ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ITSへの提言:市場の自律性を中心に据える その2

2005年06月18日 | ITS
カーメーカーの商品企画のもっとも重要な仕事は、目標コスト・売価と装備仕様表のにらめっこだ。
「他車に差別化できる自車の特長装備」と、「他車が装備していて、自車にも装備しないと負けてしまう装備」について優先順位をつけて、ショッピングリストを作っていく。

とくに、後者の「装備しないと市場競争力を無くしてしまう」装備が今回のテーマのキーになる。

例えばエアバッグだ。いま新車を購入する場合、エアバッグが付いていない車を選択する人はいないだろう。
事実、そんな車は既に殆ど存在しない。
従って、エアバックは車両の数を同じ数が生産され、結果大量生産と競争でコストも押さえられ、車両の売価に与えるインパクトも小さくなっている。

これが市場の自律性に基づく普及の典型的なパターンだ。

ITS関連の車両装備も、こうした過程を経なければ普及はない。
商品企画者のショッピングリストに残る装備でなければ、世の中にでていくことすら出来ないのだ。

では、どういう商品・サービスが「それがなければ買わない」と市場が合意する装備になるのだろうか?

ITSへの提言:市場の自律性を中心に据える その1

2005年06月18日 | ITS
さて、第二のキーワードとして、「市場の自律性を中心に据える」をあげた。

ここでいったん話を変えるが、ITS JapanがNGO人格を取得した。
ITS Japanは生い立ちが産学官のコンソーシアムであるが、NGOとして改めてユーザーの視点でITS推進していくとのこと。
もともと特定の官庁との結びつきがないため、役所の縦割りをこえた活動が期待される。

昨年秋の名古屋ITS世界会議以降、ITSへの関心は拡大するどこか逆に萎んできているように見える。実際、関連企業やそれに携わってきた関係者も世界会議まではがんばって、そこで一段落という意識がでているのではないかと思う。なぜなら、ETC普及の先の明確な絵が見えてこないからである。

ITSジャパンはこの状況に陥った原因を主に2つ、あげている。
ユーザー視点の欠如と、官の縦割り行政だ。

ユーザー視点の欠如、というだけでは言葉が足りないと思う。
ITSの各施策に欠落していたのは「マーケティングセンス」だ。

マーケティング、つまり物やサービスが売れる仕組みである。
よく売れている物やサービスは、必ず市場そのものに何らかのドライブがかかっている。水が高いところから低いところへと流れるように、勝手に市場が動いていく。こうした仕組みを上手に作るのがマーケティングだと言うことが出来る。

しかるに、例えばETCをとってみれば、如何にそれが出来ていなかったかがよくわかる。
マーケティング不在というよりも、逆にわざと売りにくくしているのではないか、とすら思える。

認定した店でないとセットアップ出来ない、セットアップに手数料がかかる、専用のクレジットカードが必要、専業者でないと装着が出来ない、立ち上がり時、車載器は値頃を外した3万円台、等々。
こうした様々な「販売阻害要因」はすべて「売り手都合」による物だ。

偽造、不正使用の防止、セキュリティー確保に万全を期すための負担を単純に使用者に押しつけるという、まさに役所感覚なのだ。