なでしこジャパン決勝進出直後の市議会本会議最終日。共通番号(マイナンバー)関連で3つの議案に反対討論を行いました。
※※2015年6月議会反対討論 2015年7月2日
ただ今、上程されております第128号一般会計補選予算、第131号個人情報保護条例一部改正案、第133号手数料条例の一部改正について、緑の党グリーンズジャパンとしての反対討論を行います。
いずれも共通番号制度に関わる予算や特定個人情報の位置づけによる条例改正、個人番号カード発行に関するものであり、①国家による個人情報の一元的管理・監視社会化、②個人情報の大量漏洩の危険、③成りすましなど不正利用や犯罪の多発を理由にこれまでも反対してきており、同様に反対であります。6月1日に明らかになった日本年金機構からの125万人もの大量の年金データの流出事件、そして流出を前提にした損保ジャパンの流出保険の商品化など、ITなしには成立しない現代社会が抱え持つ脆弱さの表れと言えます。
この事業が法定受託事務であることを踏まえれば、静岡市に求められていることの第一は、全国の自治体と連携して今回の流出事件の原因徹底解明と今後の防止策と同時に、未だシステムの根幹である中間サ-バ-も完成していない現段階で共通番号の通知の延期、導入スケジュールの全面的に見直しを政府に求めるべきであります。
中小企業の負担の拡大や個人情報の漏洩への危機管理対策は全くできておらず、安易に番号の利用を拡大し危険性の拡散を推し進めるような参議院で審議ストップになっている番号利用拡大法案は廃案にしなければなりません。
第二は、今回の日本年金機構の年金データ流出事件が、特定個人情報保護評価において「特段の問題は認められない」とこれを承認していた経過からするなら、また、今回の事件を通じて静岡市がインターネット環境化で個人情報を大量に扱う部署においてはその隔離も検討を始めているということを考慮すれば、静岡市の住基台帳分野での個人情報保護評価書の見直しを検討すべきであります。世田谷区の個人情報保護審議会が「メリットはあってもリスクの多い共通番号制度」「完成してもいない中間サーバーの完成後の改めての特定個人情報保護評価をすべき」は傾聴に値します。
次に今回補正予算化されている証明書コンビニ発行サービス制度予算について意見を述べます。この予算措置は、共通番号制度を前提にしているから反対ということでもありますが、仮に進めるにしても議会として、果たして費用対効果が成り立つサービスとして十分に練られた政策なのか、についてきちんとした検証が必要です。
まず問題の第一は、住民票、印鑑証明、戸籍、税証明の発行数を80万枚と想定した場合にコンビニ交付枚数が3割、24万枚という過大な利用数にしないと費用対効果が成立しないという問題です。24万枚の場合、1枚当たりの費用は、地方公共団体情報システム機構、J-Lisへの委託費は年間2800万ですのでJ-Lisに1枚116円、コンビニに123円で239円。しかし、現状を前提にすれば、7万1000枚。1枚当たりの費用は、J-LIS委託が一枚393円、ここにコンビニ委託の一枚123円加えて516円、300円の1.7倍、現状より200円高くなります。
問題の第二は、24万枚は、政府発表で来年1月から2年3か月で34万枚の個人カードが発行されることを前提にしていますが、それは妥当なのか、という点です。自動交付機を利用している方々は住民票だけ利用できる市民カード発行数は257枚、印鑑カードが20万4000枚、これは住民票、印鑑証明両方に使えます。そして、住基カードは3万7000枚発行されていますが住民票、印鑑証明に使えるように磁気カード化されているものはたったの90枚です。ですので、ほとんど印鑑カードを持っている市民が自動交付機を利用しています。
住基カード3万7000枚、印鑑カード20万4000枚を選択した市民が個人カードに2年3か月で34万枚にまで切り替えるでしょうか。個人カードには12桁の共通番号と16桁の電子個人認証が入ったICチップが搭載されますが、住民票、印鑑証明、戸籍、税証明は共通番号でなく16桁の個人認証番号を使います。二つのリスク情報を持ったカードです。紛失・盗難にあったらリスクは格段に広がります。銀行にも、病院でも何でも使える、便利だ、キャンペーンが大々的に行われていますが法律はまだ成立していません。
第三の問題は、35万枚の個人番号カードが発行されて270箇所のコンビニがあるからと24万枚も利用されるか、どうかです。現状を踏まえれば、自動交付機は3つの区役所と蒲原、長田の5箇所にあり、印鑑カード20万4000枚が個人カードに切り替わったとして7万1000枚程度になります。コンビニ270か所と言いますがご承知のように300メートル四方に何か所もコンビニがあります。発行場所が増えれば単純に24万枚になるというのは早計ではないでしょうか。現状を踏まえれば3つの区役所、5つの支所、28箇所のサービスコーナー、つまり、36箇所の窓口で、73万枚が発行されているということになります。窓口は意外に市民の利用しやすい場所になっているのではないかと私は思います。
第四の問題は、自動交付機をいつ廃止するのかという問題があります。リース期間は2年残っており、リース料750万、保守料850万。個人番号カードが普及せず、自動交付機のリース期間を延長する、つまり併存することも想定しておかなければなりません。コンビニ利用を促すために自動交付機を停止するという判断もあるかも知れません。いずれにしても費用対効果の問題に関わります。
第五の問題は、そもそも80万のうちの3割、24万枚利用は一から四の問題を十分に協議して決められたものかどうか、という疑問です。住民票1枚300円は、厳密に言うとどのような数字かという問題は実は難しいのですが、300円を前提に簡略化すると内訳は240円の人件費と60円の紙、電気代など物件費ということになります。
つまり、3割、24万枚を打ち出した背景は、この人件費240円が削減されることにならないとコンビニ利用の費用対効果がしめせないということから逆算で導き出された239円の数字ではないかと思われます。証明書コンビニ交付サービスのメリット、デメリット、費用対効果、市民ニーズの協議の中から生まれたというより、政府のコンビニでも利用ができます、便利、推進キャンペーンに振り回されて提案されているのではないか、と思えるわけであります。
常任委員長の報告からすると、残念ながらこのサービス予算は可決されることの可能性が高いわけですが、そんなに急いで予算化するサービスでないことを、最後に述べて反対討論とします。