一部勝訴判決に納得せず上告の決意を質しました。
※質問原稿(実際はかなり変更しています)
議案第164号「上告の提訴及び上告受理の申し立て」質疑
2014年5月26日
上程されています第164号議案「上告の提訴及び上告受理の申し立て」は、去る5月15日東京高裁で判決がでました(株)ザ・ト―カイによる分譲マンションの耐震強度不足による全戸買い取り額損害賠償請求訴訟に関わるものであります。静岡市としては、この判決を承服できないとして、控訴期間の2週間というタイムリミットがあることから、臨時議会において最高裁に上告することの議会承認を求めようとするものであります。
私は、2012年12月議会における第2審、高裁への控訴の提起の際にも議案質疑を行ってきた経緯もあり、今議案について訴訟経過を含め議案質疑を行います。
第1審に起きましては、よもやの敗訴判決ということとなり、市長はもとより関係職員、弁護団が一体となって闘ってきた訴訟であります。今回の判決は、前回の完全敗北からすれば、6億7172万余の支払い命令が8895万余の支払い命令になったわけでありますので、ある意味で静岡市の主張は大きく認められたものでもあり、判決を受け入れるという妥協の選択もあったわけでありますが、静岡市としては、完全勝訴を目指したいとしての今回の議案であります。 そこで、
≪1回目≫
「1」 5月15日の高裁判決をどのように受け止めたか、また、どのような経過をたどり、いつ上告を決定したのか。
「2」 いただいた議案説明資料によりますと控訴審において、(1)過失について、(2)因果関係について、(3)過失相殺について 争ったとの説明でありますが、具体的にはどのような主張をされたのか。
「3」 それらの主張により控訴審判決は、第1審判決と大きく変更されたわけでありますが、第1審地裁判決と第2審高裁判決との大きな違いは何であるのか、伺います。
≪2回目≫
答弁をいただきました。
主張は、第一に静岡市に過失はなく損害賠償責任はないとする基本的なものと第二に予備的に仮にと過失があった場合のものと二段階であったということであります。判決は、6億7712万余が8895万余の支払い命令というものですから、これまでの過失責任7対3が3対7になったという意味で、予備的な主張は認められたわけです。しかし、第一義的に争った主張、静岡市に国家賠償法1条1項の違法性、過失責任はないとする主張は認められなかった、ということであります。
ザ・トーカイ、建築主の依頼をした設計事務所、構造計算事務所の「悪質な偽装」「異常な偽装」が認定されているにもかかわらず、静岡市の建築主事の過失責任は存在するとされたという点が今回の判決の特徴であります。第2審高裁判決に妥協することは出来ないとする静岡市の控訴の姿勢を私は支持するものであります。が、何故静岡市の過失責任があるとされるのか、ここは冷静に確認しておく必要があります。 そこで、
「1」 2005年のいわゆる姉歯事件以降、全国でこの種の訴訟が多く起こされましたが、全国の類似訴訟についてはどのように把握されているのか、伺います。
「2」 類似訴訟の中には、静岡市同様に第一審判決は敗訴しましたが、第二審、高裁で逆転勝訴、最高裁で勝訴、という愛知県半田市のケースがあります。静岡市としても、この愛知県訴訟と同じ形、つまり第2審完全勝訴を想定してきたわけであります。この愛知県訴訟と静岡市のケースとどこで類似性があり、どこで類似性がないのか、明らかにしていただきたわけであります。
「3」 実は、建築主事の過失責任については、最高裁判決は昨年2つ、この愛知県のケースと京都府京丹後市の二つの判決があり、建築主事の過失責任がどのような場合に成立するのかを明示した判決として理解されているとのことであります。これらの最高裁判決はどのような事案であり、どのような判決内容であったのか、お伺いします。
「4」 そして、今回の訴訟において当然そうした判決は参考にされたと思うが、どのように主張に反映されたのか、伺います。
≪3回目≫
答弁をいただきました。
静岡市の訴訟は、勝訴した愛知県、京都府の判決とどこに違いあり、完全勝訴できなかった理由がどこにあったのか、この分析が今後の訴訟において大きな課題となります。
愛知県、京都府では、建築確認申請書の一連の構造計算書が一括で提出されてきた状態にあり、建築主事の「通常支払うべき注意を持ってすれば」「悪質な偽装」「異常な偽装」を発見することができるか、できないか、で争われ、通常では「明らかに誤り」でなければ、「偽装の推測、予測は困難」とされ、愛知県、京都府の訴訟では行政側が勝訴しました。
静岡市の場合には、建築確認申請書の構造計算書の最後の1ページが提出されていなかった、建築主事は「通常支払うべき注意」をもって書類の不足を指摘した、提出されたもののその書類は、単純な書類の不足として理解していたために、偽装の事実として発見できなかった、というものであります。
静岡市も弁護団も一連の一括で提出された構造計算書としての取り扱いという点に主眼をおき、京都府の最高裁判決を主張の根拠におき争ったわけであります。そして、その主張の範囲においては、高裁は静岡市側の主張を認定しており、本来なら勝訴判決となるところでありました。ところが、最後の1ページを除く最初に提出された計算書を細かくチェックすれば「悪質な偽造」「異常な偽装」は発見できたはずだ、として、静岡市に過失責任があるとした判決を出したわけであります。
問題は、①最後の1ページを除く最初に提出された構造計算書の数値は「通常支払うべき注意」を持ってすれば「明らかに誤り」として推測、予測できたものか、どうか、②また、それらの数値をもとに、姉歯事件以前に示されていた構造チェックリストに基づき必要保有水平耐力1.0を確認する注意義務が建築主事に課せられていたのか、が、最高裁における争点となります。そこで、
「1」 本市は「静岡市側に損害賠償の責任はない」として勝訴判決目指して争うわけでありますが、これまで自ら、最高裁にまで上告をしてまで争うというケースはあったのかどうか、伺います。
「2」 愛知県や京都府とは違った静岡市訴訟のこのハードルの高い課題、京都府判決では3人の裁判官が、建築主、建築士、建築主事の損害賠償をめぐる関係について補足意見を提出しており、それ相応の理論武装が必要となります。上告に向かってどのような姿勢で臨んでいくのか、伺って質疑を終わります。