父が一年半ぶりに認知症の再検査を受ける日、午後から妹と一緒に病院へ付き添う予定をしていた。
ところが当日の朝、用事があって車で出かけたところ、道路はツルツルのアイスリンク状態。
あちこちで事故が起きているとラジオで言っていた。
父の病院まではかなり距離がある。
慎重に行こう。
そう思っていたら、妹から「危険だから無理に来なくてもいいよ。私だけで大丈夫だから」と電話があった。
ここは妹の厚意に甘えることにした。
妹からは検査結果が出たら、すぐに知らせてくれることになっていた。
検査は午後2時からのはずだった。
遅くても2時間くらい、午後4時くらいには終るかなと思っていたのだが、妹から電話があったのは5時を過ぎてからだった。
「遅かったね。もう家?」と聞くと、なんとまだ病院にいるとのこと。
妹の話によると、父の住む高齢者施設から病院まで普通の速度で歩いて3分程度の近さなのだが、その間、父は何度も吐き気を訴えては立ち止まっていたので、かなり時間がかかったのだそうだ。
また病院内でもすこし歩いては休み、また歩いては休むため、こんな時間になってしまったということだった。
身体の大きな父なので、妹が一人で支えながら歩くのは大変だっただろう。
やはり私も行けばよかったかもしれない。
ところで父の検査結果だが、前回は聞いていなかったような事実が判明して驚いた。
父の脳には、過去に何度も出血を起こした跡があったのだそうだ。
そのひとつは、あと数センチずれていたなら半身麻痺にさえなるような場所だったとか。
今は画像の進歩で、以前は分からなかった「無症状の脳内出血」も分かるようになったそうで、知らず知らずに脳内出血を起こしているかもしれないというのは怖いと思った。
しかし、一番驚いたのが父の認知症の病名だった。
「レビー小体型認知症」
アルツハイマー認知症はよく聞くし、前回診て貰った時は、単に認知症としか言われていなかったので、父もてっきりそっちの方だと思っていたが、実は違っていたらしい。
レビー小体型認知症とは異常なたんぱく質が脳の神経細胞内にたまったことで起きるそうで、パーキンソン病と似ているそうだ。
なぜたんぱく質がたまるのか、その原因はよく分かっていないそうだが、糖尿病の人は罹り易いとも言われているとか。
父も軽度の糖尿病と診断され、現在は薬を服用しているが、ごく初期の軽い糖尿病だと言われていた。
しかし、今回一緒に検査をしたところ、しっかりと糖尿病の数値が現れていて「これはもう立派な糖尿病です」と医師から言われたそうだ。
さてレビー小体型認知症だが、その症状を調べてみて、今までの父の様子すべての辻褄が合った。
具体性があり生々しい幻視、幻覚症状がある。
これは父が自分の部屋に不審者が入ってきたとの訴えと合う。
日によって症状に変動がある。
これも全くその通りで、まったく昔の父と変わらないようにしっかりしている日もあれば、寝てばかりいて目の焦点が合っていないような日もある。
さらにパーキンソン症状と言われる運動機能の低下が見られる。
父の歩き方は、まるでパーキンソン病の人のようだと思ったことがあったが、やっぱりか・・・という感じだ。
ほかには自律神経の障害により起立性貧血を起こすことがあるなど、これは歩きながら吐き気を催すことからもその症状が出ていることが分かる。
ほかにもそうだったのかと合点がいく事が数多くあった。
ただしほかの認知症が完治しないように、レビー小体型も完治することはない。
「身体の機能が失われるのにあと5年でしょう。もっと若ければ糖尿病の方をしっかり治すように厳しい食事療法もするのですが、お父さんは高齢ですから、そこまでしなくてもいいのではないかと思います。
実は80歳を過ぎた自分の母も同じなのですが、母にはもう何でも好きな物を食べなさいと言っています。これはご家族の意思にお任せしますが」
妹はそのように医師から言われたそうだ。
妹も私も残り時間の少なくなった父に厳しい食事療法は望まない。
きっと弟も同じだと思う。
あまりたくさんではなければ、父には好きな甘い物を食べさせてあげたいと思う。
まだ自分で歩いて移動することはできるので、なるべく外へ連れ出したり、父の話をたくさん聞いてあげたいと思っている。
もう母の時のように後悔しないためにも。
ところが当日の朝、用事があって車で出かけたところ、道路はツルツルのアイスリンク状態。
あちこちで事故が起きているとラジオで言っていた。
父の病院まではかなり距離がある。
慎重に行こう。
そう思っていたら、妹から「危険だから無理に来なくてもいいよ。私だけで大丈夫だから」と電話があった。
ここは妹の厚意に甘えることにした。
妹からは検査結果が出たら、すぐに知らせてくれることになっていた。
検査は午後2時からのはずだった。
遅くても2時間くらい、午後4時くらいには終るかなと思っていたのだが、妹から電話があったのは5時を過ぎてからだった。
「遅かったね。もう家?」と聞くと、なんとまだ病院にいるとのこと。
妹の話によると、父の住む高齢者施設から病院まで普通の速度で歩いて3分程度の近さなのだが、その間、父は何度も吐き気を訴えては立ち止まっていたので、かなり時間がかかったのだそうだ。
また病院内でもすこし歩いては休み、また歩いては休むため、こんな時間になってしまったということだった。
身体の大きな父なので、妹が一人で支えながら歩くのは大変だっただろう。
やはり私も行けばよかったかもしれない。
ところで父の検査結果だが、前回は聞いていなかったような事実が判明して驚いた。
父の脳には、過去に何度も出血を起こした跡があったのだそうだ。
そのひとつは、あと数センチずれていたなら半身麻痺にさえなるような場所だったとか。
今は画像の進歩で、以前は分からなかった「無症状の脳内出血」も分かるようになったそうで、知らず知らずに脳内出血を起こしているかもしれないというのは怖いと思った。
しかし、一番驚いたのが父の認知症の病名だった。
「レビー小体型認知症」
アルツハイマー認知症はよく聞くし、前回診て貰った時は、単に認知症としか言われていなかったので、父もてっきりそっちの方だと思っていたが、実は違っていたらしい。
レビー小体型認知症とは異常なたんぱく質が脳の神経細胞内にたまったことで起きるそうで、パーキンソン病と似ているそうだ。
なぜたんぱく質がたまるのか、その原因はよく分かっていないそうだが、糖尿病の人は罹り易いとも言われているとか。
父も軽度の糖尿病と診断され、現在は薬を服用しているが、ごく初期の軽い糖尿病だと言われていた。
しかし、今回一緒に検査をしたところ、しっかりと糖尿病の数値が現れていて「これはもう立派な糖尿病です」と医師から言われたそうだ。
さてレビー小体型認知症だが、その症状を調べてみて、今までの父の様子すべての辻褄が合った。
具体性があり生々しい幻視、幻覚症状がある。
これは父が自分の部屋に不審者が入ってきたとの訴えと合う。
日によって症状に変動がある。
これも全くその通りで、まったく昔の父と変わらないようにしっかりしている日もあれば、寝てばかりいて目の焦点が合っていないような日もある。
さらにパーキンソン症状と言われる運動機能の低下が見られる。
父の歩き方は、まるでパーキンソン病の人のようだと思ったことがあったが、やっぱりか・・・という感じだ。
ほかには自律神経の障害により起立性貧血を起こすことがあるなど、これは歩きながら吐き気を催すことからもその症状が出ていることが分かる。
ほかにもそうだったのかと合点がいく事が数多くあった。
ただしほかの認知症が完治しないように、レビー小体型も完治することはない。
「身体の機能が失われるのにあと5年でしょう。もっと若ければ糖尿病の方をしっかり治すように厳しい食事療法もするのですが、お父さんは高齢ですから、そこまでしなくてもいいのではないかと思います。
実は80歳を過ぎた自分の母も同じなのですが、母にはもう何でも好きな物を食べなさいと言っています。これはご家族の意思にお任せしますが」
妹はそのように医師から言われたそうだ。
妹も私も残り時間の少なくなった父に厳しい食事療法は望まない。
きっと弟も同じだと思う。
あまりたくさんではなければ、父には好きな甘い物を食べさせてあげたいと思う。
まだ自分で歩いて移動することはできるので、なるべく外へ連れ出したり、父の話をたくさん聞いてあげたいと思っている。
もう母の時のように後悔しないためにも。