リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

新しいうたを作る会のコンサート

2006年06月18日 23時11分23秒 | 音楽系
大して期待しないで買ったCDがすばらしい演奏だとそれはもう嬉しくなっちゃいます。何気なく行ったコンサートがすばらしいときも同じですよね。今日行ったコンサートがそんな感じ。実はリュートのT君が出演するというので、彼に会う用事があって行っただけのコンサート。入り口で3000円といわれて、「お、高いな。ま、いいか」なんて思って払いました。

コンサートは「新しいうたを作る会」による「第6回名古屋初演演奏会」(於電気文化会館ザ・コンサートホール)。曲目は全て最近作られた邦人作曲家の作品。作曲家陣は、細川俊夫、一柳慧、権代敦彦といった現代日本を代表するそうそうたる顔ぶれ、ひょっとしたら居眠りをしないでもきけるかもなんて(ごめんなさい)思ったりしました。

でも実際は一睡もせず、全ての曲を聴いてしまいました。一睡どころか目を見張らされるようないい曲、いい演奏がありました。特にすばらしいと思ったのは、コンサートの後半全てにわたる9章からなる長大な作品、権代敦彦「<<「阿」-A->>」となぜかポップ調の港大尋「声の重力を測るとすれば・・・」の2曲です。

権代はもう日本の若手ナンバーワンといってもいい有名な作曲家ですが、この「新しいうたを作る会」の2004年度の委嘱作品です。私は評論家ではないので美辞麗句を駆使してこの作品がどうよかったなんて書くことはできませんが、ひとことほんとにいい作品です。作曲家ご本人もいらしていてステージに登場、彼の名前は実はバーゼルにいたときに一緒に勉強していた人から聞いていて若い人なんだろうな、なんて思っていましたが、ステージに上がった姿はホントに若い感じでした。でもすごい才能のオーラにつつまれていて私にはまばゆく見えました。作曲家ってすごい仕事するんですね。

あともう一人の港大尋、彼もすばらしかったです。彼の演奏した曲は、彼がギターを弾きながら歌い、もう一人女性のうたの人とデュエットするというスタイルです。いわゆるクラシックではありません。どうしてこの曲がここで演奏されているのかは少し不思議にも思いましたが、巧みなギタープレイ、ヴォーカル(女性ヴォーカルの鈴木あかねもすごく良かったです)、不思議な言葉の邂逅に満ちた詩はそんなことどうでもいいと思わせました。音楽の形はポップスの形をとっていますが、そこらのポップスとは随分違う。ナンなんでしょうね。(笑)機会があったら聴いていただくしかないですね。彼とは終演後楽屋で少し話をすることができました。才気にあふれた人と話をするのはホントに嬉しいもんです。うまくことが運んだら、名古屋でもライブをして頂けそうな感じでした。

このコンサート全体としては、やはり全てが日本語の歌詞だった(あたりまえかもしれませんが)ということが私にとっては新鮮だし、日本人としてこれだけのものを持てるということをすごく誇りに思えました。なんせ、古楽人はいつもイタリア語や英語なんかの歌詞でわかりにくい音楽をやってるもんですから、ネイティブでいけることはほんとにうらやましく思えます。ま、そういうレパートリーも少しくらいは開拓しないといけないでしょうね、日本に住んで日本人に音楽を聴かせる以上は。そんなことに目もくれず、ゴチゴチの古楽に徹するというのも一つの気概を示すものではありますが。そんなことも考えさせてくれた、ビッグサプライズのコンサートでした。