以前、長女チェリーが美術を習っていた先生から連絡を頂いた。
先生が病に伏せて教室を休むことになって以来なので、本当に久しぶりだった。
先生からの連絡とは、芸術に関するレクチャーのお誘いだった。
「今度ホスピタルアートについてレクチャーをするのですが、そこでチェリーちゃんのことやチェリーちゃんの作品を紹介してもよいですか?」とのこと。
先生は病気で入院をしている患者さんや通院してくる方々の心が少しでも和むようにと、今まで病院内に絵画などの作品を展示する活動をしてこられた。
チェリーの作品も飾ってもらったことがある。
ご自身が病気になり、ますますホスピタルアートの活動に力を注ぐようになったそうだ。
チェリーの紹介なんて本当にもったいないようなお話で、即座に了解して当日はチェリーと一緒にレクチャーを聴きに行くことにした。
軽い気持ちでチェリーと行ったのだが、そこには病院関係者をはじめ大学の先生たち、障害者に携わる団体の代表、また芸術家の方など、ふだんはあまり会うことのない方々がいらしていた。
第一部では障害を持った方々の作品を紹介し、その中でチェリーの作品も取り上げてもらった。
そして第二部は美術史家でもありアートミーツケアの専門家でもある米国人ブルースさんの講演だった。
福祉の先進国スウェーデンにある病院についてスライドで写真を使ってのお話だったが、これは私の好きなインテリアと重なることもあって非常に興味深い話だった。
スウェーデンにあるヴィダールクリニーケンという病院は、日本でよく見るような白くて四角くて冷たいイメージの建物とは違い、使っている素材はすべて自然素材、暖かみのある色彩を使った病院とは思えないような美しい建物だった。
この病院では治療法も変わっていて、もちろん西洋医学での治療もしているのだが、食事療法や入浴療法、マッサージなどのほかに音楽や工芸、絵画などの芸術療法を行っている。
そういったホリスティックなアプローチによって「身体」「魂」「精神」の調和を取り戻していくことを助ける治療というのをしているそうだ。
日本ではまだまだそのような治療をしている病院は少ないが、今後は病院のみならず高齢者施設や障害者施設といった場所に芸術作品を展示し、患者さんや利用者さんの心のケアに役立てたいとのことだった。
また芸術を生み出す側についても、障害者が描いた絵を入れた家具など商品化しようという取り組みが道内でも始まっているそうで、もしもそれが実現されれば障害を持つ人たちの自立するためのひとつの道にもなりそうだ。
「窓の外に何を見ているのかがとても大事」とブルースさんが言った。
「毎日、病院の窓から自然を見て過ごす患者さんと隣のビルの壁を見て過ごす患者さんを比べると、病気が治るスピードがぜんぜん違う。これはエビデンス(証拠)がたくさんあるネ」とおっしゃった。
とはいえ、住む街や病院の場所によって窓から自然が見えるとは限らない。
だからアートなのだそうだ。
最後に司会者が言った。
「ここに先ほどのレクチャーでも紹介されましたアーティストが来ています。
ひとこと自己紹介をして頂きましょう。
アーティストのチェリーちゃんです!」
アーティスト!?
アーティストって誰?
周囲の目が一斉に隣に座っているチェリーに注がれた。
その瞬間、チェリーが涙目で叫んだ。
「無理!ぜったい無理。こんなにたくさん人がいるのに自己紹介なんてできないー!」
その時、先生が駆け寄ってこられ「無理ならしなくてもいいからね」とチェリーに言って下さった。
あ~ぁ・・・
でもチェリーの叫びがよい自己紹介であり、これで皆さんに分かって頂けたのではないかと思う。
先生の体調が万全ではなく、まだ教室の再開は叶わないが、これからもチェリーには好きな美術を続けていってほしいと思っている。
先生が病に伏せて教室を休むことになって以来なので、本当に久しぶりだった。
先生からの連絡とは、芸術に関するレクチャーのお誘いだった。
「今度ホスピタルアートについてレクチャーをするのですが、そこでチェリーちゃんのことやチェリーちゃんの作品を紹介してもよいですか?」とのこと。
先生は病気で入院をしている患者さんや通院してくる方々の心が少しでも和むようにと、今まで病院内に絵画などの作品を展示する活動をしてこられた。
チェリーの作品も飾ってもらったことがある。
ご自身が病気になり、ますますホスピタルアートの活動に力を注ぐようになったそうだ。
チェリーの紹介なんて本当にもったいないようなお話で、即座に了解して当日はチェリーと一緒にレクチャーを聴きに行くことにした。
軽い気持ちでチェリーと行ったのだが、そこには病院関係者をはじめ大学の先生たち、障害者に携わる団体の代表、また芸術家の方など、ふだんはあまり会うことのない方々がいらしていた。
第一部では障害を持った方々の作品を紹介し、その中でチェリーの作品も取り上げてもらった。
そして第二部は美術史家でもありアートミーツケアの専門家でもある米国人ブルースさんの講演だった。
福祉の先進国スウェーデンにある病院についてスライドで写真を使ってのお話だったが、これは私の好きなインテリアと重なることもあって非常に興味深い話だった。
スウェーデンにあるヴィダールクリニーケンという病院は、日本でよく見るような白くて四角くて冷たいイメージの建物とは違い、使っている素材はすべて自然素材、暖かみのある色彩を使った病院とは思えないような美しい建物だった。
この病院では治療法も変わっていて、もちろん西洋医学での治療もしているのだが、食事療法や入浴療法、マッサージなどのほかに音楽や工芸、絵画などの芸術療法を行っている。
そういったホリスティックなアプローチによって「身体」「魂」「精神」の調和を取り戻していくことを助ける治療というのをしているそうだ。
日本ではまだまだそのような治療をしている病院は少ないが、今後は病院のみならず高齢者施設や障害者施設といった場所に芸術作品を展示し、患者さんや利用者さんの心のケアに役立てたいとのことだった。
また芸術を生み出す側についても、障害者が描いた絵を入れた家具など商品化しようという取り組みが道内でも始まっているそうで、もしもそれが実現されれば障害を持つ人たちの自立するためのひとつの道にもなりそうだ。
「窓の外に何を見ているのかがとても大事」とブルースさんが言った。
「毎日、病院の窓から自然を見て過ごす患者さんと隣のビルの壁を見て過ごす患者さんを比べると、病気が治るスピードがぜんぜん違う。これはエビデンス(証拠)がたくさんあるネ」とおっしゃった。
とはいえ、住む街や病院の場所によって窓から自然が見えるとは限らない。
だからアートなのだそうだ。
最後に司会者が言った。
「ここに先ほどのレクチャーでも紹介されましたアーティストが来ています。
ひとこと自己紹介をして頂きましょう。
アーティストのチェリーちゃんです!」
アーティスト!?
アーティストって誰?
周囲の目が一斉に隣に座っているチェリーに注がれた。
その瞬間、チェリーが涙目で叫んだ。
「無理!ぜったい無理。こんなにたくさん人がいるのに自己紹介なんてできないー!」
その時、先生が駆け寄ってこられ「無理ならしなくてもいいからね」とチェリーに言って下さった。
あ~ぁ・・・
でもチェリーの叫びがよい自己紹介であり、これで皆さんに分かって頂けたのではないかと思う。
先生の体調が万全ではなく、まだ教室の再開は叶わないが、これからもチェリーには好きな美術を続けていってほしいと思っている。