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理系に身を置きながら、文系の心でものに接する、福岡伸一さんの真骨頂の一冊。文系的センスで物事に当たりながら理系的洞察力で物事を見つめる。またの逆も真なり。その異なる分野を自由に往還できることが大切と・・。
例えば、コロナ禍も発生から約二年が経過してしまったが、一向に収束は見えてこない。いったんは減少傾向にあった感染者数は、変異株の出現とともに、再び世界的な増加傾向にある。明らかなことは、ウイルスを完全に撲滅したり、駆逐することはできない。自然は押せば押し返し、沈めようとすれば浮かび上がる。
だから、変異株の出現のたびに過剰反応するのではなく、結局のところ、ウイルスとの動的平衡をさぐるしかないと。つまりウイルスも自然の環の一つとして、宿主には激しいダメージを与えるよりも、できるだけ安定した状態で共存できる方向へと動く。つまり必然的に弱毒化し、致死率の低いものへと変化してしてはずだと。宿主である人間の側も変化する。そうすればやがてコロナも“新型”ではなく“普通”の常在ウイルスになる日がくる。
ほんと、そう願っていますな。
というように、いろんな提案、提議がされています。
気になった、表題だけ列挙しておきます。
・旨いも辛いも、かみ分ける(甘、塩、酸、苦、旨、辛)
・弱者の巧みな戦力(定足数が越えたら、一気に攻める)
・美の起源、生命と結びつく青(水の青、空気の青、青は特殊な色だ)
・科学の進歩。「愛」が支える。(昆虫、彗星、化石、アマンの活躍)
・博士号とかけて、足に裏についたご飯つぶ、ととく(とらないと気になるが、とっても食えない)
・「記憶ない」ことこそ記憶(単に二日酔い状態との告白に過ぎない)
・作ることは、壊すこと(伊勢神宮と法隆寺、どちらが生命的)
・生命とは、西田哲学の定義(合成と分解、酸化と還元、結合と切断)
・建築家がモテるのは(画家、音楽家、小説家、ああ身近に落語家が)
・須賀敦子、読まれ続ける秘密(ひらがな、穏やか、やさしく、端正な文体)
・夜生まれ、朝消えるもの(その答えもまた希望である)
・虫食い算、口口を埋めてみて(言葉の虫食い算)
・自然界の不思議、交差する所(南方熊楠のウガの標本)
・コップ一杯、海に注いだら(絶えず揺らぎながら循環している)
・世界のこのかすかな移ろいに気づく(音でも、光でも、風でもよい)