◇ 『共同正犯』 著者:大門剛明 2011.7角川書店刊
刑法第60条 二人以上共同して犯罪を実行したものは、すべて正犯とする。
これは、共同正犯という罪刑の形態に仮借し、連帯保証制度という民法上の契約がもたらす
数多の悲劇に焦点を当て、世界的にも特異な制度の不条理性を糾弾した小説である。
というと如何にも物々しいが、中身は至って人情ものっぽく、登場人物に善人が多い。法律上
確かに犯罪であるが、みんな動機に同情できて、罪に問いたくない人たちがいて、最後はなん
とかめでたしめでたしというところに落ち着くところがいい。
サスペンスのジャンルに入れられているとは思うが、単純な推理物ではない、いい感じの小
説である。
とはいうものの、刑事が事件関係者に「わしは犯人は〇〇〇だと思っております」とか、捜査中
の情報をいとも簡単に口にしていたり、犯人が捜査中の刑事の実の兄かもしれないという段階で
も捜査陣から外されないなど、実際の警察組織では多分ないような形で話が進んでいくと、いささ
か鼻白む。
(以上この項終わり)