物部の森

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日記風に書いてます。

M-1グランプリ2024評

2024年12月23日 | Weblog
M-1グランプリ2024は、今回が記念すべき第20回大会。令和ロマンが史上初の2年連続優勝という偉業を達成し、記念大会に華を添えた。
ではいつものように出番順に一組ずつ講評していく。

■令和ロマン
今回のM-1グランプリは、彼らのための大会だったと言っても過言ではない。笑神籤を引くのは阿部一二三。名前通り最初に去年同様、令和ロマンを一番手に引き当てる。連覇の期待もあり、いきなり会場のボルテージが上がる。そんな中、ディフェンディングチャンピオンは臆することなく、苗字を題材にしたあるあるネタを演じる。非常に高度に練られた漫才であった。結果、全員が90点以上つけてファーストラウンド2位。2本目は彼らの得意なくるまが演技でボケまくる、いわゆるコント漫才。くるまの面白さに目を奪われがちだが、けむりのひょうひょうとしたリアクションや的確なツッコミもレベルが高い。こうして2本種類の違うネタで見事優勝。彼らが高学歴だからそう思ってしまうのかもしれないが、なにか漫才のネタを作るのにカイゼンやPDCAのような手法で、自分たちのネタと観客の求めているものを精緻にフィットさせるようなことをやっているんじゃないか。2年前のM-1準決勝で初めて見たときに、面白いコンビだなと思った。ただボケが強すぎてバランスが悪いとも感じた。それがわずか2年でここまで急成長を遂げた。霜降り明星が出たときに、すごい漫才師が現れたと思ったが、まだまだ世の中には笑いの才能に溢れた若者がいるのだ。

■ヤーレンズ
個人的には今日本で一番漫才が上手いコンビだと思っている。今回私は優勝候補の筆頭にあげていた。阿部一二三が名前どおり、昨年の準優勝コンビを2番手に引き当てる。これまた場内は大歓声。ネタはおむすび屋を題材にしたコント漫才。テンポよく小ぶりなボケを連発しながら、大きな流れに持っていく。贔屓目もあるのかもしれないが、内容的には1本目の令和ロマンよりも好きだ。ただ点数は思ったよりも伸びず、令和ロマンと25点と相当開いてしまった。海原ともこが「もっと、しょーもないのを見たかった」とコメントしていたが、十分彼ららしい“しょーもなさ”を発揮していたと思ったが。今回、審査員の点数と、自分の感覚が一番ズレた結果であった。

■真空ジェシカ、
今回4年連続決勝進出。これは笑い飯に続いて2番目に長い記録らしい(笑い飯は9年連続なのでまだまだ差があるが)。すっかりM-1の常連である。今回初めて最終決戦まで残ったのだが、2本とも非常に面白かった。1本目の商店街のロケというのはよくあるシチュエーションだが、一店舗ごとに違った種類のボケをして、さながらショートコントのオムニバスみたいな展開になっていた。ただ途中で薬指だけ立てて、一瞬テレビで出してはいけないジェスチャーみたいなことをしたが、あれは観てる方がヒヤっとしてボケが入ってきにくいので止めたほうがいい。2本目のアンジェラ・アキのピアノのネタは、彼らの中でも最大限にナンセンスに振ったものだった。最終決戦だけみたら令和ロマンよりも真空ジェシカの方が面白かった気がする。

■マユリカ
大阪時代から彼らの漫才を高く評価していたが、一昨年東京進出して以来、すっかり全国区の人気者になった感がある。今回は準決勝からの敗者復活組。準決勝は録画してまだ観ていないが、実績・実力からしても順当ではないだろうか。ただ決勝は、令和ロマン、ヤーレンズ、真空ジェシカと、これでもかと言うような強烈なネタが続いた後だったので、若干やりにくかったのではないか。また、同窓会メンバーとモーニングセットを掛け合わせた今回のネタは、彼らの持ちネタの中では、小粒な感じがした。舞台の上で「あんまりハネてないな」と思いながら漫才をやってたのかもしれない。結果は惨敗。安定して結果が出せる漫才師、今後まだまだチャンスはあるだろう。

■ダイタク
結成15年目、M-1最終年にして初の決勝進出。スタイルは正当派のしゃべくり漫才、その中で一卵性双生児であるという自分たちの特徴を最大限に活かしたネタが持ち味。今回はヒーローインタビューで、ヒーローとインタビュアーが交互に入れ替わって、ボケを繰り広げるというダブルボケスタイルだった。インタビューという形式をとると、漫才の中で長ゼリフが多くなってしまいがちだが、二人とも言葉がすらすらと出てくる。練習を積んできたことがうかがえる。ただいかんせん、ルックスやキャラが地味。よほどネタが跳ねないと苦しい。まあ、最終年に決勝に出られたのはよかったんじゃないかな。基本的に二人とも真面目で、フリートークが上手くない。バラエティ含め、売れたいのであれば、もっと強烈なキャラを前面に打ち出さないと苦しい。

■ジョックロック
結成は2年目。左のツッコミの福本がNSC35期で37歳。右のボケのゆうじろーがNSC42期で26歳。芸歴7年、年齢差9歳と、こんなにもキャリアに差がある二人がなぜコンビを組むようになったのか、馴れ初めを知りたい。最初のオチの福本の「やっぱりちょっとカード作るの怖いなぁ」と足を開いて真正面を向くポーズで大いに笑った。一発目のボケとツッコミにより「ああ、彼らはこういう漫才をするのだな」ということが客に分かる。見やすく聞きやすく安心感のあるスタイルだが、漫才の先が読めてしまう。審査員の柴田もそんなことを言いながら、山内と同様「ボケのパワー不足」を指摘していた。ゆうじろーの方がキャリアも年齢もかなり下だし、ある程度は仕方ない。最後彼が「オレが面白くなります!」と叫んだのが好感を持てた。あと13年あるぞ、がんばれー。

■バッテリィズ
彼らを初めて見たのは2年くらい前だったと記憶している。オーソドックスでベタな漫才。勢いはあったが荒削り。売れるにはもう少し時間がかかるだろうし、何かしら上積みが必要だなと感じた。それが、あれよあれよと言う間に、今回のM-1初決勝進出。彼らの漫才は右の寺家がセリフまわし上はボケになるが、特にボケておらず普通に博識で正しいことを言っている。それに左のハートがとんちんかんなツッコミをして、それがボケになる。そうして寺家がもう一度ツッコミ返す。意外と複雑なのである。私の感覚では、80年代後半、吉本興業の漫才師が低迷していたころの若手「おかけんた・ゆうた」や「どんきほ~て」の古い漫才を思い出させる。1本目は以前見たことのあるネタだったが、ハートのアホさが上手く観客や審査員のツボにはまり、後半に行くにしたがってどんどん笑いの渦が広がっていく。言うなれば「令和のオシャレアホ」。結果、ファーストステージは見事最高点。2本目も1本目と同じような切り口だったが、少し笑いが足りず漫才の時間も短いように感じた。おそらく出来の良い方を1本目に持ってきたのだろう。今回のM-1出場で全国区の切符を掴んだ。後はバラエティ等で結果を出し、人気者になってほしい。

■ママタルト
右の巨漢のボケ大鶴肥満は、「さんまの向上委員会」等でちょくちょくピンで出ているので知っていたが、二人の漫才は初見である。予想通り肥満の巨漢を活かしたネタ。左の檜原(ひわら。Wikipediaで調べたら清風南海から神戸大学という高学歴)は突っ込むときに、少しセリフがゆっくりめになり、大きな声を張り上げる。そのとき少し裏声になってキンキンと響き、耳障りが良くない。それが影響し、あまりネタが入ってこなかった。先日読んだノンスタイル石田の書籍『答え合わせ』では「漫才師は二人の声質をよく理解してネタを作るべき」というようなことが書いてあった。まさにママタルトは、自分たちのビジュアルや声がどうやったら観客により上手く面白く届くかということを、もっと研究すべきである。

■エバース
彼らの漫才は一度見たことがある。そのときの印象は可もなく不可もなく。M-1決勝に進んだだけあって、今回のネタは非常に洗練されていた。「15年後の今日、桜の木の下で会う」という約束をした日が、閏年の2月29日であり、また桜の木はその後ショッピングモールとなっている、という設定が「時間」と「空間」の両面から話を面白く、かつ“ほどよく”複雑にしている。一つ前のママタルトと違って、このコンビは二人の声質やトーンの違いが上手く嚙み合っている。ボケの佐々木は延々屁理屈をこねる。少し高めのよく通る声なのでよけいにウザい。それに対し町田は、低めのトーンでスパッと短いツッコミを入れる。時間と空間そして2人の声、これらが上手くねじり合って、さながら一つの演劇を見ているようだった。残念ながら2位の令和ロマンとは2点差、3位の真空ジェシカとは1点差と、僅差で最終決戦には残られず。このレベルだともう運の世界だろう。

■トムブラウン
M-1最終年、出番も一番最後、そこで彼らが披露したネタは、いかにもトムブラウンらしいと言えばそのとおりなのだが、私には理解不能で面白くなかった。本当にこのネタのチョイスでよかったのか。うがった見方をすると、もう上位3組のクオリティには勝てないので、あえて捨て身の戦略でハチャメチャのものを持ってきたのでは、とまで思ってしまう。彼らは、最初にM-1に出たときに「合体」のネタで有名になった。その後TV出演も増え、今ではその漫才スタイルは世間で認知されている。そういう意味では、お茶の間に分かってもらっているという安心感の上で演じる、自分たちの個性やスタイルを極めたネタと解釈できる。一方厳しい見方をすれば、「オレらならこれくらいやってもいいよね」と、自分たちの知名度におもねている傲慢な漫才とも感じられる。彼らのラジオ番組をPodcastでたまに聞く。そこではリスナーのハガキに二人で普通に対応している。それができるのだから、今回のようなギャグ一辺倒ではなく、もう少ししゃべくりを入れて聞かせるネタをやってほしかった。

以上、57歳にもなってこんなことを真面目に書いている自分がつくづく情けなく、かつ、わりと好きだったりする。
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2 コメント

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Unknown (UDA)
2024-12-29 23:18:10
毎年、評を楽しみにしてます。
今年は去年より全体的におもろかったですね。
やっぱり令和ロマンは引き出しが多い分勝ったかなとは思いますが、令和ロマン、真空ジェシカとも最終決戦は5分位、バッテリーだけは4分を守ったようですよ、
まあ、ストップウォッチで測ってた大吉が令和ロマンにいれたんやから、そんなもんかと。
でも、職業柄、ルールを守ったバッテリーにわたしは1票です!
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Unknown (モジャン)
2025-01-19 20:33:25
ああ、バッテリィズが短いと思ったのは、他の二組が長かったからなんやね。ただ、時間が超過したというだけで票を入れない判断をするのは、勇気が要りますね。準決勝とかだったらいざ知らず。最終決戦ですから。個人的にヤーレンズやマユリカが好きやけど、今回は令和ロマンで文句ないと思いますよ。
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