「公共性の高い老朽化した建築物」についての大規模改修を審査する「リノベーション条例」を提案しながら第23号2019静岡市一般会計予算に反対討論を行いました。24日から「三つ巴」の田辺信宏現職市長、天野信吾前県議会議員、林克前県評議長の選挙戦が始まります。とにかく市民の皆さんに市長選挙への関心を持ってもらうために政治争点の紹介をしていきたいと考えます。
※写真は、議会棟2階ではじまっている「特別公開 小川三知作 小樽・和光荘 修復ステンドグラス」展です。小川氏は静岡市が生んだ日本を代表するステンドグラス作家です。
※討論原稿※
2019年予算議会反対討論 2019年3月20日
今議会に上程されています議案23号 2019年度静岡市一般会計予算、第29号2019年度国民健康保険事業会計、消費税関連で第49号、52号、55号~79号、第82号~87号、第89号~第123号、第127号~132号、第134号に緑の党として反対討論を行います。
今回の予算議案は、田辺市長が言うところの「1期目に土台、2期目に柱、3期目に屋根をかける総仕上げ」の第3次総後期計画の初年度に当たるもので、一般会計3180億余、特別会計2295億余、企業会計749億余、合計6225億余の中身については施政方針においてくまなく述べられています。2015年の施政演説方針で示した「成長・拡大から成熟・持続可能な社会」への転換という時代認識は2019年度施政演説方針にも掲げられていますが、2017年、2018年に紛れ込んだアベノミクス積極評価は消えたものの「公共投資呼び水による人口の活力維持・経済活性化の好循環」論や「人口規模が経済を規定する」にとらわれた2025年70万人口維持論の継続で「逆戻り」するかのようです。
「成熟・持続可能な社会」はまさにSDGsの17の目標、169のターゲット、232のKPIをツールに「中長期的視点であるあるべき姿を描くこと」「世界指標のローカライズ化」すること、「これまでのどの自治体も経験したことのない」『SDGs静岡市』の実現の中にあります。人口減少社会の中で「小さくなりながら質の高い公共サービスの実現」となります。しかし、実際に5大構想のうちSDGsで整理されたものは「健康長寿のまちの推進」分野のみで「日経グローカル」SDGsランキングで19位の浜松市に続く28位という実情であります。
掲げている時代認識も正しくSDGsツールも国内最先端、だけど実体が伴っていかない理由は何なんだろうと、と深く考えているところです。市長のトップダウンの弱さなのか、市職員の縦割り意識・未熟さなのか、今回の市長選挙における政治争点の一つとなっています。SDGsツールによる世界の課題をローカライズすることですぐに出来ることは再生可能エネルギー分野です。政府の原発再稼動を前提とした「再生可能エネルギー2030年目標23%」の同程度の静岡市の目標を40%、50%にすることだと考えます。これは世界の気候変動パリ協定2050年温室効果ガス80%削減目標と静岡市の一般廃棄物ごみの減量目標にも重なりますし化石燃料の輸入に依存しない地域循環型経済であり「経済の質」を変えるものです。
これらを踏まえて議案への反対理由を述べます。
まず議案第23号一般会計補正予算においては
反対理由の第一は、清水庁舎・桜ヶ丘病院の進め方について納得できないからです。経過を振り返ると1、市民との対話の回避、2、桜ヶ丘病院移転による「玉突き」の清水庁舎移転、3、そこに紛れこんだ清水駅東口公園+桜ヶ丘病院所有の大内新田+旧庁舎の建替えという公共資産の有効活用論、4、そうした中で、清水庁舎の大規模改修、高台移転の議論はほとんどなされずPFI方式の庁舎建設に至っています。
市民文化会館の大規模改修論は新年度の課題となっていますが清水庁舎大規模改修論が十分に議論できていないことは残念です。「アリーナ構想」白紙撤回過程の中で萌芽的であれ「市民・行政・専門家」との協働作業が垣間見えました。ここで教訓にすべきは「公共性の強い建物の老朽化」へのアセットマネジメントのあり方ではないでしょうか。耐震やバリアフリー、トイレなど建物自体の改善だけでなく省エネ、景観、地下埋蔵物の処理など環境視点に加え「市民の記憶」という新たな視点を加えた「大規模改修」審査基準を示す「リノベーション条例」とでもいうべきものを策定していく必要があるということです。イギリスで行われている建築都市環境委員会(CAVE)のような建築の専門家集団による客観的な評価システムということであります。
桜ヶ丘病院については津波危険地域への移転の問題だけでなく、桜ヶ丘病院への旧清水市時代からの土地の斡旋や塩漬け土地の取扱い、自己土地での建替え論不在、移転がもたらす清水病院の経営への影響など疑問が数多く残っており検証が必要です。
そして第3次総合計画後期の財政シュミレーションでは、2019年度の市債226億が2022年280億に増加、同様に投資的経費は418億から515億にも膨れあがっている点は極めて大きな懸念材料です。駿府城公園内の歴史文化施設43億円、南沼上清掃工場大規模改修62億円、清水新庁舎88億円、海洋文化都市拠点88億円の反映です。このような状態の中で交流人口の拡大のためとアリーナ計画は慎重に検討される必要があります。
その他、反対理由としてマイナンバーカード交付事業に一億余の国が100%負担する補助金が予算化されていますが国家による個人情報の一括管理、個人情報の大量漏えいにつながるマイナンバー制度に反対です。また、子宮頸がんワクチン接種について、勧奨は中止されていますが定期接種から外すべきであるという点で反対であります。定期接種化後に副作用が多発し静岡市でも被害者があり集団訴訟の原告となっています。2018年度は1月までに小学6年、中学1年、2年、3年、高校1年生全体で216件が任意接種されていますが副作用事故が起きるのではないかと不安であります。
第29号国民健康保険事業会計議案については、保険料の引き下げ請願に賛成してきた立場で反対です。
次に消費税10%引き上げに伴う条例改正議案、そのことによる3100万余の税収が一般会計に含まれているということも含めて以下の2点で点で反対です。
第一は、消費税を上げる経済環境ではないこと。景気回復、求人倍率増加といいますが大企業における内部留保が500兆円、労働分配率は下がり続け実質賃金も下がっています。軽減税率やそれに伴う期限付きポイント還元は複雑でわかりづらく、小規模事業者にとってその設備経費の増大など混乱、負担、不公平は計り知れません。
また、2023年実施される適格請求書発行事業者届出制度いわゆるインボイス方式で、1000万以下の非課税事業者が課税事業者にならなければならず淘汰される危険があります。
第二は、1989年の消費税が導入されて以来、消費税収入は累計で349兆円、2017年度までの法人3税の減税額は累計で280兆円となり消費税増収は法人税減税と防衛予算に消えたことになります。社会保障費としての税収確保は消費税のみに頼らない所得税累進課税の強化や法人増課税の強化、課税標準の見直しなどの組合せで検討されるべきであります。国境を越えて取引される金融資本等への課税策も真剣に考えるべきです。医療や住宅貸付は非課税とされる一方、この業種の課税仕入れは免税されていません。ところがトヨタを筆頭とする輸出型企業には輸出免税が適用され課税仕入れが還付されており、この見直しも急務です。
以上で反対討論を終わりますが、1点指摘しておきたいと考えます。昨年6月のJR東海との井川トンネル巡る基本協定以降の水資源・自然環境への基本姿勢が南アルプスエコパーク理念から離れ続けているように見えます。静岡県環境連絡会議においては環境影響評価の見直しが必要となるようなボーリングデータ不在や地下水シュミレーションの必要性など次々明らかになっています。中部横断道は山梨県南部―早川インター間での南アルプス同じ地質構造の中での地下水問題で完成は2020年度に持ち越されました。JR東海が具体的計画を持ってくるまで待つのでなく静岡県と連携して基本姿勢を取り戻す必要があります。
以上述べて討論を終わります。