に見るとEU圏の2024年の成長率は1.1%であり、7月の数値から▲0.1%ダウンしている。またASEAN5カ国は4.5%で前回7月と変化はない。これに対して中東・中央アジア諸国は石油生産の停滞と地域紛争が続き2.4%の低い成長率が見込まれる。
国別では米国2.8%、日本0.3%、ドイツ0.0%、英国1.1%、ロシア3.6%、中国4.8%、インド7.0%である。日本とドイツの成長率は1%以下、EU圏も1.1%にとどまり、いずれも前回7月の見通しを下回っている。このような中で米国の成長率は2.8%と日欧に比べかなり高く、しかも7月の見通しが上方修正されている。米国経済が好調である一方、日本及び欧州の経済は厳しい環境から抜け出せないでいる。
これら先進国に比べBRICS諸国の成長率は高い水準にある。特にインド(7.0%)は世界最高水準であり、世界平均(3.2%)の2倍以上である。中国(4.8%)も世界平均を上回っている。しかし前回4月に比べると、インドは横滑りであるのに対し、中国は▲0.2%下方修正されており、経済回復は期待を下回る状態を続けている。ロシアはウクライナ戦争下で欧米の経済制裁を受けて厳しい状況にあるが、今年の成長率は世界平均を上回る3.6%である。日欧向けの石油・天然ガスの輸出はほぼストップしているが、それに代わりインド、中国向けが増加しており、経済制裁の影響は少ないようである。
産油国のサウジアラビアは1.5%であり、前回7月見通しの1.7%から若干下方修正されている。OPECプラスは来年初から220万B/Dの自主減産を順次緩和する(即ち増産体制に転じる)としているが、見通しは楽観を許さず石油輸出に頼る同国経済は厳しい状況が続いている。
(続く)
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