7月24日の「アンカリングリスクの9原則」に続いて、今日は行動ファイナンス理論の実践原則から「取引のタイミングの3原則」と「利益が出ている時の行動の2原則」、そして「損失が出ているときの行動の8原則」について、少々思うところを記してみます。少しアドリブを入れていますのであまり真面目に解釈し過ぎないように。
■取引のタイミングの3原則
(1)個々の取引では、ターゲット価格と、ストップ・ロス(辞める時の損失枠)を決めておくこと。目標利益は、リスクにさらせる額の3倍程度を目安にする。ストップ・ロスは低すぎないこと。
最近筆者、この原則に無頓着になってきております。その日に手仕舞いするかどうかは、一応、その日の4本足から判断するようにしていますが、どうしてももう1日待てば、「ここまで下がったのだから明日上がるはず」、と勝手に思ってしまい、いわゆる損失が出ている時のリスク選好に陥りがちです。目標利益も必ずしもきちんと定めておりませんでした。下がれば「そろそろ上がる」と考えるくせに、上がれば「もっと上がる」と考えてしまうのです。この「業」を断ち切らねば相場に明日はありません。
(2)高い的中率は、必ずしも、高い利益を意味しない。
コツコツ勝って大きく負けるという、例のパターンですね。相場は勝率や点数ではありません。従って、学校で勉強のできた秀才が必ずしもトレーディングで勝てる訳でもありません。かといって、勉強ができなかった人が相場に勝てる訳でもありません。何しろ相手は複雑系です。猪突猛進、徒手空拳が相場を制することもあります。とにかく、仕事と同じでドラッカーではありませんが、「自分の強み」を生かすことでしょうか。
(3)トレーディング・ボリュームを一定に保つこと。成功が続いたからと言って取引額総額を増やしてはならない。失敗が続いたからと言って、取引総額を増やしてはならない。
よくあるケースは、競馬で最後のレースにその日の稼ぎを全部かけて「おから」になってしまうケースです。一攫千金を狙いたい気持ちは誰でも持っているものです。しかしよく考えてみて下さい。相場は今日で終わりではありません。ずっと続きます。あわてることはありません。自分のペースで淡々と勝てるトレードを行えばよい訳ですね。勝負をかけすぎると、思いこみも激しくなるのは人の常です。そこに落とし穴が待ちかまえております。
■利益が出ている時の行動の2原則
次の「感応度低減の原則」を思い出すのが大切なようです。
「1000円利益をあげているときの100円の追加利益に比較し、2000円の利益があがっているときの追加利益の200円(同じ10%)は、感応度が鈍って、小さく思える。」
こういう例も錯覚します。7月29日はエンジャパンは58万から60万2千円Kへと2万2千円上がりました。一方、アルバイトタイムスは1079円から1130円と51円上がりました。どちらが早く利確したくなるでしょうか。エンジャパンの2万2千円を取りたくなりますね。しかし、上昇率はエンジャパンが3.8%に対して、アルバイトタイムスは4.7%です。
(1)長らく利益を待っていたので我慢できないとか、恐ろしくなったからという理由で、ポジションを清算してはならない。
目標利益はリスクに晒す金額の3倍程度と最初に書かれております。感応度低減の原則からすれば、これは絶対額ではなく、投資金額に対する比率で考える必要がありますね。
(2)目標利益に到達する前に利益を確定したいという誘惑に駆られたときは、反対のポジションのときならどう考えていたかを想像して欲しい。利益でなく損失のときはどうしていたか? 損失を確定させるだろうか?
これも原則は分かりますが、長期か短期かによってやり方は変わってくると思われます。また、その日のその銘柄の勢いもありますので、デイトレなどの場合には、「利食い千人力」が勝つこともあるでしょうね。その代わりに損失確定は持ち越さずに、その日終わりまでにという「厳しい戒律」も守らないと、結果的にはずるずるとトータルでは負けていくということになりかねません。
■損失が出ているときの行動の8原則
(1)取引の前にストップ・ロスを決めておくこと。いかなる状況のときも、それを超えて取引してはならない。
筆者の場合、買値から5%とか10%とかを損切りラインに決めたことがありましたが、リスク選好に陥りがちなこともあり、うまくいきませんでした。それは、その根拠が自分自身でも納得できていないからだと気が付きました。現在は、テクニカル分析により、明日も下がる見込みが強ければその日の終わりに手仕舞うことをしています。上がるのであれば持ち越すことになります。もちろん当たらなかった時は、その理由を分析する材料として前向きに捉えれば、それはそれで納得できるものとなります。
(2)利益の上がらないポジションで、無駄な時間を費やしてはならない。資金がそこで固定されていることを忘れてはならない。
いわゆる塩漬けというのは、単に資金がそのまま固定されているのではなく、じりじりと資産額が目減りしていることをお忘れなく。その上、他に買いたい銘柄が出てきても買えないという二重の弊害があります。
(3)損失を抱えたら、難平(ナンピン)買いでポジションを膨らませてはならない。ナンピン買いはポジションを拡大させ、リスクを増やす。
そうは言っても、逆張りでの底値を狙った場合と、順張りで上値を追っての売買の場合では、ナンピンに対する考え方は多少変える必要があるのではないかと思います。前者の場合はナンピンもある程度やむを得ないのではないでしょうか。それも2-3日以内でのナンピンですが。
(4)調子が悪いときもストレスに耐えられるような、維持可能なポジションのサイズを選ぶこと。
これも、人それぞれの器に応じた投資額があるようです。筆者の場合は、当初はお金があればほぼ全部張っていました。これでは自由度がないと段々と思うようになり、今ではキャッシュポジションが半分程度占めていることが多くなっております。有り金全部を1つの銘柄で勝負する人もおりますが、それはそれでその人のやり方であり、ストレスにも耐えられる器をお持ちであるなら良いのではないかと思います。
(5)例え難しくても、ポジションの大きさを一定に保つこと。最近好調だという理由で、ポジションのサイズを大きくしてはならない。
最近好調だからといって、明日も好調かどうかは保証の限りではありません。さまざまな要素によって相場は一転します。個人の力量でカバーできるとは思わないことですね。いわゆるコントロール幻想に陥ると、段々と自分を見失うという、ギャンブルにつきものの精神状態に陥ります。
(6)損失が続いたとき、ポジションのサイズを縮小すると、奪回に非常に時間がかかる。損失回避というリスクは、困難でフラストレーションを感じさせるものである。
逆に負けが続いて萎縮するのも良くないものですね。場全体が上昇している場合は、一つひとつのポジションは同じサイズでも、自ずと利益確定できる機会が多くなるため、いわゆる回転が効いていくことになります。その時の相場全体の流れに乗り利益を取り戻すためには、淡々と同じ程度のポジションを張っていくことが必須のようですね。
(7)偶然生まれた棚ボタ利益を、安易に特別視してはならない。同様の損失が発生する可能性があり、それは簡単には取り戻せない。
たまたま買った翌日に分割発表があったり、マスコミに取り上げられたりして棚ぼたの利益があがることがあります。逆に業績下方修正や公募発表などのリスクもあります。こうしたネタに頼りすぎると、情報のリスクやアンカリングのリスクの原則で述べたようなように、市場の大きな波に単に翻弄されるだけということになりがちです。これではコントロール幻想の逆であり、株をやっていてもあまり面白くありませんし、結局は損が出ないまでも、勝てることもできなくなり、株をやっている時間だけ無駄ということになりかねません。
(8)海外証券では、為替リスクを過小評価しないこと。
これは日本株には関係ありませんが、参考までに。為替リスクを隠蔽している最たる商品は外貨定期預金です。1ヶ月定期が年率6%のキャンペーンなどと言っておりますが、これは12ヶ月換算ですので、実質金利は0.5%に過ぎません。しかしその1ヶ月の間に円・ドルが1円動いただけで、仮に1ドル100円の場合は1%も動いてしまいます。実際はひと月に動くのは1円どころではありません。筆者も1昨年から今年年初までのドルの下落で随分と損失を抱えました。
この項、週末に続く
■取引のタイミングの3原則
(1)個々の取引では、ターゲット価格と、ストップ・ロス(辞める時の損失枠)を決めておくこと。目標利益は、リスクにさらせる額の3倍程度を目安にする。ストップ・ロスは低すぎないこと。
最近筆者、この原則に無頓着になってきております。その日に手仕舞いするかどうかは、一応、その日の4本足から判断するようにしていますが、どうしてももう1日待てば、「ここまで下がったのだから明日上がるはず」、と勝手に思ってしまい、いわゆる損失が出ている時のリスク選好に陥りがちです。目標利益も必ずしもきちんと定めておりませんでした。下がれば「そろそろ上がる」と考えるくせに、上がれば「もっと上がる」と考えてしまうのです。この「業」を断ち切らねば相場に明日はありません。
(2)高い的中率は、必ずしも、高い利益を意味しない。
コツコツ勝って大きく負けるという、例のパターンですね。相場は勝率や点数ではありません。従って、学校で勉強のできた秀才が必ずしもトレーディングで勝てる訳でもありません。かといって、勉強ができなかった人が相場に勝てる訳でもありません。何しろ相手は複雑系です。猪突猛進、徒手空拳が相場を制することもあります。とにかく、仕事と同じでドラッカーではありませんが、「自分の強み」を生かすことでしょうか。
(3)トレーディング・ボリュームを一定に保つこと。成功が続いたからと言って取引額総額を増やしてはならない。失敗が続いたからと言って、取引総額を増やしてはならない。
よくあるケースは、競馬で最後のレースにその日の稼ぎを全部かけて「おから」になってしまうケースです。一攫千金を狙いたい気持ちは誰でも持っているものです。しかしよく考えてみて下さい。相場は今日で終わりではありません。ずっと続きます。あわてることはありません。自分のペースで淡々と勝てるトレードを行えばよい訳ですね。勝負をかけすぎると、思いこみも激しくなるのは人の常です。そこに落とし穴が待ちかまえております。
■利益が出ている時の行動の2原則
次の「感応度低減の原則」を思い出すのが大切なようです。
「1000円利益をあげているときの100円の追加利益に比較し、2000円の利益があがっているときの追加利益の200円(同じ10%)は、感応度が鈍って、小さく思える。」
こういう例も錯覚します。7月29日はエンジャパンは58万から60万2千円Kへと2万2千円上がりました。一方、アルバイトタイムスは1079円から1130円と51円上がりました。どちらが早く利確したくなるでしょうか。エンジャパンの2万2千円を取りたくなりますね。しかし、上昇率はエンジャパンが3.8%に対して、アルバイトタイムスは4.7%です。
(1)長らく利益を待っていたので我慢できないとか、恐ろしくなったからという理由で、ポジションを清算してはならない。
目標利益はリスクに晒す金額の3倍程度と最初に書かれております。感応度低減の原則からすれば、これは絶対額ではなく、投資金額に対する比率で考える必要がありますね。
(2)目標利益に到達する前に利益を確定したいという誘惑に駆られたときは、反対のポジションのときならどう考えていたかを想像して欲しい。利益でなく損失のときはどうしていたか? 損失を確定させるだろうか?
これも原則は分かりますが、長期か短期かによってやり方は変わってくると思われます。また、その日のその銘柄の勢いもありますので、デイトレなどの場合には、「利食い千人力」が勝つこともあるでしょうね。その代わりに損失確定は持ち越さずに、その日終わりまでにという「厳しい戒律」も守らないと、結果的にはずるずるとトータルでは負けていくということになりかねません。
■損失が出ているときの行動の8原則
(1)取引の前にストップ・ロスを決めておくこと。いかなる状況のときも、それを超えて取引してはならない。
筆者の場合、買値から5%とか10%とかを損切りラインに決めたことがありましたが、リスク選好に陥りがちなこともあり、うまくいきませんでした。それは、その根拠が自分自身でも納得できていないからだと気が付きました。現在は、テクニカル分析により、明日も下がる見込みが強ければその日の終わりに手仕舞うことをしています。上がるのであれば持ち越すことになります。もちろん当たらなかった時は、その理由を分析する材料として前向きに捉えれば、それはそれで納得できるものとなります。
(2)利益の上がらないポジションで、無駄な時間を費やしてはならない。資金がそこで固定されていることを忘れてはならない。
いわゆる塩漬けというのは、単に資金がそのまま固定されているのではなく、じりじりと資産額が目減りしていることをお忘れなく。その上、他に買いたい銘柄が出てきても買えないという二重の弊害があります。
(3)損失を抱えたら、難平(ナンピン)買いでポジションを膨らませてはならない。ナンピン買いはポジションを拡大させ、リスクを増やす。
そうは言っても、逆張りでの底値を狙った場合と、順張りで上値を追っての売買の場合では、ナンピンに対する考え方は多少変える必要があるのではないかと思います。前者の場合はナンピンもある程度やむを得ないのではないでしょうか。それも2-3日以内でのナンピンですが。
(4)調子が悪いときもストレスに耐えられるような、維持可能なポジションのサイズを選ぶこと。
これも、人それぞれの器に応じた投資額があるようです。筆者の場合は、当初はお金があればほぼ全部張っていました。これでは自由度がないと段々と思うようになり、今ではキャッシュポジションが半分程度占めていることが多くなっております。有り金全部を1つの銘柄で勝負する人もおりますが、それはそれでその人のやり方であり、ストレスにも耐えられる器をお持ちであるなら良いのではないかと思います。
(5)例え難しくても、ポジションの大きさを一定に保つこと。最近好調だという理由で、ポジションのサイズを大きくしてはならない。
最近好調だからといって、明日も好調かどうかは保証の限りではありません。さまざまな要素によって相場は一転します。個人の力量でカバーできるとは思わないことですね。いわゆるコントロール幻想に陥ると、段々と自分を見失うという、ギャンブルにつきものの精神状態に陥ります。
(6)損失が続いたとき、ポジションのサイズを縮小すると、奪回に非常に時間がかかる。損失回避というリスクは、困難でフラストレーションを感じさせるものである。
逆に負けが続いて萎縮するのも良くないものですね。場全体が上昇している場合は、一つひとつのポジションは同じサイズでも、自ずと利益確定できる機会が多くなるため、いわゆる回転が効いていくことになります。その時の相場全体の流れに乗り利益を取り戻すためには、淡々と同じ程度のポジションを張っていくことが必須のようですね。
(7)偶然生まれた棚ボタ利益を、安易に特別視してはならない。同様の損失が発生する可能性があり、それは簡単には取り戻せない。
たまたま買った翌日に分割発表があったり、マスコミに取り上げられたりして棚ぼたの利益があがることがあります。逆に業績下方修正や公募発表などのリスクもあります。こうしたネタに頼りすぎると、情報のリスクやアンカリングのリスクの原則で述べたようなように、市場の大きな波に単に翻弄されるだけということになりがちです。これではコントロール幻想の逆であり、株をやっていてもあまり面白くありませんし、結局は損が出ないまでも、勝てることもできなくなり、株をやっている時間だけ無駄ということになりかねません。
(8)海外証券では、為替リスクを過小評価しないこと。
これは日本株には関係ありませんが、参考までに。為替リスクを隠蔽している最たる商品は外貨定期預金です。1ヶ月定期が年率6%のキャンペーンなどと言っておりますが、これは12ヶ月換算ですので、実質金利は0.5%に過ぎません。しかしその1ヶ月の間に円・ドルが1円動いただけで、仮に1ドル100円の場合は1%も動いてしまいます。実際はひと月に動くのは1円どころではありません。筆者も1昨年から今年年初までのドルの下落で随分と損失を抱えました。
この項、週末に続く