【中川】次に、地域防災計画原子力編の運用についてお伺いします。
昨年6月18日夜に山形県沖を震源とする地震発生直後、柏崎刈羽原発に異常がないのに「異常あり」とする誤ったファックスが地元自治体等に送信されたことがありました。柏崎市長は「緊急時に最も大切な基本的データーを誤るのは、あまりにもお粗末」と指摘し、東電に説明を求めました。また、地元でも事の重大さを重視し、「柏崎刈羽原発の透明性を確保する地域の会」においても2回にわたって議論が行われ、東京電力は8月に「誤記についての原因と改善策について」地元自治体などに対して説明を行っています。今回は、異常がなかったのに異常ありという誤報でしたが、その逆であれば大事です。
長野県における当時の時系列の経過はどうであったか。また、誤報について東京電力に対し説明を求めたかお伺いします。
【危機管理部長】柏崎刈羽原子力発電所の誤報に対する長野県における当時の時系列の経過についてのご質問です。
山形県沖を震源とし、新潟県で最大震度6強を観測した昨年6月18日の地震の際、柏崎刈羽原子力発電所から、午後10時59分に使用済み燃料プールを冷却する電源に異常がなかったにも関わらず、全7基で「異常あり」とする誤ったファックスが、その後、午後11時24分に、「異常ない」旨の訂正のファックスが本県を含む地元自治体等に送付されました。
また、別途、午後11時5分、原子力規制委員会から配信される緊急情報メールサービスにより、異常がない旨、連絡されました。
その後、8月1日、東京電力は、地元自治体等に対し「誤認しやすい通報連絡用紙の表記」が直接的な原因であったと報告したところです。
続いて、誤報について、東京電力に対し説明を求めたのかとのご質問です。
県では、6月21日、こうした誤りが起こらないよう、柏崎刈羽原子力発電所へ原因等の問い合わせを行い、更に、6月24日には、立地県である新潟県にも状況確認を行いましたが、柏崎刈羽原子力発電所からの明確な回答はありませんでした。
その後、先ほど申し上げましたとおり、8月1日に東京電力が、原因と改善策を報道発表し、本県に対しても情報提供があったところです。
【中川】次に、平成24年6月に福島第一原発事故の教訓を踏まえた原子炉等規制法の改正が行われ、人の安全に加え、環境を守ることを目的に追加するとともに、シビアアクシデントを規制対象とすること、新基準を既設の原発にさかのぼって適用する制度などが規定されました。この法に基づいて原子力規制員会は、新規制基準を定め、この新規制基準の中で「原子力発電所の半径160km圏内の火山を調査し、火砕流や火山灰の到達の可能性、 到達した場合の影響を評価し、予め防護措置を講じること」が要求されています。これまでに、県内の火山の160km圏内にある3つの原発を管理する発電会社から火山に関するデータなどを求められているでしょうか。3つの原発のうち柏崎刈羽原発と浜岡原発とは通報協定を結んでいるところですが、この際、石川県とも協議し志賀原発との通報協定を結ぶべきではないか。
【危機管理部長】原子力事業者から火山に関するデータなどを求められているかのご質問です。
原子力事業者は、原子力規制委員会の原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料として、火山の噴火履歴等の調査結果を提示することとされています。
柏崎刈羽、浜岡及び志賀(しか)の原子力事業者から、現在のところ、県に対し火山の噴火履歴等の資料提供の求めはありませんが、今後、文献等の提供依頼があった場合は、可能な限り協力をしてまいりたいと考えています。
次に、通報協定のご質問です。
柏崎刈羽、浜岡両原子力発電所とは通報連絡体制を整備しており、通報訓練を定期的に実施しておりますが、志賀原子力発電所との通報協定は、現在未締結です。
福島第一原子力発電所の事故の際には、相当距離が離れている本県においても、放射性物質の飛来や風評被害が発生したところであり、こうした通報連絡体制の整備は大変重要であると認識しております。
今後、立地県である石川県とも連携しながら、北陸電力に対して、通報連絡体制の整備に向けて、改めて働きかけてまいりたいと考えています。
【中川】最後に、安心・安全な信州を目指して知事にお伺いします。
東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から9年余が経過しました。福島などから長野県に移住・避難している皆さんは、258世帯700人いると危機管理部からお聞きしました。信州が感染症にも対応する医療の充実、放射能など化学物質の影響を低く抑えていること、地産地消の推進、有機農業への取組み支援なども、移住の重要な選択肢としている方もいます。
また知事は議案説明で、人々の価値観の転換や時代の変化について「持続可能性」や「分散型社会」という言葉を使っています。私は、加えて「競争型社会」から「共生型社会」への転換が求められていると思います。Afterコロナ時代を見据え、安心・安全な社会の実現に向けた知事の認識を伺います。
【知事】Afterコロナ時代を見据えた、安心・安全な社会の実現に向けての認識について、ご質問をいただきました。
今回の新型コロナウイルス感染症対応に取り組む中で、改めて県民の皆様方の安心・安全を守ることが極めて重要だと思っております。この安心・安全がなければ地域や産業の活力が全く失われてしまうということを、今回の対応の中で改めて明らかになり認識しました。
今後の対応ですが、まずは喫緊の課題として、新型コロナウイルスへの備えを万全なものにしていかなければならないと考えています。
医療・検査体制をしっかり充実させ、特措法のみでは十分対応しきれない課題に対して的確に対応するためにも、ご提案している条例を整備することをはじめ、様々な対応をしていかなければならないと思っています。
また、昨年の東日本台風災害の振り返り等を踏まえて、自然災害に対する対応であったり、先ほどご質問いただきました、原子力防災対策を含めた様々な危機事象に対しましても、被害の最小化に向けて、ハード・ソフト両面で対策を行っていく必要があると考えています。
特に、「共生社会」というご指摘をいただきました。今回の新型コロナウイルス対応でも、県民の皆様方の真摯なご協力の中で、この第一波に何とか対応をしてくることが出来たという風に思っておりますし、今現在では、県民の皆様方に支えあいによる地域経済を応援していただきたいとお願いをさせていただいています。
まさにこれは「共生社会」、人と人との支えあいの中でこういった危機にも乗り切っていかなければならない、あるいは向き合っていかなければいけないことの証しの一つではないかと考えております。
危機管理にあたっての「共生社会」の理念ということもしっかり胸に刻みながら、今後とも時代の変化を的確にとらえて、命を守り育む安心安全な長野県づくりに全力を挙げていきたいと考えております。
【中川】「条例についてですが、特措法により都道府県知事には極めて大きな権限が付与されています。県議会として常にチェックすることが必要であり、それが県民の生活や経済活動を制限する際、抑制的になると思います。条例では議会に対しては「報告」にとどまっていますが、補償も含まれる要請については、議会の承認が必要なのではいかという観点からの議論も必要なのではないかということを申し上げて私の一切の質問を終わります。