読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

堂場瞬一『異境』を読む

2011年10月26日 | 読書

『異境』 著者:堂場瞬一 2011.6 小学館刊

  

  何処の世界にもいる一匹狼。周囲の人と、とくに上司とそりが合わず、反抗的で独断的なのですぐどこかに飛ば
される。
 本書主人公の新聞記者甲斐明人がまさにそれ。優秀な記者で本社社会部で活躍していたが、社会部長にたて
つき横浜支局に左遷される。ところが初めて一緒に昼飯を食った後輩記者二階が突然失踪する。何やらスクープ
を狙っている口ぶりであったが・・・。
 さっぱり同僚の失踪調査に動かない支局幹部に業を煮やし、甲斐は独自に二階の身辺を探り始める。
 手始めに訪ねた県警の刑事課長も、知り合いの警務部長にもさっぱり真剣さがうかがえない。ただ一人、かつて
二階記者から密着取材を受けた若手女性刑事浅羽はなにくれとなく調査を支えてくれる。
 やがて県警生活安全部の管理官が自殺する。謎の男が現れ、二階の失踪に関する情報を伝えて「身辺に気を付
けて」と告げて消えたりする。
 「これ以上調べるな、警告だ」ある夜甲斐は何者かに襲われ大けがをする。 防犯カメラに映った犯人のピアスを
手掛かりに、ブラジル人グループに近づくがこれが巧妙な罠で…。

 横浜という国際港を根城に大掛かりな多国籍犯罪集団が高級盗難車の密売・解体、薬物の密輸などに暗躍、県
警の一部刑事、幹部が賄賂と引き換えにこのアジトを黙認、癒着を嗅ぎつけた二階記者はこの集団に消された。

 四十過ぎの新聞記者。本社には同期入社の気心の知れた女性もいる。しかし何処へ行っても一匹狼の秘密主義。
 気に食わないと上司でも平気で突っかかる。何んとかわかりあえる人は数えるほどしかいない。刑事でも記者でも
 目覚ましい成績は上げても組織の上にはいかない。こんな好漢も歳をとる。40代ならかっこいいが、いつまでもか
 っこつけてばかりいられないのだが。この先どうするのだろう。
  そういえば、ここに登場する女性刑事浅羽翔子は若くして刑事になっているところを見ると結構優秀なのだろうが、
 なぜか余り存在感がない。それは本業の刑事仕事が見えていなくて、甲斐に協力しているシーンしか出てこないか
 ら。若手なのだから何件か事件を抱えて相棒とペアで動き回らなければならないポジションのはずなのに、なぜか
 暇らしい。休みや宿直明けとかそんなにあるとも思えないが。やや不自然な感じが残った。

                                                           (以上この項終わり)

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