片岡翔 著
――これからは、ぼくがせいたろを守るから。
小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころに他界した母に作ってもらったコアラのぬいぐるみ・ムッシュを大事にしていた。
ムッシュは母が亡くなったその日にしゃべりだし、以来、星太朗の無二の親友となっていた。
そして、そのまま20年の時が過ぎたある日、しゃっくりが止まらなくなった星太朗に大きな転機が訪れる。
身長はA4サイズで、ずんぐりむっくり、歌うことが大好きなムッシュの十八番は「スーダラ節」。
大人のような、でも、大人でも言わないことを教えてくれる反面、その行動は子どもっぽいところだらけ。
一方の星太朗は引っ込み思案でちょっと奥手。
小学校時代はぬいぐるみ(ムッシュ)をもっていたせいで、いじめられていた。
純情すぎて童貞歴27年、けれども、容姿は悪くない。
高校のときから替えていない丸眼鏡は、最近では一周まわって流行っているし、清潔さには人一倍気を付けている。
パッと見、自由奔放なムッシュに、ふり回される星太朗、という関係だが、ムッシュはムッシュなりに星太朗を気づかい、星太朗はムッシュのことをかけがえのない存在だと感じている。
そんなふたりには、ひみつノートがあった。
「ムッシュのことは、だれにも言ってはならない。
(言ったらムッシュはヤミのソシキにつかまって、人体じっけん(コアラだけど)されるだろう)」
仰々しい注意書きに続けて、ふたりの夢が箇条書きされている。
そして、ある転機をきっかけにふたりは、この夢を叶えるために動き出す・・・。
「かわいい!」「おもしろい!」あらたな愛され系キャラクター誕生!!
"おせっかいやき"で"かまってちゃん"のムッシュに夢中になること間違いナシ。
随所に散りばめられたムッシュのカラオケレパートリーがいい味、出しています。
まじめな青年とやんちゃなぬいぐるみのドタバタ劇。
そして、ラストには思わぬ感動の波が押し寄せ、涙が頬をつたう友情物語。
著者は映画監督、脚本家として活躍する片岡翔、本著が待望の小説デビュー作!!
そして、カバーイラストは、松本大洋氏の描き下ろしです。
(小学館サイトより)
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ムッシュにこんなに泣かされるとは思っていなかったです。
大人の男性がぬいぐるみを抱いて生きてる。。。
正直、私の好みではないかも、、、と思いながらも読み始めました。
こんなに胸が苦しくなる展開だったの~?
読み始めたら一気に読んでしまいました。
片岡翔監督の短編映画は何本か見せて頂いてますし、『1/11 じゅういちぶんのいち』
『たまこちゃんとコックボー』も見ています。
この小説は短編映画と同じ匂いがしました。
甘くそして切ない、、、。でもこの切なさは心に突き刺さるような鋭さも感じました。
それは私が見た翔監督の短編映画には感じなかった鋭さでした。
映像と小説の違いかもしれませんね。
とにかく、翔監督の優しさ溢れる小説でした。
未読の方は是非~!!