うちの猫(ファーティハという名前です。以降名前で呼びます)と5匹の子猫たちは、うちに出戻ってから1週間のあいだ、テレビ台の下の狭い戸棚の中で暮らした。
ファーティハは定期的(2、3時間おき?)に戸棚の中にこもって授乳し、しばらくしたら出てきて、やれやれという感じで廊下にごろりと横たわって休憩していた。
そして時折外出して用を足したり、散歩したり、その他私には伺いしれない用事を済ますのが彼女の日課だった。
ファーティハが留守のあいだにこっそり戸棚の中を覗くと、5匹の赤ちゃんが昆虫のようにウゾウゾとうごめき、時折「みゅう」「みゅう」とかぼそい声をあげながら、重なり合って眠りこけていた。
これが猫の赤ちゃんの本能なのだろうが、必ずだんご状態で眠るのが不思議である。
下の方のヒトが重みでつぶれたり、窒息したりしないのだろうか。
子猫たちはこの1週間でめざましく成長していた。
人間の赤ちゃんでいうと、3ヶ月分は成長した感がある。
プラスチックぽかった手足(いや、全部足か・・・)が毛に覆われ、猫足らしくなっている。
足以外の部分も毛皮がふさふさで、白・黒・ライトブラウンの色分けがくっきり。
やはり全員三毛だ。
まだ目は開いていないし、耳も小さく、鼻もつぶれた状態だが、生後間もない時のエイリアン状態に比較すると、今は明らかに哺乳類の赤ちゃんだと分かる。
戸棚の中にはボロ毛布を折りたたんで敷き、さらにその上に新聞を載せておいたのだが、翌日新聞を取り替えようとして、全然汚れていないのに気がついた。
これは一体どうしたことか。
子猫たちの身体がいくら小さいとはいえ、母乳を飲んでいる以上、多少の排泄物が出るのは必至である。
それなのに、新聞にはシミ一つない。
摩訶不思議な・・・。
しかし、ファーティハが子猫たちのお尻をべろべろ舐めているのを目撃したとき、その謎は解けた。
赤ちゃん猫のおしっこやウンチは、お母さん猫が舐めとってしまうので、後に残らないのだ。
これは衛生上の理由によるものか。
猫のお母さんって、ホントにすごい。
人間にはなかなか真似ができないことである。
まあ、人間にはおむつという手段があるから、真似する必要もなさそうだが・・・。
猫たちが帰還した数日後、うちに遊びに来た友達が、戸棚の扉を少し開けておいたらどうだ、閉め切った状態では通気性が悪いんじゃないか、と提案した。
そう言われてみると、確かにあの狭い空間は空気がこもりそうだし、なにより子猫たちが将来閉所恐怖症に陥ったり、暗闇っぽい性格(どんな性格?)に育ったりする危険性がある。
ファーティハ自身もまた、閉まった扉を頭でぐりぐり押し開けて中に入るのに、毎回苦労しているようだった。
それで、開き戸を半分開けた状態にして、小テーブルで外から固定しておくことにした。
しかしおそらく、それが間違いの元だったに違いない・・・。
生後すぐの状態はこんなだった
1週間後
戸棚の前で、外敵が来ないように見張るファーティハ