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http://mylibrary.maeda1.jp/0608EiWorldEnergy2024.pdf
II. 天然ガス
(原油価格に連動した日本、超安値の米国、ガス不足に振り回される西欧!)
4. 天然ガス価格の推移(2014年~2023年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01b.pdf 参照)
天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する[1]。
市場の自由取引にゆだねられた商品は一般的には価格が一本化されるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。液化天然ガス(LNG)として輸入する日本では原油価格にスライドするケースが多い。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格の指標として原油価格が使われているためである。
これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。
ここでは日本価格、オランダTTF価格(以下オランダ価格)、及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2014年から2023年までの推移を比較することとする。なお参考までに原油価格(ドル/バレル)も合わせて比較の対象とした。
2014年の日本価格は15.73ドル、オランダ価格8.11ドル、米国価格4.34ドルであり、当時の原油価格は98.95ドルであった。米国価格が最も低く、日本価格は4倍弱であり、オランダ価格は両者の中間に位置している。
2014年から2016年にかけて原油価格が暴落したため、2016年の日本価格も6.73ドルと2014年の半値以下まで下落した。この時オランダ価格も4.53ドルまで落ち、日本価格との比率は1.9倍から1.5倍に縮小している。2020年までは日本価格とオランダ価格は原油価格とほぼ同じアップダウンを繰り返しているが、米国価格はこの間も一貫して2~3ドルの低価格で推移している。
2021年になるとコロナ禍が終息して環境問題による天然ガスの需要増加の兆しが見えたことに加え、ウクライナ紛争で欧米諸国が対露経済制裁に乗り出したことで市況が激変した。これまでロシアからのパイプラインによる天然ガスに依存していた西欧諸国はアルジェリア等アフリカ諸国からのパイプライン輸入の増加を図る一方、世界各国のLNGを買い漁った。この結果ガス価格は急騰2022年のオランダ価格はついに37ドルに急騰、日本価格(16.98ドル)の2倍以上に跳ね上がった。
2023年には価格は落ち着きを見せ日本価格とオランダ価格は共にほぼ13ドルとなっている。一方米国価格は2022年に原油価格に連れて2020年の6ドル強まで上昇したが、2023年は通常ベースの2ドル台におさまっている。
以上
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[1] 東京ガスHPhttp://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/investor/ig1000.pdfより。
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