読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

天野節子の『氷の華』

2016年02月13日 | 読書

◇『氷の華』 著者:天野節子 2008.6 幻冬舎 刊 (幻冬文庫)

  

  中国経済の減速、原油安の波及、アメリカ経済の不透明感台頭など世の中が動揺している
 さなか、清原の薬物事件、タレントのベッキーさんの不倫騒動、いくめん議員の不倫辞職など、
 下世話な話題で新聞、TVが賑わった。この作品も紆余曲折はあるものの、主軸は夫の不倫
 に怒った妻の復讐譚である。

  先日の日経夕刊で天野節子の作品『午後2時の証言者たち』がある評者にべた褒めされて
 いて読んでみようとリクエストしたがまだ図書館では購入されていなかった。そこで過去の作品
 を読んでみようとこの本と『彷徨人』を借りてみた。
  この作品は著者のデビュー作である。多分渾身の作なのだろう。 筋も登場人物のキャラク
 ターもしっかりしていて無駄も緩みもない。推理小説として好印象を持った。 
  
  資産家で何不自由ない生活を送る瀬野恭子は、ある日の午後夫瀬野隆之の愛人を名乗る
 女から電話を受ける。出張中の隆之は帰ったらあなたと離婚することになっている。お腹には
 赤ちゃんがいる。不妊症のあなたには妻でいる価値がない。郵便受けを見ろという。確かに
 郵便受けには夫を父とする母子手帳が入っていた。
  並はずれて勝ち気で自尊心の高い恭子は不妊症をあげつらい妻として価値がないなどとな
 じられたことが許せない。ただちに相手の住所も付きとめて復讐の殺しに取りかかる。決断力
 といい綿密なカムフラージュの段取りといい、頭に良い女性である。農薬をしかけたジュース
 を呑んだ不倫相手は死んだ。そこに登場するのが粘っこい職人気質の捜査1課の刑事戸田。
  足で稼いだ情報から小さな綻びを見つけ、恭子の犯行を暴きだす。ところが真犯人は別に
 いた。恭子も自分が罠にはめられたことを知っていた。相手は誰だ。・・・

  頭のいい恭子は、夫と共謀した不倫相手の行動を読み切り、二人の心中を装う仕掛けをす
 る。しかしそれも戸田の執念深い追及によって暴かれた。誇り高い恭子は自らの手で死を選
 ぶ。

  この本はドラマ化されたそうですが私は見ていません。
                                             (以上この項終わり)

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