ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

いまさらスマートプレートに意味があるのか?

2005年06月21日 | ITS
国交省(自動車交通局)はスマートプレートの導入を本気で考えているようだ。
なんと計画では2009年の装着義務化をロードマップに据えている。

一枚あたり+1000円といわれるナンバープレートのコスト、さらには電池の寿命に伴って定期交換の負担をもユーザーに強要するこの施策、本当に必要なのだろうか?

国交省が示すスマートプレートを強制装着する理由・メリットは以下の通りだ。
1.偽造防止
2.車両盗難防止
3.検査の効率化
4.環境対策

しかし、ちょっと待って欲しい。各々の項目をよく見てみると、殆どこじつけのような内容が多い。

ナンバープレートの偽造という行為は確かに存在するのだろう。不正車検や犯罪利用などだ。
しかし、その頻度やそれによる被害、抑止効果を考えた場合、高価なナンバープレートを全車に強制装着させるほどのことなのか?

また、組織的な車両盗難団は盗難車をトレーラーでは運び、海外へ輸出してしまう。
ナンバープレートをいくら細工しても抑止効果はない。

検査の合理化は、検車場での省力化と不正防止が目的だというが、はっきり言って大げさである。
これによる省力化効果なんてたかがしれている。

環境対策は路上で行われている排ガスチェックの合理化とのことだが、少なくとも乗用車は関係ない話だ。

なぜ大した使い道がないスマートプレートを無理矢理導入しようとしているのか。その答えは以下の通りである。

・ETC以前から、旧運輸省はスマートプレート構想をもっていたが、
 旧建設省のETCがDSRC活用システムとして立ち上がってしまった。
 しかし、ETCは100%全車装着には出来ない。

・全車装着されなければ、ITSへの応用は不可能、という錦の御旗
 の元で、旧建設省一派に先を越されてたスマートプレート(旧
 運輸省)もその巻き返しに勢いが付いてきた。

・加えて、実は先に上げた4つのメリット以上の狙いが、Nシステムの代替
 である。従って、警察庁がスマートプレートを強力に後押ししている。
 (Nシステム:ナンバープレート読みとりシステム)


Nシステム自体、警視庁が正式にその存在を認めていないため公式には発表されないだろうが、スマートプレートになれば路側の読みとり装置が大幅にコストダウンされることになり、設置箇所が増えるのだろう。

プライバシー保護論者が知れば大騒ぎになるだろう。
それに関して私自身は極端に過敏な意見を持っているわけでもなく、犯罪捜査に貢献するのなら100%否定するつもりはない。
気に入らないのは、ITS推進という美名に隠れながらこうした計画が進められているということである。

2009年には、100%ではないにしろETCはかなりの普及をしている筈だ。
ユーザーはETCに出費をし、さらに同じDSRC受送信機器であるスマートプレートも購入しなければならない。
こんな理不尽な話はなかろう。

我が国には6000万台の車両が稼働している。台あたり1000円として600億円。結構な無駄使いだ。
レスポンスの特集(2003年12月)にもあるとおり、国交省は「勇気ある撤退」を考えるべきだ。