院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

旅行の記念写真の元祖

2015-06-26 04:29:51 | 歴史

(ポンピオ・バトーニによる青年の肖像。AIIposters のHPより引用。)

 17世紀、イギリス貴族の子息たちにフランス経由でイタリアに旅行することが流行った(グランド・ツアー)。交通網が発達して、イタリアのルネッサンスや古代ローマの文物を見聞する目的だった。旅行と言っても最低1年、普通は数年にわたったから留学のようなものだった。

 上の肖像画は、グランド・ツアーに来た若者が、イタリアの人気肖像画家ポンピオ・バトーニに描かせたものである。この種の肖像画の特徴はイタリアのものがあえて描き込んであるところである。上の絵では左側に古代ローマの彫刻、窓の外のかなたにベスビオス火山が見える。

 現代の私たちも旅行に行くと、自分の映像だけではなく、現地に行った証明として現地の景色を画面に入れた写真を撮る。同じことが17世紀に行われており、時代は下って写真が発明されると、写真がそれに取って代わった。

 かつて私は、写真の発明によって画家の仕事が激減し、後年の画家たちは抽象画に活路を見出さざるをえなかった、と述べた(2012-05-28)。個性のない写実画家は存在価値を失ったのだ。(むかしの映画看板の職人はウソーというほど上手かった。)


(映画看板職人、紀平昌伸さん。FM三重・RADIO3 のブログより引用。)


※今日、気にとまった短歌

  何これ?と弾みし声で包み解き低く何これ?君はまた問う (習志野市)小野晋吾