◇ 『カリブ深海の陰謀を阻止せよ(上・下)』(原題:HAVANA STORM)
著者:クライブ・カッスラー&ダークカッスラー
(CLIVE CUSSLER And DIRK CUSSLER)
訳者:中山 善之 2017.10 新潮社 刊
海洋冒険小説の雄クライブ・カッスラーおなじみのNUMAシリーズ最新作。今回の作品はカリブ海が舞台。主人公
のダーク・ピットはNUMA(国立海中海洋機関)長官。
このところジャマイカ近海の3か所でメチル水銀を含む謎の海水汚染が観測された。
ダーク・ピットと僚友ジョルディーノは自動潜水艇を駆使し、熱水鉱床周辺を掘削しウランや希少金属を含む
鉱石を採掘している証拠を探り出す。しかもそのウラン鉱石は核弾頭ミサイルと交換に北朝鮮に渡されるという
取引となっていることが分かった。
一方ダークの娘サマーと息子ダーク・ジュニア(双子)はメキシコ東部の沿岸の洞窟でアステカの財宝の在り
かを示す2枚の石板の存在を示す写本を発見した。
物語はこの二つの出来事が並行して進み、やがてこの二つの流れは交錯し意外な展開を見せる。例によって息
詰まる潜水艇の救護活動、船艇での激しい戦闘、カーチェイスなどふんだんに活劇が用意されている。
やがて熱水鉱床のウラン掘削はキューバ政府高官と軍部の一部が絡んでいることが判明した。ダーク・ピット
親子は掘削船に発見され拘束される。多勢に無勢、助けに行ったジョルディーノらも拿捕されてしまう。ここで
二つのラインは初めて合流し敵対者も明確になる。
大立ち回りの末にピットは辛うじて脱出することができたが、サマーは拿捕されたNUMAの潜水艇に閉じ込めら
れ、熱水鉱床の爆発地点に置き去りにされてしまった。サマーの運命や如何に…。
キューバのラウル・カストロ議長に敵対する一派は後継者と目される外相をも殺しグティエル内務相を議長に
据えようと画策していた。彼らはケイマン諸島滞在中のラウル議長を爆破で暗殺、その罪をピットにかぶせよう
と図る。しかしピットは危うく殺されかけたラウル議長を救い出し、市場経済移行を支援するアメリカ副大統領
との会見をおぜん立てをし、会見は成功する。そして最も大規模な熱水噴出孔爆破計画はすんでのところで阻止
できた。
さて、ダークとサマーが探し求めていた石板と財宝はどうなったか。巻末の「エピローグ・偉大なる港」を読ま
れたい。
米西戦争後アメリカとメキシコ・キューバとの関係など歴史的背景を絡めて、財宝の封印が守られてきた経緯
を物語展開に取り込んだ手際が憎い。
(以上この項終わり)