---2023年9月4日(月)---
昭和~令和へ壮大なスケールで描く人間賛歌。
人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。
舞台は、令和と昭和の、とある出版社。
コロナ蔓延の社会で、世の中も閉塞感と暗いムードの中、意に沿わない異動でやる気をなくしている明日花(28歳)。
そんな折、自分の会社文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。
世界に例を見ない学年別学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった。
なぜ祖母は、これまでこのことを自分に話してくれなかったのか。その秘密を紐解くうちに、明日花は、子どもの人権、文化、心と真剣に対峙し格闘する、先人たちの姿を発見してゆくことになる。
子どもの人権を真剣に考える大人たちの軌跡を縦糸に、母親と子どもの絆を横糸に、物語は様々な思いを織り込んで、この先の未来への切なる願いを映し出す。
戦争、抗争、虐待……。繰り返される悪しき循環に風穴をあけるため、今、私たちになにができるのか。
いまの時代にこそ読むべき、壮大な人間賛歌です。(小学館サイトより)
小学館創立100周年にあたり、作家古市一絵が書いた学年誌のお話です。
小学館の学年誌とは学年別学習雑誌として1922年に創刊された雑誌で、今は「小学一年生」のみの発行となっているようですが、以前は「小学一年生」~「小学六年生」と各学年の雑誌が発行されていました。戦前から戦争を経て、戦後、日本の子供たちの未来を育むように発行されていました。
主人公の明日花はこの学年誌100周年記念の記念の催し物を担当するにあたり、学年誌の歴史を調べていきます。その中でその年代に向き合った人々の熱心な思いに触れていく中で、祖母(鮫島スエ)がかかわっていたことに驚きます。
祖母の足跡に触れることで、母の在り方、今の自分が見えてくるのです。
未来の子供達のために作られる雑誌は、当然時代に翻弄されてきました。
祖母鮫島スエは私の母と、母待子の時代は私自身と、ちょうど時代が重なることもあり夢中で読みました。
著者も語っているように、学年誌の歴史というより三世代の女性の生き方の物語でした。