読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

志賀晃の『スマホを落としただけなのに』を読んだ

2019年03月04日 | 読書

◇『スマホを落としただけなのに

   著者:志賀 晃    2018.9 宝島社 刊(宝島文庫)

  

 第15回『このミステリーがすごい』大賞候補作となって映画化され、コミックも出た。評判の作品である。
タクシーに置き忘れたスマホが、とんでもない災難を引き起こす。ネット社会の危うい裏面をサスペンスフル
なミステリーに仕上げた作者はなかなかのものである。クラッキングなど専門的な手口も語り口が平明なので
その怖さが直接身近に迫ってくる感じで、一気読みした。

 ある男が誰かがタクシーに忘れたスマホを拾った。待ち受け画面には自分好みの黒髪の美人が写っていた。
そこから悪夢のような物語が展開する。全体の組み立てとしてはこのスマホを拾った「男」、ターゲットと
なった黒髪の美人稲葉麻美、若い女性の連続殺人事件の捜査の三本の線が巧みにた語り継がれていく。が、
主軸はなりすましの「男」と「麻美」の攻防である。

 犯人捜しはそれほどむつかしくはない。途中で「あ、こいつね」といった程度ではあるが、なんといって
も「男」がスマホに充満する個人情報、スマホ・フェースブックの交流関係をたどって現在・過去の人間関
係を暴き出していくプロセスがすごい。作者がクラッキングのプロではないかと疑いたくなるほどだ。5件
にのぼるシリアル殺人そのものやこれに対する警察の対応には首を傾げたくなる点が多々あるが、フェース
ブック・スマホでのなりすましによる犯罪への警鐘に軍配が上がる。

 なりすましのシリアルキラー「男」、美人だが超訳アリだった「稲葉麻美」、ドジではあるが最後まで
「あさみん」への愛を守った「富田」。最後にサスペンスも用意してあって出来のいいミステリーである。

 続編が出た。『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2018.11宝島文庫)
                                      (以上この項終わり)


  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする