ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

参宮橋社会実験の結果

2005年06月08日 | ITS
参宮橋社会実験が終了した。
当ブログの関連記事・2004年12月・国交省参宮橋実験への疑問

12月の記事で予言したように、「効果有り」の発表がされた模様だ。
ちょっと長いが、以下は日刊建設工業からの抜粋転載。

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カーナビに渋滞情報、運転中の「ヒヤリ」24%減/国交省がITS利用事故防止社会実験

実験では、急カーブ付近で渋滞が頻発し、追突事故の多発個所となっている首都高速4号新宿線上りの参宮橋カーブ(東京都渋谷区)にセンサーを設置。ドライバーから死角になっているカーブの先の渋滞や事故車両をセンサーが感知し、カーブの300メートル手前に設置されたビーコンから後続車両のVICS対応カーナビに情報を送信、注意を喚起する。

実験の中間報告によると、カーブ前方に渋滞などがある時に時速50キロ以上の高速でカーブに進入する車両の割合は、サービスの導入前と比べて約8%減少。カーブ内での急ブレーキの発生は約24%少なくなった。前の障害物によって起こった事故は1カ月間で1件だった。

国交省は「サービスへの評価は好意的で、さらに周囲の車の減速や事故防止にもつながっていると思われる」としている。
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しかし、この結果は極めて不自然である。ビーコン付きVICS装着車の割合は正確な資料がないが、商業車など含めてを考えればおそらく全体の通行量の数%、それも下の方だと思う。

一方で、この報告では急ブレーキが24%、高速でカーブに進入する車は8%減少したとある。
多少は後続車への影響などもあるだろうが、それにしても数字が離れすぎている。

そのカラクリはこうだと思う。
国交省はこの実験が始まると同時にカーブ手前の警告表示(電光掲示や点滅ライト)を増設したのだ。
(実験前後の写真を撮って検証したわけではないが、少なくとも私は走行してそう感じた)

危険箇所の手前に警告表示をすれば、効果があって当たり前だ。
しかし、単純に上記の記事を読む限りでは、「路車間通信は安全に寄与する結構なものだ」と誰でも思うだろう。

恣意的なデータをもとに「だから路車間通信は必要なのだ、ITS投資を進めるのだ」というような欺瞞的なやり方はやめて欲しい。

P-DRGSについて

2005年06月07日 | ITS
ITS情報通信システム推進会議は来る6月16日に2005年度ITS情報通信システムシンポジウムを行う。


今回はP-DRGS(Driving Route Guidance system) : プローブ情報を活用した動的経路案内システムに関する講演が中心となっている。

P-DRGSはp-drgsコンソーシアムが推進するプローブ活用による交通支援システム。もともとは慶応大学SFCの村井教授が名古屋のタクシーで行った実験を引き継いだ名古屋地区の産学連携団体がこのコンソーシアムだ。

村井教授の実験はインターネットITS協議会へと発展しており、従って同コンソーシアムもインターネットITS協議会と近い存在である。

従って、先ほど発表されたインターネットITS協議会の総会方針(6月3日当ブログ記事参照)のなかには、3つの基本方針の一つとして「プローブ情報サービス」があげられている。

さて、上記P-DRGSのサイトを見る限りでは、結局の所はプローブによる渋滞予測である。これを2005年度以降、サービス事業として立ち上げるというロードマップが語られているが、これはどうなのだろう。
まあ、このコンソーシアムが名古屋地区、ということは最終的には当然トヨタが受け皿になる話だと思うが、不十分とはいえVICSがある我が国で、渋滞予測ってそんなに大がかりな仕掛けに値するマーケットなのかということに多少の疑問がある。

本当の狙いは中国?(なぜかP-DRGSには中文ページがあるのだ)

「道の駅」とDSRC

2005年06月06日 | ITS
ちょっと古い調査結果だが、総務省東海総合通信局が昨年の4月にドライバーを対象に実施した電波を利用した「道の駅」の発展的機能に関する調査研究報告書という資料を発見した。

まず、前提として「道の駅」は休憩場所としては十分機能しているが、情報発信機能と地域連係機能が不足している、としている。
道の駅の機能は休憩所だと私は思うが、まあ、この前提は良しとしよう。

で、その結果を簡単にサマリーすると、

・道の駅利用者は、情報を「電光掲示板」で表示、もしくはカーラジオで提供してくれれば
 良いと思っており、ナビ画面や携帯という回答は下位に位置している。

ここからは、「どうせたいした情報はないし、そのためにわざわざ機器を装備したり、手間をかける気はない」、という心理が読める。

これが真実だと思う。
DSRCの可能性として、道の駅での情報提供という項目がかなりの期待感と共に謳われているが、消費者はそんなこと望んでいない。
情報発信っていったって、それは結局商売に直結している事くらい誰でも知っている。だから「情報提供したければ、掲示板にでも出したら?」という程度の関心なのだ。

施設内に入れば、いやでも近隣の観光名所のパンフがあり、特売の特産品が目に付く。それ以上の情報提供なんて、何がある?

インターネットITS協議会第4回総会

2005年06月03日 | ITS
うーん、めずらしく仕事が多忙で更新がままなりません。

ちょっと情報提供。

インターネットITS協議会は5月24日、第4回総会を開催した。
ウェブサイトからはその議事内容など判らないが、情報によれば05年度の活動方針を「事業立ち上げ」と位置づけ、来年3月にはこの3年間の活動の総仕上げとして「合同発表会」を行うらしい。
事業化するのは「ロードサイドサービス」「プローブ情報サービス」「コンテンツ配信サービス」の3サービスとする。

ロードサイドサービスは、SS、駐車場、整備工場が車へロードサイドから情報を提供することを想定しているようだ。目的は集客と顧客の固定化。
消費者にとっては、「いらない」サービスであり、私は「絶対に実現しない」と思っている。

プローブ情報サービスは、安全運転支援とエコドライブ支援が目的。プローブからの情報を他車に提供することで危険情報共有や最短ルート案内をすることを想定しているようだ。
しかし、これを単独で「事業化」するのは相当困難だと思う。ホンダのインターナビでも、プローブはあくまで「付加機能」である。

コンテンツ提供サービスは、事業化というよりは事業化のベースとなる共通データフォーマット策定が目標となるらしい。「情報」「音楽」「映像」を提供する。まあ、これはあり得ない話ではないが、言うほど大きな市場はないと思う。
普通に生活している人間にとって「ユビキタスに情報ダウンロード」する必要なんてそんなにないということは、苦戦しているホットスポットの状況をみてもよくわかる。

いつものことだが、消費者にとって「何がどう便利になるから、どの位の対価が支払われるか」という出発点の議論が置き去りにされている。

携帯夏モデルのブルートゥース対応

2005年06月01日 | ITS
ドコモとAUの夏商戦モデルが発表されたが、AUでブルートゥース対応機種が1機種だけ。ドコモは詳細判らないが、特にブルートゥースに関する記載なし。

これは、ITS、テレマティクス陣営にとっては逆風である。
携帯のブルートゥース対応で、通信機器と車載機器が「乗車しただけで」つながるという構想は、携帯が対応してくれない限り夢物語になってしまう。

なぜ日本の携帯はブルートゥース対応に積極的ではないのか?それはニーズが小さいからに他ならない。
鳴り物入りで始まった走行中の携帯禁止も、取り締まりが特別に強化されたわけでもなく、結局ハンズフリーの市場にもたらしたインパクトも期待ほどではなかったようだ。
さらにハンズフリー以外では、G-BOOKの他にはこれといったアプリケーションがなく、現状を是とすれば携帯キャリアにとってブルートゥース搭載のメリットは小さい。

通信がらみのITSビジネス自体の停滞を反映しているともいえそうだ。