リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

夏は暑い

2006年06月01日 11時48分02秒 | 日々のこと
なんかこれから暑くなってきそうです。昨日は3階の天窓をあけたまま寝たんですが、ひんやりした風が上から降りてきて気持ちよかったです。部屋はちょっと暑いけど窓を開けたら冷たい風が・・・というのがバーゼルの一番暑い日のパターンでした。日本の夏が(というかまだ夏ですらないですが)このくらいで終わるわけがないのは重々承知していますが、また冷房にたよりっきりの季節が来るわけです。

夏の夜は窓を開けっ放しにしておくと蚊が入ってくるのが困りものです。天窓のところに網戸をつけたんですが、網戸固定するマジックテープがもうだめになっているので、昨夜は網戸なしの開けっ放しです。当然蚊が入ってきて、昨夜もあちこちが痒いので何回か目を覚ましました。それにウチは国道一号線のすぐそばなので、車の音が結構うるさい。まぁ、昔にくらべれば随分交通量は減ったんですが・・・ということで、夏の夜は全ての窓を閉め切って、三菱重工製電力浪費型エアコンをつけっぱなしにすることになるわけです。

古楽器演奏はそんなに暑くならない(暑くなっても湿度は低い)ヨーロッパの気候の中でされていたなので、当然高温多湿はよくないです。楽器そのものは極端な低湿度にならない日本の方がむしろ壊れにくいと思います。ヨーロッパの冬の低湿度は表面板のヒビを招きやすくすごく怖いです。もっとも日本でも夏の炎天下の車中に楽器を入れておくとか、極端なことをしてはだめですが、いわゆる冷暗所で、畳の上に直置きにするとか押入に入れっぱなしというようなことをしない限りは意外と古楽器はタフです。ケースの中にシリカゲルを一杯入れておくなんてことは無用ですよ、実際は。それをするくらいなら、板壁の部屋の壁に吊っておいた方がいいですね。でもそれは地震が怖い・・・

演奏時暑いと困るのは、奏者の方でしょう。ていうか、奏者と楽器の関係。たとえ奏者が暑さに強くても、弾いてて楽器が汗まみれになるのが困りものです。もちろんガットを使う場合は湿度が高いのは大変困ります。従って西洋の楽器、特に古楽器をアジア地域で演奏するには、部屋の冷房がかかせません。でもごく平均的なウチで部屋にきちんと冷房がかかるのがあたりまえというのは、ある程度経済水準が高い国でないとだめでしょう。日本でも私が小さいときなんて、冷房なんて普通のウチにはなく、扇風機もまだという時代でした(夜は窓を開けて蚊帳を吊ってました)から、当然古楽はだめだったでしょう。70年代始めの古楽の復興が20年早かったら日本では古楽の黎明期に一緒にスタートできる人はごく限られた人たちだけだったかも知れません。

アジア地域で古楽の芽が出ているのは韓国くらいかな。スコラには韓国からの学生が何人かいましたし。中国なんかはこれからでしょう。アジアで古楽演奏が広がるかどうかは、冷房がきちんとできる部屋が充分にあるかどうか(=ある程度の経済力)ですね。