院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

患者離れの悪い医者

2006-08-25 13:41:44 | Weblog
 転勤のたびに患者さんをたくさん引き連れてきて、「自分を慕う患者さんがこんなにいる」と自慢げな医者がたまにいる。

 私たちはそういう医者を「患者離れの悪い医者」と呼んで、ほとんど軽蔑している。彼らはナルシストであるにすぎない。

 患者さんが他の医者に行けなくなるほどに、自分の手垢を付けてしまっては、医者として失格である。遠方に転勤した場合、交通費や時間を患者さんに浪費させることにもなる。なにより、その医者が死んだら、患者さんはどこへ行けばよいのか。

 特定の患者さんに思い入れしすぎると、「贔屓の引き倒しになる」とは恩師中井久夫先生の弁である。(『精神科治療の覚え書』、日本評論社)。

 「患者さんのために、患者さんのために」という考え方も実は問題がある。ひとりの医者が取り扱える患者さんの数は有限だからである。

 戦前のアメリカの有名な精神科医H.S.サリヴァンは「生活のために医療をやっている医者がもっとも良医だ」とまで言っている。