【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜季語で一句 ㉔ 〜

2021年11月07日 10時25分48秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

〜季語で一句 ㉔ 〜

◆『くまがわ春秋』11月号が発行されました。

◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。

◆お求めは下記までご連絡下さい。

(info@hitoyoshi.co.jp ☎0966-23-3759)

 

「くまがわ春秋」 【季語で一句】(R3・11月号)

永田満徳:選評・野島正則:季語説明

鰯雲(いわしぐも)    「秋-天文」

 

土谷純一

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鰯雲口ずさみたるみすゞの詩

【永田満徳評】

「鰯雲」の句は別の何かと対比させる句が多い。掲句は、「朝焼小焼だ」(金子みすゞ「大漁」)という「みすゞの詩」と、朝焼けに広がる「鰯雲」とを取合わせて、爽やかな秋の朝の雰囲気をうまく詠んでいる。

【季語の説明】

「鰯雲」はいずれも高度5000〜1万5000キロ程度にできる「巻積雲」の俗称で、秋を代表する雲である。上空の高いところに発生し、雲のかけらが魚の鱗のように、さざ波のように規則的に配列した美しい雲である。鰯雲は雲が薄く、太陽が透けるため陰ができない。「うろこ雲」、「鯖雲」など様々に呼ばれている。

 

 

新酒(しんしゅ《しんしゆ》) 「秋-生活」

 

山野邉 茂

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今年酒講釈長き下戸とゐて

【永田満徳評】

「新酒」はフレッシュ感があって、酒好きにはたまらない。掲句は、「下戸」が思いの外、「今年酒」に詳しいのに驚くとともに、「下戸」は「下戸」なりに酒を飲めない分、自慢したくなる心理をよく捉えている。

【季語の説明】

日本酒は昔からの習慣で、秋に収穫したお米を使って、冬から春にかけて造られることが一般的で、新米で造られた日本酒が各蔵から出揃うのは10月から3月頃である。「新酒」はこの年に収穫された新米で造られたお酒という意味で使われ、新酒は秋の季語とされるのは新米の収穫を祝う意味も含まれている。

 

 

柿(かき)        「秋―植物」

 

野島正則

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地球てふ時限爆弾熟柿落つ 

【永田満徳評】

文明の進歩ともに自然破壊に向かう地球は「時限爆弾」と言っていい。掲句は、ぐちゃぐちゃになった地球を「熟柿」に見立て、破滅する様子を「落つ」といったところがよく、身につまされる警世句である。

【季語の説明】

「柿」は日本古来の植物。農家の庭先に実る柿に郷愁を覚え、日本の風土に根づいた秋のくだものとなっている。栄養価が高く、健康食品として優れている。柿には渋柿と甘柿があり、甘くなるまで熟したものが熟柿である。木守柿は梢に一、二個捥がずに残しておくもので、翌年もよく実るようにというおまじないである。

   

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