大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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小泉構造改革等が大田区に及ぼした影響と大田区が区政で行ってきたことから考える、だから格差が広がった

2022年12月05日 | 構造改革 三位一体改革 地方分権

小泉構造改革等が大田区に及ぼした影響と大田区が区政で行ってきたことについて
令和4年第4回大田区議会定例会(第2日)

 

初当選した2003年から今日まで、私が議会で取り上げてきたことをふり返りますとその多くが、新自由主義的政策の問題だったことが見えてきます。

2003年ごろと言えば、ちょうど、小泉構造改革による新自由主義的政策が動き始めた時だったのです。

国では、小泉構造改革の新自由的政策が格差と分断を生んだという問題意識から、新しい資本主義実現会議が開催されて、今年6月には「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が出来上がっています。

ところが、小泉構想改革の新自由主義的政策が格差と分断を生んだという問題意識は私も同じなのですが、「グランドデザイン及び実行計画」からは、格差を是正する方策が見えてきません。何が格差をまねいたか、実際自治体がどう税金を使ったか、その分析ができていないからだと思います。

政策のどこに問題があったのか、解明できず対症療法になれば、問題はさらに悪化します。

小泉構造改革と言えば、

国から地方への地方分権で三位一体の改革 

官から民への民営化、

そして規制緩和が大きな3本柱だと思います。

これらで、何が起きたかと言えば、地方分権の三位一体の改革で、地方自治体大田区が使える財源が大幅に増え

官から民への民営化と規制緩和で税金を使うルールが変わりました。

税の大切な機能の一つは、社会保障で格差を是正することですが、増税や増収で地方に厚くなった財源が社会保障に使われなかったことが、格差拡大の要因のひとつになっていると思います。

しかも、いま、税金の使い途の決め方まで変えようとする新たな段階にきています。

そこで、小泉構造改革が大田区に及ぼした影響についてあらためて考えたいと思います

地方分権で、基礎自治体が社会保障の責任主体となり、例えば保育が自治事務となって大田区の責任になり国の補助金が廃止されました。そうした財源確保のために、三位一体改革が行われ、当時国から地方へ約3兆円の税源移譲が行われ、基礎自治体である大田区の税収が大幅に増えました。

この間、住民税の定率化、定率減税の廃止、23区では区民の負担はかわりませんが2007年から特別区交付金割合が3%増え、その後の配偶者控除等見直し、老齢者非課税措置廃止、扶養控除廃止、住民税均等割500円アップ、消費税の2度の増税など、小泉構造改革とその後の税制改正で、区民の税負担は大幅に増えました。2003年と2021年の決算で比較すると、大田区の歳入は1918億円から3103億円と約1200億円も増収になっています。

ところが、増収分がすべて社会保障に使われたわけではありません。

保育の国庫補助がなくなり、税源が移譲されましたが、国が、民営化すれば補助するとしたので、大田区は民営化を進め、支出を抑えています。リーマンショックなどの時期とも重なり、増えた待機児対策の大田区の財政負担は多額になるはずでしたが、民営化で待機児を解消したので、国から補助金をもらうことができ、大田区は、三位一体などの増税分を自由に使える財源として確保できたのです。蒲蒲線もそうですが、足りない開発の財源などがあると財調算定と言い始めたのも三位一体以降ですが、3%増えた分が社会保障財源に使われていないことの表れだと思います。

介護や国保や後期高齢者医療は、国の保険制度の枠組みで保険料や窓口負担が決められているので、区の税金を使って保険料や窓口払い負担を軽減する仕組みになっていないと大田区は説明しています。地方分権で、大田区に増収になった増税分などは、私たちが期待したほどに、社会保障には使われなかったのです。

そうして、増えた財源を社会保障に使わず、羽田空港跡地を165億円で買ったり、設計変更して大規模な大田総合体育館を作ったり、土地交換したり、学校建て替えで複合化したり、出張所を移転させたり、せせらぎ館を作ったりしてきたのだと思います。

税は、そもそも、再分配機能を持ちますが日本の税金のしくみは、高額所得者により多く収めていただく累進性が低く、給与所得者の中間層から上の負担が比較的大きいため、税金を集めただけでは再分配になりません。

集めた税金を社会保障にしっかりと使わないと格差が是正されないのです。

大田区の増収分が社会保障に使われれば、税の再分配機能により格差を是正できましたが、住民税、消費税、特別区交付金など、増収分を社会保障に使わなかった分、格差が拡大したわけです。

税収が大幅に増えたということは、区民の税負担が重くなったという問題でもあります。大田区の税務概要をみると、2003年から2020年の間には、リーマンショックもあって、働く人が増え、納税義務者数は、1.28倍。住民税収は、526億円から735億円に1.39倍。納税義務者数以上に税収が増えていて、それだけ区民の負担が大きくなっていることがわかります。ふるさと納税の分も考えれば、さらに区民負担は大きいことがわかります。

この間、収入はあまり増えていませんから手取りが大幅に減った区民が多いと言うことです。国交省の東京一極集中の調査をみると東京は物価が高いため、収入の中央値の方は、税や社会保険料をひいた手取りから食費光熱水費住居費など基礎支出をひくと、都道府県で下から6番目になります。
しかも、官から民への民営化で介護や保育など社会保障分野の民営化や大田区の公の施設に指定管理者制度が導入され、区役所内部の仕事も委託されたり、非正規職員が担うようになって、低賃金や官製ワーキングプアが指摘されるようになりました。

税金の使い方が変わって、企業の利潤により多く使われるようになり、また、現場で働く方たちの低賃金や雇用の流動化を規制緩和で許してきたのも、この間の構造改革による変化です。

そこでうかがいます。

 

大田区において、

 小泉構造改革のどういった施策が

 格差など、どういう弊害を生みましたか。

 

 把握しているなら具体的にお答えください。把握していないなら、把握していないのに、格差を是正することはできますか?

 

 小泉構造改革で行われたことをもとに戻すことで、広がった格差が拡大しないようにすべきだと思いますが大田区はどう考えますか。

こういったところに地方分権を発揮すべきだと思います。

「新自由主義」は市場や競争に任せればうまくいくという考え方ですが、それにより格差がうまれました。

 いま、大田区の民営化は、公共分野の事業を民間企業にゆだねる段階から、公民連携、包括連携協定など、行政と民間事業者とが連携して政策立案の民営化、民主主義の民営化、企業化の段階に入っています。

大田区は、民間事業者と区の持つ情報を共有しながら、企業と対等かつ互恵的な関係にもとづき地域課題を解決すると言っています。

さらに、今年1月大田区は、公民連携基本指針を改定し、民間事業者との関係を一歩進め、公民連携デスクという協定締結を不要とした企業と行政を結ぶ場を設け、企業の社会課題解決の提案を受けはじめています。アイデアを受け付ける窓口を作るだけでなく、民間企業等と対話を重ね、庁内各部との調整も行うと言っています。

その上、明文化されていませんが、「企業は社会課題解決のために利潤を追求しても良い」のが大田区の公民連携で、それによって、民間企業等がますます大田区で活躍できるよう連携を強化する、と総務財政委員会で説明しています。

大田区のあるいは日本の民営化は、完全に市場競争原理にゆだねられるのではなく、そこに税金が補助されたり、公共施設の使用権が与えられるなど、優遇策がセットになっていることが多いうえ、蒲蒲線のために都市鉄道等利便増進法をつくり補助率をあげたように、仮に通常の補助金や優遇策などで採算がとれない場合でも、新たなしくみをつくって採算がとれるよう支える可能性もあります。そうなると、対象事業は限りなく広がり税負担も連動して増えます。

事業の是非はともかく、総体的にみれば利潤を得る「事業者の株主」と「区民」との格差は、拡大することになるわけです。

課題を解決するための政策立案は、コンサルや企業のノウハウを活用し、あるいは提案を聴くことは必要に応じ行うべきと思いますが、主権者である区民やその代表である議会との位置づけはどうなるのでしょう。区民や議会を乗り越え、利潤を追求することをゆるされた企業と行政が連携することは、民主主義の基盤を大きくゆるがすことだと思います。行政大田区が、事業化を目的とした企業との連携の場面を作る一方で、昨今はコロナの感染拡大防止を名目に住民説明会さえ開かなくなっていることを考えると、大田区は、全体の奉仕者の意義を忘れてしまったのではないかと心配になります。

 しかも、気になるのは、今の大田区には、基金に2021年度決算で1280億円もの基金が積まれていて、さらに毎年新たに積み立てるほどの潤沢な財源があることです。

そのうえ、近年、生活保護や国民健康保険などの大田区負担分が減ってきていますから、そうした財源が、公民連携デスクで提案されるビジネスモデルに使われる可能性もあります。

  大田区はこれから税収が増えない可能性に言及し基金を使うと言っています。私たちは、将来の財源まで負担させられていたということです。

公民連携デスクで提案された事業に区民の税金が使われても、社会保障ではありませんから格差の是正にならないと思います。それで、物価の上昇で手取りの少なくなっている区民生活の支えになるでしょうか。

そこでうかがいます。市場に任せればうまく行くという考え方で、格差が広がりましたが、

 利潤追求を許す公民連携で政策立案まで市場に任せて、格差はさらに拡大しませんか?何か歯止めはあるのですか。

 

大田区の憲法とも位置付けられる今の基本構想は、2007年から作り始め2008年に議決されています。基本構想には長期計画を定めると記されていますが、いま、その長期計画もありません。

小泉構造改革などの新自由的政策のもと作られた基本構想で、結果として今の格差をまねいています。

基本構想策定は、大田区基本構想策定審議会が諮問を受け答申を提出しました。私も審議会の一員として答申策定に携わらせていただきました。公募の区民や公共的団体の構成員、学識経験者、区議会議員の委員20名と顧問2名の22名の審議会の委員が、自由にまた、闊達に議論し策定したと思います。印象に残っているのは、例えば、環境を守ることにこだわっていた私と、経済発展を求める意見との双方があがり、どうするか、となったときに、確か青山会長だったと思いますが、「環境と経済双方において持続可能なまちをつくります。」と両論を取り入れる形でまとめてくださっています。納得のいかない部分もありましたが、そうやって、みんなの意見を持ち寄りながら、区内各地域で説明会も重ね、手間と時間をかけてまとめ上げたもので、とても貴重な体験をさせていただきました。

私も基本構想の策定にたずさわりましたが、新自由主義的な要素があるのか、あらためて基本構想を読み直し、思い出したのが、会長 青山やすし 当時の明治大学公共政策大学院教授 が、この基本構想で「地域力」という言葉が初めて使われたと評価していたことです。地域力という言葉は、審議会の委員が提案したものではなくて、原案の中に最初から入っていた言葉だったと思います。

私は、この地域力という言葉がよく理解できていませんでしたが、基本構想ではこの地域力という言葉の定義までが議決事項に含まれていて、この言葉が思った以上に重要視されているのだと思いました。

参議院の憲法審査会には、住民自治について、「地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義的要素」と記されていて、住民自治の場にいるのは住民です。

ところが、基本構想の地域力の基本的な考え方をみると、地域は、そこに住み、働き、学ぶなど、その地域に関わる区民一人ひとりによって構成され、支えられていると記されていますが、「様々な主体が連携・協働することによって、地域力はさらに高まります」とある様々な主体には事業者が含まれますので、事業者も、住民自治の主体のように見えます。実際、課題解決の主体に事業者を位置付けているのも、この基本構想の地域力の考え方があるからだと思います。

企業のノウハウを生かすことはあっても、住民自治の主体は住民です。

憲法第15条は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と記されています。

そこでうかがいます。

新自由主義的政策が格差と分断をまねいたことを国も認めている今こそ、新自由主義的施策から転換するための基本構想や長期計画を策定すべきと考えますがいかがですか。

地方分権は、住民に身近な自治体が、住民の声をきいて生活課題を解決するため始まりました。ところが、羽田の跡地は国主導で立ち上げた委員会で大きく方針がかわります。誰が望んで提案されているか「発意」が見えない施策も多くなっています。

新空港線のまちづくりは突然提案され、そこに区民は不在です。

人と人とのつながりの中ではぐくまれてきた産業、経済、地域や社会のしくみは、構造改革で作り替えられ、コロナとデジタル化でさらに分断されようとしています。

そうした中、作った公民連携デスクは、企業がメンバーの議会のようです。

本来地方自治は住民の意思に基づいて行われるものでフェアな民主主義地方自治を住民の手に取り戻したいと心から願い質問を終わります。


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