卒業生が持って来てくれた本の中に、百田尚樹氏の『ボックス!』があった。百田氏は日本保守党を立ち上げ、名古屋市の河村市長と共に共同代表を務めている人だ。河村市長は「表現の自由が理解できない人」であり、百田氏の主張にも私は賛成できない。
しかし、どういう小説家なのかと興味を持った。『ボックス!』の帯には、”青春小説の金字塔 すべての「ヤンチャ坊主」たちへ”とある。主人公は大阪のボクシング部に所属する高校生である。「BOXは名詞は箱、動詞はボクシングをする」と注釈もついていた。
『ボックス!』には百田氏の思想が根強く表れていた。ボクシングはただの殴り合いではない。純粋なスポーツなので、勝つために厳しい練習を重ねなければならない。ケンカに使ってはならないことになっているが、随所にケンカが出て来る。
中学時代にいじめられ、その復讐のために、あるいは恐怖心を克服するために、ひたすらボクシングに打ち込む学力優秀な生徒と、運動神経が抜群で天才的な才能を持ちながら、アホばかりしている8冠を狙うその友だちが主人公である。
確かに胸踊る青春小説であるが、太宰治のひ弱さも宮沢賢治の優しさも無い。勝つことだけを生きがいにする青春で良いのかと思えて来る。キリストの「右の頬を打たれたら、左の頬を出しなさい」も、釈迦のように自分を見つめる思想も無い。
Facebookにこんな文章が載っていた。「若者が強盗するのも、男が街を歩いている女子大生の腹に蹴りを入れて1万円盗んだりするのも、若い女性がアメリカに売春ツアーなんかに乗ったりするのも、ホストの問題も、世の中が荒れているのも、自民党によって、日本がめちゃめちゃにされているからです」。
なんという短絡的な発想かと情けなくなる。全てを自民党のせいにしても、何も解決しないだろう。社会の仕組みを作り上げることは大切だが、社会を支える私たち自身が変わっていかなくてはと私は思う。
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