院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

天然痘根絶宣言に思う

2006-08-12 14:28:27 | Weblog
 生態系を語るときによく引き合いに出される話だけれども、昔のアメリカの公園でのことである。

 公園ではしばしばピューマが鹿を襲うので困っていた。そこでピューマをたくさん射殺した。そうしたら今度は爆発的に鹿が増え、公園の木や草が食べつくされてしまって、鹿が大量に餓死したというのだ。

 生態系を人間が浅はかにもいじると、とんでもないことになるという寓話のような話である。

 同じような例は日本にもある。ハブに困っていた人間が、ハブの天敵であるマングースを島に放した。結果はご存じのとおりである。

 生態系は精妙である。変にいじると必ずどこかに弊害が出てくる。

 絶滅危惧種を守れと叫ばれている。それは結構なことである。

 それならば、なぜ天然痘を絶滅させたのか?WHOは根絶宣言を出した。祝杯を挙げたかどうかは知らないが、少なくともそんな勢いだった。

 そこで私は考え込んでしまう。トキは絶滅させてはいけないが、天然痘ウイルスなら絶滅させてもよいのだろうか。

 天然痘ウイルスだって生物である。精妙な生態系の中で何らかの役割をもっていたはずである。絶滅によって、どこか思わぬところに弊害が出てくるだろう。それが何だかまだ分からないが、アメリカの鹿のように、人間という種が大増殖することは確かである。