(注)本シリーズはブログ「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0355BpOilGas2015.pdf
(近年急速に改善される米国のエネルギー自給率!)
(7)米国の石油・天然ガス自給率の超長期推移(1970~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-3-G06.pdf 参照)
米国の石油・天然ガスの需給ギャップが近年急速に改善しつつあることについては既に石油篇(同篇3-5)、天然ガス篇(同篇3-5)及び前項でも触れたが、本項では改めて1970年から2014年までの四十五年間にわたる石油と天然ガス並びに両者を合わせた自給率の推移を検証する。
まず石油については1970年は生産量1,130万B/Dに対し消費量は1,471万B/Dであり自給率は77%であった。つまり米国は必要な石油の4分の3を自国産で賄っていたことになる。その後石油の消費量が急拡大する一方、原油価格が低水準にとどまったため生産が伸び悩み、第二次オイルショックの1979年には自給率が55%まで低下した。
1980年代前半には石油価格が上昇したため国内の生産が増加、消費は減少した結果、1985年には生産量1,058万B/D、消費量1,573万B/Dで自給率は67%まで回復した。ただその後は海外の安価な石油に押され生産は減少の一途をたどり2005年から2007年までの3年間の自給率は33%に落ち込んだ。この時、米国は必要な石油の3分の1しか自給できなかったのである。
しかし2000年初めから石油価格が急上昇し、米国内で石油増産の機運が生まれ、同時にシェール層から石油を商業生産する方法が確立し、2007年以降石油の生産量は大幅に増えた。反面、景気の後退により消費量が漸減した結果、2014年は石油生産量1,164万B/D、消費量1,904万B/Dで自給率は61%に上昇している。
次に天然ガスを見ると、1970年から1982年までの自給率は99%であり、ほぼ完全自給体制だった。80年代後半以降は生産が伸び悩む半面、消費が増加したため、自給率は漸減の傾向を示し、2005年には82%まで低下、需要の約2割を隣国カナダからの輸入に依存することになった。しかしシェールガスの開発生産が本格化するに伴い生産量は急激に拡大し、2014年の自給率は96%に達している。今後1~2年内に自給率が100%を突破、将来はLNGの輸出国になろうとしている。
石油と天然ガスを合わせた自給率は1970年に86%であった。その後石油自給率と同じような歩調で1979年70%、1984年78%と下降と上昇の軌跡をたどった後、1985年以降は長期低落傾向となり、2005年の自給率は50%に落ち込んだ。しかしその後は急速に回復、2014年の自給率は75%と1980年前半の水準に戻っている。因みに2014年の石油・天然ガスの合計生産量は石油換算で2,419万B/D、また合計消費量は同石油換算で3,212万B/Dである。需給ギャップが8百万B/D近くあるものの、シェールガス及びシェールオイルの増産は今後も続くものと見られ、エネルギーについては米国の将来は極めて明るいと言えよう。
(石油+天然ガス篇 完)
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