リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

2つのコンサート

2008年10月20日 18時55分04秒 | 音楽系
土曜日と日曜日の連続したコンサートが終わりほっと一息です。土曜日のバッハカンタータは曲数が例年より1曲多いし、楽器もニ短調調弦のテオルボを使ったので大変でした。というかニ短調調弦のテオルボ自体が大変であったということではなく、翌日のコンサートのピッチが異なるため、二種類の調弦の楽器で通奏低音をしなくてはならなかったので大変だったということです。

バッハのカンタータは岐阜県多治見市の多治見修道院聖堂での演奏です。例年は金城学院大学内のチャペルで演奏するんですが、今回は場所を変えての演奏です。この修道院、以前(20年以上も前です)は結構何度も行ったことがありました。行くのは本当に久しぶりでしたので、その意味でも楽しみでした。

多治見インターを降りてからの街道風景はガラリと変わり全く面影がありませんでした。車には一応安物のナビを付けているのですが、これがなかったら修道院までたどりつけなかったかも。(笑)



修道院の古い建物はすっかりきれいに修復され、コンサートで使う聖堂も修復され生まれ変わっていました。壊れていたオルガンも修復されたようです。以前来たときは聖堂の内部をじっくり見ることはあまりなかったんですが、今回よく見てみると、全体としてはヨーロッパ風ながらも、柱の仕上げや色彩など随分日本的な感じが色濃く漂っているという印象をうけました。表面に見えているのは「洋」ですが、そのベースには明らかに「和」の美意識を感じさせる非常に特徴的なものです。

コンサートは非常に沢山の方に来ていただき、ほぼ満席でした。実のところ地方都市でしかもバッハということなのでそう多くは来て頂けないだろうと思っていましたが、うれしい誤算でした。用意していた自分のコンサート(12月20日の「リュート音楽のひととき第6回」)の宣伝チラシが足らないくらいでした。(笑)

翌19日の日曜日は名古屋市守山区にある東春酒造さんの酒蔵におけるコンサートです。前日もいい天気でしたが、日曜日も好天に恵まれました。私のコンサートしては大変珍しいケースです。ま、これは通奏低音をやっていてソロはやらないということもあるでしょうけど、共演者が心がけのいい方ばかりであったということに違いありません。

このコンサートは最近フランクフルトから帰国されたOさんの企画によるもので、今回のテーマはイギリス、私が通奏低音を担当するのはヘンデル、ペープシュ、ハイドンの作品、あとダウランドのリュートソングもやりました。



ここの蔵は100数十年前に造られたものだそうで、社長さんのお話では部材の一部に名古屋城からゆずり受けたものもあったそうです。リハーサルのとき、蔵の隅においてある古っぽい家具や図などを見ていたら面白いものを発見しました。明治30年代の列車の時刻表です。当時の関西線の各駅の発車時刻もありました。停車する駅の数は今とそんなに変わらない(若干記憶に自信がありません(笑))感じでしたが、名古屋・桑名間の所要時間は40数分、今のJR関西線の普通列車だと30分ちょいなので、100年間そんなに速くはなっていない、というか、明治の汽車は意外と高速って感じでした。

さてコンサートですが、こちらも沢山の方に聴いていただけました。蔵の中は外の温度変化をあまりうけず、ヨーロッパの建物の中で演奏しているような感じでした。音もとてもきれいに響きます。楽器を変えることによる通奏低音の「勘違い」も起きず、楽しく演奏することができました。

この2つのコンサート、これからもずっと盛況だといいですね。また来年を楽しみにしています。