「恋多き男」と、中学の同級生に言われてしまった。実際は中学1年の終わりに、「付き合ってください」と告白した女の子に、高校3年の冬に振られるまで、「恋」が何かも分からないままに、ズーと彼女ひとすじだった。
別れる時に彼女が言ったように、「あなたは、あなたが描いていた私に恋しているのよ」と言う通りだった。恋がどういうものか知りたくて、小説を読み、映画を観た。そして頭の中でストーリーを描いていたが、彼女とふたりだけで話したことは無かった。
彼女の誕生日に、町の花屋から花束を届けたり、学校で彼女の姿を眺めて満足していた。そして彼女を想い、詩を文芸部の機関誌に発表したり、修学旅行記に彼女と一緒に帰ろうとしたことも書いた。全くのひとり相撲だったと、今は分かる。
確かに中1の時、幼稚園・小学校と憧れていた女の子と同じクラスになり、「協力して欲しい」と手紙を出した。担任に呼び出され、叱られ、それで終わった。中3の時、転校する女の子から駅に来るように言われ、「私のリコーダー、あげる」と手渡された。
高校の時、朝早くから音楽室でピアノの練習をしていた、ひとつ下の学年の女の子に魅かれた。でも、彼女にファンは多く、私はそのうちのひとりに過ぎなかった。だから、初恋の人以外に憧れる人はいなかったと言えばウソになるが、振り返れば一途な恋だった。
ラブレターを送ることも、電話で話すことも無かったが、私は「恋している」と思い込んでいた。「恋」していれば、自ずと想いは伝わると。それなのに、高3の時、同じクラスに背が高くハムサムな男が、彼女のことを「好きだ」と言っているのを伝え聞いて焦った。
ふたりで街を歩けば「不良」と言われた時代だ。高校を卒業すれば堂々と会えると思っていたのに、彼女からの通告は余りに残酷だった。「話し合わなければ、心は通じない」と、友だちに指摘されるまで気が付かないアホな男だった。
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