午前11時半近くに長男から電話がきた。
「仕事で近くまで来たから昼めし食べてくわ、12時10分くらいに帰るから」
昼飯食べてくわって、気楽にいってくれるじゃないの。
初めからわかっていれば何か用意していたが、あるのは私がお昼に食べようと思っていたおにぎりが一つと、昨夜の夕食の残りの大根と手羽元の煮物が少し。
それを長男に食べさせたとしても、大食いの長男には物足りないだろう。
時計を見ると、長男が来るまであと40分だ。
さて、どうしようと考える。
そうだ、いいものがあった!とひらめいた。
実は昨夜、道東に住む親せきから新鮮なサンマが届いたばかりだった。
今夜の夕食にしようと、塩を振って冷蔵庫に入れたことを思い出した。
そこでさっそくサンマを焼き、大根おろしを作り、残り物の大根の煮物が少なかったのできんぴらも作った。
それから小松菜と油揚げで味噌汁を作り、主食はおにぎり一つでは多分足りないので、冷凍してあったご飯を解凍した。
長男の好きな焼き海苔も用意してと。
まるで定食屋のおばちゃんだな、こりゃあ・・・そう思いながら髪振り乱して作った結果、長男が帰って来るまでになんとか間に合った。
パクパクとよく食べる長男を見ながら、作った甲斐があったと達成感がこみ上げ疲れも吹き飛ぶ。
ところで同年代の友人たちは、子どもが独立して夫婦二人だけの生活に戻った人が増えてきた。
夫婦二人だけで、しかも若い頃と違って二人とも食が細くなってきたので、食事作りにそれほど頑張らなくてもよくなったそうだ。
それを聞くとうらやましいなぁと思う。
我が家は、長女がいるし今年4月に戻って来た次女もいる。さらには、こうして突然めしを食べに帰って来る長男もいるので、まだまだ定食屋のおばちゃんからは卒業できそうにない。
でも・・・これが無くなったらさびしいだろうな。
食事作りが楽になったという友人たちが、うらやましいと思う反面、家族に食事を作ることが、実は私の楽しみになっているということは自分がよく分かっている。
生れてきて、これがやりたかったんだよなぁなんて大げさだけど、そう思う。また、こうして好きな家事が思う存分できることに感謝している。
主婦がする家事は仕事と違って賃金もないし、頑張っても評価されないし、自己満足だけかもしれないけど、やりがいを感じる。
最近のテレビドラマで、主人公がこまごまとした家事を楽しそうにやっているのを観て嬉しくなった。
そうそう、やって当たり前の家事だけど、やってみると意外と家事って楽しいんだよね~なんてね。
用意した昼ご飯を食べ終わった長男は、お茶を飲むのもそこそこにまた慌ただしく仕事に出かけて行った。
長男も出かけたし、お昼ご飯にしようと思ったら、私のご飯まできれいさっぱりと無くなっていた。いやはや嬉しいやら悲しいやら・・・