ケインズ研究の大家、ロバート・スキデルスキーとその子息のエドワード・スキデルスキーが書いた「じゅうぶん豊かで貧しい社会」は、副題の「理念なき資本主義の末路」を多面的に描いた出色の本です。
彼らは、経済成長一辺倒でいびつで不幸な社会に至った、飽くなき欲望に支配された今の社会から、人々は「良い暮らし」を目指して考え方を転換することを説いております。その「良い暮らし」とはどういう暮らしなのか? スキデルスキーは、次の7つの基本的価値をあげております。
1.健康
自分の身体のことを安心して忘れていられる状態。
2.安定
自分の生活が戦争・犯罪・革命など社会的・経済的な動揺に脅かされることなく明日も続くこと。他の基本的な価値の実現に必要な条件(とりわけ、人格・友情・余暇)。
3.尊敬
その人の意見や姿勢を重んじ、無視したり粗略に扱ったりすべきでないとし、それを表明すること。
4.人格または自己の確立
自分自身の理想や気質や倫理観に沿って人生を設計し実行する能力のこと。
5.自然との調和
例えば、都市が周辺の農村地帯から完全に孤立化しないように努力すること。具体例は園芸や造園。腕の良い庭師は、自然の潜在性をよくわきまえ、敬意を払う。庭師は人間が理想とする心地よさや美しさの基準に沿って、自然本来の姿を上手に整え導くのである。庭師と自然との関係は調和である。
6.友情
相手の価値をあるがままに受け入れ、それにより共通の新しい価値が育まれるところに真の友情は存する。夫婦でも親子でも友情はあり得る。
7.余暇
報酬を貰ってする仕事も、お金が主目的ではなく、それをしたいからするのであれば、余暇活動にあたる。
これら7つの基本的価値は、どれか一つが欠けていても別のもので埋め合わせることが出来ないものであり、それぞれが普遍的で最終的(それ自体として価値があり、他の価値を得る手段ではないこと)かつ独立した価値であり、なくてはならないものだとしております。
「人は幸福になるために生きている」とよく言われますが、この幸福の追求とは一体何なのだろうかと言うことを、根本から考えたい人にはお勧めの本です。
写真は、筆者が「自然との調和」を目指して、近くの庭師の方にお願いした家の前の庭が、初夏を迎えてようやく形を整えてきた姿です。
写真に写っていない家庭菜園は土壌が酷く、トマトとキュウリを植えたものの既に立ち枯れ状態。素人がいきなり畑仕事をやっても碌なことにはならないと痛感。自給自足の生活にあこがれて大自然一杯の田舎に引っ越さなくてよかった!!
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