『街場の中国論』(内田樹著、ミシマ社)を読む。
神戸女学院大学の大学院の演習で、ウチダ先生が話したことを録音し、それをテープ起こしたものが原型になっている。演習は毎回一人のゼミ生が主題を提起して、その主題について先生がコメントし、ディスカッションするというもの。本書では主題提起(おそらく発表などをして共有化を図っているのだろう)の部分は割愛され、その後からのやりとりを文字にしている。主題である中華思想、アヘン戦争、文化大革命、台湾事情などの基礎知識がないと、着いていきにくいが、そこは分かりやすく丁寧に書いてある。
ちょうど尖閣諸島問題がメディアを賑わしているときに読み始めたので、中国の外交戦略については、非常にタイムリーであった。
(以下、先生のブログからも引用)
中国の為政者は外交上の失敗によって、「トップの交代」にとどまらず、場合によると「政体の交代」の可能性を配慮しなければならない。14億の国民のうち10%は少数民族であり、チベットやウイグルをはじめとして、自立・独立をめざす民族があちこちに存在する。
外交で失敗すれば、あらゆる国境地域で独立運動が起き、場合によっては内戦が始まるというリスクをつねに勘定に入れて中国政府のトップは政策を実行している。
日本政府は、そのようなリスクを勘定に入れる必要がない。菅政権がどれほど外交上の失点を重ねようと、内閣の辞職や国政選挙での与党の惨敗というようなことはありえても、九州や北海道が独立するとか、内戦が始まるとか、戒厳令が布告されるといった事態を想像する必要はない。
(以上、引用終わり)
外交上負けたときに失うものの大きさが違う、その「必死さの違い」を理解し、交渉に臨まなければなければならないということ。複眼的視点である。
神戸女学院大学の大学院の演習で、ウチダ先生が話したことを録音し、それをテープ起こしたものが原型になっている。演習は毎回一人のゼミ生が主題を提起して、その主題について先生がコメントし、ディスカッションするというもの。本書では主題提起(おそらく発表などをして共有化を図っているのだろう)の部分は割愛され、その後からのやりとりを文字にしている。主題である中華思想、アヘン戦争、文化大革命、台湾事情などの基礎知識がないと、着いていきにくいが、そこは分かりやすく丁寧に書いてある。
ちょうど尖閣諸島問題がメディアを賑わしているときに読み始めたので、中国の外交戦略については、非常にタイムリーであった。
(以下、先生のブログからも引用)
中国の為政者は外交上の失敗によって、「トップの交代」にとどまらず、場合によると「政体の交代」の可能性を配慮しなければならない。14億の国民のうち10%は少数民族であり、チベットやウイグルをはじめとして、自立・独立をめざす民族があちこちに存在する。
外交で失敗すれば、あらゆる国境地域で独立運動が起き、場合によっては内戦が始まるというリスクをつねに勘定に入れて中国政府のトップは政策を実行している。
日本政府は、そのようなリスクを勘定に入れる必要がない。菅政権がどれほど外交上の失点を重ねようと、内閣の辞職や国政選挙での与党の惨敗というようなことはありえても、九州や北海道が独立するとか、内戦が始まるとか、戒厳令が布告されるといった事態を想像する必要はない。
(以上、引用終わり)
外交上負けたときに失うものの大きさが違う、その「必死さの違い」を理解し、交渉に臨まなければなければならないということ。複眼的視点である。