ロイターの伝えるところによれば、29日の欧州銀行間取引金利(EURIBOR)の1ヶ月ものが4.809%となり、2001年5月以来に水準に上昇。前日は何と4.169%でした。これは記録を取りだして以来の最も急激な上昇であり、イタリアの経済新聞、イル・ソーレ紙はウェブサイトにEURIBORが「Gone Mad」(発狂)したと伝えております。
3ヶ月ものも4.743%から4.776%に上昇しており、8月のピークに迫りつつあり、ECBの貸出金利の4%をかなり上回った水準です。
これはヨーロッパの債券市場が、このままでは制御不能に陥る可能性があることを示唆しております。これを受けて、ドイツ銀行のエコノミスト、トーマス・メイヤーは、当局は先回りして手を打つべきだと言い、彼だけでなくヨーロッパのトップエコノミスト達は、来週の政策決定会議で金利を引き下げるように要求しております。
実際、ドイツのIKB銀行がサブプライムで61.5億ユーロの損失を出したことも同日明らかになっておりますが、今日の日経の夕刊では、「IKB産業銀行はサブプライムローン問題の損失額が確定できず、30日に予定していた決算発表を延期した」とのみ報道し、ドイツ連銀が金融システムの健全性を強調したとの記事に留まっております。
この日経をはじめ、日本の各紙の論調は、世界のそれとかけ離れて何と悠長なことでしょう。これは一体何か政治的な意図でもあるのかと勘ぐりたくなります。
何故、バーナンキが利下げを示唆する発言をしたのか、これでようやく分かりました。ECBもこの事態に利下げを余儀なくされるからです。そうでないと、IKBやノーザンロックだけでなく、どうもヨーロッパの信用力が低い、特に小型の銀行が危ないようです。
ヨーロッパは、何もアメリカのサブプライム問題の余波だけを受けている訳ではありません。S&Pのヨーロッパのエコノミストが言っているように、地中海エリアとアイルランドの住宅価格の下落が深刻な不況の引き金を引くという、重大問題を実は抱えております。スペインや英国もそうですが、今年の1月に筆者が訪問したマルタ島でも平均月収が12-3万円の国で、海を望む一戸建てが何と5千万円とのことでした。住宅価格は日本のバブルを思い出すまでもなく、そこに住む人々が何とか買える水準にまで下落するのが常です。まさにこの住宅バブルがアメリカだけでなくヨーロッパでもはじけつつあるのが、ヨーロッパのまだ誰も気が付いていない重大問題だと、そのエコノミストが指摘しておりますが、その通りでしょう。
それから、ユーロ圏の問題はもう1つ、忍び寄るインフレです。ドイツでの11月の消費者物価指数は3.3%の上昇だそうです。日本がわずか0.1%の上昇と日経の今日の夕刊に報道されておりましたが、ドイツのこのインフレ率はユーロに入ってからの最高値とのこと。現にオーストリアのECBの総裁は、すでにインフレはAlarming(警戒すべき)の状態に入ったと言っております。
にもかかわらず、利下げをせざるを得ないクレジット・クランチの脅威です。これがバーナンキが「オーバーナイトのマーケットのフリーズを避けるため、必要とあらば、無制限のキャッシュを注入する」と11月26日に行った発言と重ね合わせて見る必要があります。これは金融の非常事態宣言です。何しろ、世界最大の金融機関、シティバンクがアブダビ投資庁から受ける資金供与の金利が、期待収益率にリスクプレミアムを乗せるため、債券より高いのは当たり前とはいえ、11%という高率なものなのです。
こられのことを、11%の金利のことは伝えても、その意味するところと、背景の金融危機について、何故日本のジャーナリズムは率直に伝えないのか?
といったことを色々と知るにつけ、FRBの利下げで日本の株価もまた上がるものと楽観的に考えることは禁物だと思います。確かにカンフル効果はありますので、ある程度は戻すでしょう。しかし、10月3日のブログで書いたように、利下げをするということは、それだけ経済・金融状態に問題があるということに他なりません。従って、いずれ株価も調整を余儀なくされるのが2000年以降での経験則です。
最後についでながら、もう1つだけ意見を言わせて下さい。
それはグローバルした経済で新興国市場が急速に成長しているため、NYダウ銘柄の利益に貢献していること、そのため、アメリカが多少不景気になっても新興国市場の成長があるため世界経済は不況に落ち込むことはないとの論調です。
前段のNYダウ銘柄への寄与はこれまではその通りだったでしょう。しかし、それはアメリカ経済が順調であったことと裏腹のことです。東京オリンピック前の日本を見てもそれは分かります。アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪を引くと言われ始めた時代です。今の中国が何故元高に持って行けないのか?輸出が減って国内経済が深刻なダメージを被るためです。アメリカの消費があってこその新興国です。今の新興国の内需だけでアメリカの消費の落ち込みをカバーすることなど、出来ないと筆者は思っております。経済規模のバロメーターである世界のエネルギー消費量の分布を見ただけで、これは納得出来るのではないでしょうか。親亀がこけたら小亀もこけるのが世の摂理というものでしょう。
PS.この記事を書いた後、変動利付きローン(ARM)の金利上方リセットを凍結協議の話が、このブログのリンク先の「いちカイにヤリ」さんのブログで紹介されておりました。危機回避のためにはこれからも出来ることは何でもやる姿勢です。このニュースのインパクトは結構大きいですね。
3ヶ月ものも4.743%から4.776%に上昇しており、8月のピークに迫りつつあり、ECBの貸出金利の4%をかなり上回った水準です。
これはヨーロッパの債券市場が、このままでは制御不能に陥る可能性があることを示唆しております。これを受けて、ドイツ銀行のエコノミスト、トーマス・メイヤーは、当局は先回りして手を打つべきだと言い、彼だけでなくヨーロッパのトップエコノミスト達は、来週の政策決定会議で金利を引き下げるように要求しております。
実際、ドイツのIKB銀行がサブプライムで61.5億ユーロの損失を出したことも同日明らかになっておりますが、今日の日経の夕刊では、「IKB産業銀行はサブプライムローン問題の損失額が確定できず、30日に予定していた決算発表を延期した」とのみ報道し、ドイツ連銀が金融システムの健全性を強調したとの記事に留まっております。
この日経をはじめ、日本の各紙の論調は、世界のそれとかけ離れて何と悠長なことでしょう。これは一体何か政治的な意図でもあるのかと勘ぐりたくなります。
何故、バーナンキが利下げを示唆する発言をしたのか、これでようやく分かりました。ECBもこの事態に利下げを余儀なくされるからです。そうでないと、IKBやノーザンロックだけでなく、どうもヨーロッパの信用力が低い、特に小型の銀行が危ないようです。
ヨーロッパは、何もアメリカのサブプライム問題の余波だけを受けている訳ではありません。S&Pのヨーロッパのエコノミストが言っているように、地中海エリアとアイルランドの住宅価格の下落が深刻な不況の引き金を引くという、重大問題を実は抱えております。スペインや英国もそうですが、今年の1月に筆者が訪問したマルタ島でも平均月収が12-3万円の国で、海を望む一戸建てが何と5千万円とのことでした。住宅価格は日本のバブルを思い出すまでもなく、そこに住む人々が何とか買える水準にまで下落するのが常です。まさにこの住宅バブルがアメリカだけでなくヨーロッパでもはじけつつあるのが、ヨーロッパのまだ誰も気が付いていない重大問題だと、そのエコノミストが指摘しておりますが、その通りでしょう。
それから、ユーロ圏の問題はもう1つ、忍び寄るインフレです。ドイツでの11月の消費者物価指数は3.3%の上昇だそうです。日本がわずか0.1%の上昇と日経の今日の夕刊に報道されておりましたが、ドイツのこのインフレ率はユーロに入ってからの最高値とのこと。現にオーストリアのECBの総裁は、すでにインフレはAlarming(警戒すべき)の状態に入ったと言っております。
にもかかわらず、利下げをせざるを得ないクレジット・クランチの脅威です。これがバーナンキが「オーバーナイトのマーケットのフリーズを避けるため、必要とあらば、無制限のキャッシュを注入する」と11月26日に行った発言と重ね合わせて見る必要があります。これは金融の非常事態宣言です。何しろ、世界最大の金融機関、シティバンクがアブダビ投資庁から受ける資金供与の金利が、期待収益率にリスクプレミアムを乗せるため、債券より高いのは当たり前とはいえ、11%という高率なものなのです。
こられのことを、11%の金利のことは伝えても、その意味するところと、背景の金融危機について、何故日本のジャーナリズムは率直に伝えないのか?
といったことを色々と知るにつけ、FRBの利下げで日本の株価もまた上がるものと楽観的に考えることは禁物だと思います。確かにカンフル効果はありますので、ある程度は戻すでしょう。しかし、10月3日のブログで書いたように、利下げをするということは、それだけ経済・金融状態に問題があるということに他なりません。従って、いずれ株価も調整を余儀なくされるのが2000年以降での経験則です。
最後についでながら、もう1つだけ意見を言わせて下さい。
それはグローバルした経済で新興国市場が急速に成長しているため、NYダウ銘柄の利益に貢献していること、そのため、アメリカが多少不景気になっても新興国市場の成長があるため世界経済は不況に落ち込むことはないとの論調です。
前段のNYダウ銘柄への寄与はこれまではその通りだったでしょう。しかし、それはアメリカ経済が順調であったことと裏腹のことです。東京オリンピック前の日本を見てもそれは分かります。アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪を引くと言われ始めた時代です。今の中国が何故元高に持って行けないのか?輸出が減って国内経済が深刻なダメージを被るためです。アメリカの消費があってこその新興国です。今の新興国の内需だけでアメリカの消費の落ち込みをカバーすることなど、出来ないと筆者は思っております。経済規模のバロメーターである世界のエネルギー消費量の分布を見ただけで、これは納得出来るのではないでしょうか。親亀がこけたら小亀もこけるのが世の摂理というものでしょう。
PS.この記事を書いた後、変動利付きローン(ARM)の金利上方リセットを凍結協議の話が、このブログのリンク先の「いちカイにヤリ」さんのブログで紹介されておりました。危機回避のためにはこれからも出来ることは何でもやる姿勢です。このニュースのインパクトは結構大きいですね。