リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(4)

2024年04月11日 20時38分46秒 | 音楽系

51番をコンサートで演奏するとなると、もうこれだけで前半は終わりで休憩ですよね。このソナタの各楽章が長いのは理由があります。本曲のアルマンド、クーラント、ジグは一般的な舞曲のパターンとはかなり異なっています。それは構造が「ソナタ形式」的になっているからです。

もちろん少し後に出現するソナタ形式みたいに明確な2つの主題があるわけではないですが、2つ目の主題みたいな扱いのフレーズがあり、それが調を変えて後半部の終りあたりに出てくる(再現される)、そして後半部の始めは最初の主題の展開みたいにいろんな調をめぐる、という構造はまるでソナタ形式の楽曲みたいです。ソナタ形式の萌芽と言っていいのではないでしょうか。明らかに2,30年後に一般的になるソナタ形式に繋がるスタイルで、最も初期のソナタ形式の楽曲であると言っていいと思います。

同写本の他の曲に書かれた作曲年からすると、51番は1730年代の後半に書かれたようですが、単に調性だけでなく、テーマの扱いも含めてとても構造的な楽曲がすでにヴァイスによって書かれていたわけです。